EPI.005 2026年6月7日 第76回-安田記念- 予想パート
「それで、次はどんなレースなの?」
「今週開催のレースは安田記念。条件は、東京の芝1600メートルよ。言わずと知れた春のマイル王決定戦ね」
「マイルって、アメリカとかの距離の単位だよね」
「そうね、日本ではあまりなじみのない言葉かしら。でも、競馬の世界ではとても標準的な単位なのよ。現にJRAで開催されているG1レースのうち一番多いのが1600メートル、つまりは1マイルを走るレースなの。当然、マイルのレースを主戦場にしている競走馬も多いわ」
「なんだか、外国発祥文化の歴史を感じる話だね」
「そんな激戦区のマイル戦にあって、安田記念は年齢や性別などの制限がないアンリミテッド戦。そのうえ、二年前のロマンチックウォリアーのように外国馬まで参加することさえある。老若男女和洋折衷、珠玉の快速自慢が集まるマイル戦の最高峰よ」
言いながら、まりあは高鳴る鼓動を押さえられないと言うように、両手で自分の胸を押さえる。
「私にはよくわからないけれど、とてもすごいレースなんだね」
「そうね。マイル好きの人にとっては、一年で一番楽しみなレースの一つなんじゃないかしら。それじゃあ、予想を発表するわね」
「私は聞くだけだけど、どうぞ」
「今年の安田記念は絶対的王者不在の混迷戦。予想がとても難しくなる反面、ここを当てられれば大きいわ。私の本命は、去年の安田記念とマイルチャンピオンSでともに二着の14番ガイアフォースよ。七歳にして老当益壮充実一途。事前予想よりもオッズが下がってしまったことが若干悩ましいのだけれど、本命予想は変えないことにしたわ。ガイアフォースには是非ここで去年二度もジャンタルマンタルに阻まれたG1馬の称号を手にして欲しいわね。対抗は16番パンジャタワーよ。距離と折り合いに不安はあるけれど、同じ府中のNHKマイルCで実績はあるし十分許容範囲内。展開次第では全くハマらない可能性もあるけれど、今年の松山騎手の勢いならば、このまま春の桜花賞、皐月賞、ダービーに続いてG1四勝目を勝ってしまってもおかしくないわよね。紐候補として実績豊富で高い安定感のある17番トロヴァトーレと、最近復活の兆しを見せてきた桜花賞馬6番ステレンボッシュ。穴候補としては、追い込み一気が怖い8番シャンパンカラーと、楽逃げ展開が怖い11番ワールズエンドをそれぞれ抑えとして紐に絡めましょう。買い目は今回も、単勝と馬連の組み合わせで行こうと思うわ」
「あ、そうだ。ちょっと気になってたんだけど、私、その買い目ってやつがよく分かっていないんだよね。まりあちゃんの馬券って、どうなったら当たりなの?」
まりあは一瞬、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしてから、途端に花が咲いたように顔をほころばせた。
「素晴らしい質問だわ!! 瑞希パイセンのほうから競馬に興味を持ってくれるなんて!! ええ、そうね。いい機会だから、馬券の形式について少し説明するわね」
「え、あ、うん。そこまで勢いよく来られるとちょっとぎょっとするんだけど」
「まずは基本中の基本『単勝』ね。これは一番シンプルな形式よ。買っている馬券の馬が一着になったら的中よ」
まりあの説明を聞きながら、瑞希は小さくうなずく。
「それは何となく分かってた」
「前回今回の買い目には入っていないけれど、似たような形式に『複勝』って言うのがあるわ。こっちは単勝馬券と比べて当たりの条件が少しだけ緩和されていて、一着だけじゃなくて、二着になっても当たりになる。出走頭数によっては三着まで当たりね」
「なんだかお話だけ聞いていると、『複勝』ってすごく当たりやすそう。素人意見かもだけれど、それだけ買っていればいいんじゃいの?」
「事実、そういう買い方を主流にしている派閥もあるわね。一般的には複勝コロガシなんて呼ばれているわ」
「派閥なんてあるの……?」
「次に『馬連』ね。こちらは、さっきの単勝に比べたら少し複雑かしら。選ばなければいけない馬は、二頭。つまり、レースの一着と二着の両方を当てる必要があるの」
「一着と二着が入れ替わっていた場合は?」
「いい質問ね。答えは、的中よ。どう、簡単に思う?」
まりあが尋ねると、瑞希はふるふると首を振る。
「絶対に難しいって思う。ほとんどあたる気がしない」
瑞希の言葉に、まりあは満足そうに微笑む。
「そう。馬連は単勝に比べて的中率が低い。でも、その分当たった時の配当は単勝よりも大きくなりやすい」
「私みたいな小心者には向かない馬券っぽいなあ」
「ちなみに、馬連にも似たような形式として『馬単』っていうのがあって、こちらは一着二着の着順まで当てる必要があるわ。この場合、さっき瑞希パイセンが言ったように一着と二着が入れ替わっていた場合はハズレになるわ」
「……もしかして、競馬の世界って当たらないのが普通だったりする?」
「もちろん」
瑞希の脳裏に、先週目にした一万円の札束が、はらはらと煙になって消えていく様が思い浮かんだ。
「他人のお金の使い方にとやかく言う資格なんてあるはずもないし、自分の財布には何の関係もないはずなのに、なんだかとんでもない罪悪感に襲われたような気分になるなあ」
不安そうな顔でそう言う瑞希に、まりあは対照的に自信に満ちた顔で、
「難しくないギャンブルなんて、ちっとも面白くないでしょう?」
と言った。
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第76回 安田記念 竜ヶ崎まりあの買い目
単勝:14 50,000円
馬連:14ー16 20,000円
6ー14 10,000円
14ー17 10,000円
8ー14 5,000円
11ー14 5,000円
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合計: 100,000円




