028 襲撃
知らない男達がゾロゾロと入ってきた。
全員が鎧を身に付け、剣を装備していた。
俺と結菜はすぐに身構える。
男たちが一斉に剣を抜く。
「殺さずに捕らえろとの命令だ」
先頭の男が口を開いた。
「【身体強化】【魔法強化】」
結菜が魔法を使った。
「なんだ、奴の仲間からと思っていたが魔力量1万超えではないのか。大した事ないな」
先頭の男の声には落胆が混じっていた。
結菜の魔力量は1万に届かない。
「まさか……」
「それって……」
俺と結菜が言葉を漏らす。
「ああ、ドランだっけか。城でコソコソしてるのをドーラゴ様が見つけてくださったのだよ。拷問をしたらお前らの居場所を吐いたから早速来てみた訳だよ」
嘘だろ。ドランさんが捕まったのかよ。
ここで俺達が逃げ切れなければすべてが終わってしまう可能性がある。
入り口の扉は男たちで塞がれており、逃げれそうにない。
先頭の男の言葉を信じるなら、〈死からの反撃〉の発動は厳しい。
結菜に発動させて貰ったとしても、先頭の男は口ぶりからするとおそらく結菜より強い。
ゾロゾロといる敵を退けて結菜と脱出出来る確証はない。
「そっちの男は魔法を使わないのか? まあいい、楽な仕事ならそれはそれでいいもんだ――【超加速】」
先頭の男が視界から消える、と同時に結菜がぶっ飛び壁に打ち付けられる。
「結菜!」
俺は倒れている結菜に駆け寄った。
「結菜! 大丈夫か!」
「うん、大丈夫」
結菜は蹌踉めきながら立ち上がる。
どう見ても大丈夫ではなさそうだ。
俺がスキルを発動させないと確実に捕まる。
捕まればカーミルを助け出す事が出来ない。
「結菜、俺のス――――」
「――ごめん、出来ない。優心にそんな事……」
俺が言い切る前に結菜は俺を殺すことを拒否した。
普通、そうだよな。
殺すなんて出来ないよな。
でも、俺はもう覚悟を決めている。
大切な人を守る為、助ける為なら容赦はしない。
「優心は下がってて、【加速】」
結菜は、先頭の男へと攻撃を仕掛ける。
「ふん、【龍撃】」
結菜は再び、壁に打ち付けられる。
「結菜!!」
「ごめん、優心……」
結菜にはもう立ち上がる気力が無さそうだった。
俺は素手で先頭の男へ突っかかって行く。
ただ、そのまま捕まる訳にはいかなかった。
何も出来ない自分が悔しかった。
たとえ勝てないと分かっていても、動かずにはいられなかった。
短剣は突然、敵が現れた為、取りに行けなかった。
こんな事なら短剣の1本くらい肌見放さず持っとけば――いや、どうせスキルが無ければ意味は無いか。
先頭の男に俺は片手であしらわれる
「おいおい。お前、弱すぎだろ。まだ、赤子の方が強いんじゃないか」
後ろの男達が「ハハハ」と笑う。
クソ! なんで俺はこんなに弱い。スキルが無ければ何も出来ないのか。
「それ、本気かよ。冗談キツイな」
「ぐはっ!」
俺は先頭の男の蹴りをくらい蹲る。
「こいつらに、奴隷の首輪と手枷を付けて運べ」
後ろの男達が、鉄で出来た首輪と手枷を持って迫ってくる。
「やめろ! はなせ!」
俺は必死に抵抗したが敵うはずもなく、首輪と手枷を付けられる。
「いや……、やめて……。嫌ああああああああ」
結菜は奴隷の首輪を見た瞬間、悲鳴を上げる。
「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
俺は腹の底から叫んでいた。
結菜に奴隷の首輪と手枷が付けられた。
結菜は泣いていた。
クソ! 俺は何も出来ないのか。
「よし、帰るぞ。お前ら『俺についてこい。後、俺らに逆らうな』」
先頭の男が言うと俺の体が意思とは勝手に歩き出す。
洞窟を出ると鉄の檻に俺と結菜は入れられた。
男たちが光出すと、全員がドラゴンになった。
1体のドラゴンが俺と結菜が入ってる檻を後ろ足で掴み、大空へ飛び上がる。
他のドラゴン達も地上から空へとやって来る。
「よし、城へ戻るぞ」
先頭にいるドラゴンから声が聞こえると、ドラゴン達が大空で移動を始めた。
「結菜……」
俺は名前を呼ぶ以外の言葉が思いつかなかった。
奴隷の首輪は、結菜にとってトラウマなのだろう。
ゲースド・ロエリロードに襲われそうになった時も結菜は奴隷の首輪を付けられていた。
「優心!」
結菜が俺の胸に飛び込んで来る。
「結菜!?」
「……しばらくこのままにさせて」
「ああ、分かった」
結菜は俺の胸でしばらく泣いていた。
俺はその間、手枷をされた不自由な両手で結菜の頭を撫でた。
「もう、大丈夫。ありがとね、優心」
俺は「ああ」と答える。
「優心、ごめんね。あの時、あたしが――」
俺のスキルを発動させてほしいとお願いした時の事か。
「いいよ。気にしなくて。結菜は悪くない」
「ありがとね、あたしの為に気、使ってくれて」
結菜は俺の横に寄り添って座る。
「ねえ、あたし達これからどうなっちゃうんだろう」
俺達はカーミルを救出に来たのに、ドランさんが捕まり、俺と結菜も捕まってしまった。
「分からない。でも――」
俺を誰か強い奴が殺してくれれば〈死からの反撃〉が発動し、活路が見えてくる。
しばらくすると、大きな城が見えてきた。
ドラゴン達は城の大きな庭に次々と着地していく。
俺と結菜が入ってる檻をもったドラゴンも庭に下りていく。
ドラゴン達が人の姿へ変わっていく。
俺と結菜は檻から出されると、鎧を着た男達に牢へと連れて行かれた。
結菜と俺を牢に入れると鍵を掛け、男達は出て行った。
手枷は牢に入れられる前に外された。
牢は全面だけが鉄格子で後は石の壁と床と天井だった。
中は、ベッドとトイレが1つずつポツンとあるだけだった。
そして、向かい側の牢の中には男と女の2人の人がいた。
どちらもやせ細っており、真紅の髪に真紅の瞳を持っていた。
真紅の髪と瞳、カーミルと同じだ。
それに、2人共にカーミルの面影を感じる。
もしかして――
「すいません。もしかして、カーミルの両親ですか?」
真紅の髪の男女は、驚いた顔で俺を見てくる。
女の方が口を開いた。
「カーミルを知っているの?」
俺と結菜は「はい」と返事をした。
「あなたの言う通りワタシがカーミルの母、ミールです」
「オレがカーミルの父、カールだ」




