↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/25

EPI.002 2026年5月31日 第93回-東京優駿- 予想パート

「今回の本命は17番ロブチェン。レコード勝ちの皐月賞を見れば分かる通り実力は歴代でも屈指。加えて、逃げから差しまで幅広くこなせる脚質でどんな展開でも対応できる安定感まである。左回りコースでの戦績と関西が主戦場である松山騎手の東京での戦績が若干のネガティブ要素だけれど、それを踏まえてもなお総合力ではこの馬が頭一つ抜けているわ。松山Jにはぜひここで三冠の挑戦権とダービージョッキーの称号を手にして欲しいわね。対抗は11番リアライズシリウス。今回の日本ダービーは明確な逃げ馬がいないから、レースの展開は卓越した先行能力を持つこの馬が支配することになると思うわ。皐月賞の一戦でこそロブチェンの後塵を拝してしまっているけれど、ダービーと同じ東京開催の共同通信杯ではロブチェンに先着していることからも能力自体は確か。距離適性に若干の不安があるけれど、ここは対抗に挙げさせてもらうわ。ええ、そうね、言いたいことはわかるわよ? 誰でも考えつくようなガチガチの予想をして何が面白いんだって言いたいんでしょう? だけど、波乱を想像できないほどの説得力がこの二頭にはあるの。私はどちらかと言えば穴党だけれど、納得できる内容であればガチガチの予想でも否定はしないわ。一応、東京の長い直線が有利になりそうな1番ライヒスアドラー、13番パントルナイーフ、14番ゴーイントゥスカイあたりは紐として抑えておこうかしらね」

「待って」

「次に買い目ね。いつかは大勝負に出る日が来るかもしれないけれど、まだ初戦だししばらくは種銭をじっくり育てていく方針でいいと思うの。だから今回はシンプルに、本命のロブチェンの単勝と、ロブチェンを軸にした馬連の流しってのが妥当なところかしら。まあ、オッズに合わせた重みづけをしてバラけさせるにしても、基本的には11番リアライズシリウスにドカンと行きたいわね」

「待って。待って。待って。畳み掛けないで。まだ何も消化できてない」

「あ、ごめんなさいね。競馬はそれほど詳しくなかった? だったら、まずは初心者向けに用語の説明から始めるのがセオリーよね。そうね、馬連ってご存じ?」

「そもそも状況が呑み込めてないって言ってるの!!」

 たまらず、瑞稀は大きな声を上げてしまう。

 しかし、まりあはそんな瑞希の様子を斟酌する気など全くないようで、おもむろにカバンから何かを取り出したかと思うと、それを無造作に瑞希の手元へ放り投げた。

 飛んできたものを見て、瑞希は目を見開く。

「もちろん、盟友であるあなたには、いずれ細かい状況の説明もするわ。知りたいこと、聞きたいことがあったらなんだって聞いてちょうだい。私の嫌いな食べ物から下着のサイズまで包み隠さず全て答えるつもりよ。だけど、私があなたに覚えておいてもらいたいことは、たった一つ。『竜ヶ崎まりあは、それを一千万円にしなければならない』。それだけよ」

 手元に放り投げられたそれは、一万円札だった。中央に白い帯が巻かれており、手のひらに重さを感じるほどの紙幣の束。

 まごうことなき、大金だった。

「どどどど、どうしたのこんな大金」

 声を裏返させながら、瑞希が言う。

「パパからの軍資金、――というよりは、まさに今回私たち兄妹に課せられた課題そのものとでもいうべきかしらね」

「課題?」

「そう。私は、それをどの兄たちよりも多くしなければならないの」

 ギリと。奥歯を噛みながら、まりあは言う。

 相変わらず前提が異次元過ぎて、彼女の言っていることは半分も、その半分もわからない。

 だけど。

 使命感に燃え上がるような、強い光を放つ瞳。彼女の言うことが嘘や冗談などではなく、確かに切実な状況であることは、瑞希にもなんとなくわかった。

 聞きたいことも、言いたいことも、山ほどある。

 しかし、それは困っている後輩を助けるよりも優先するべきことだろうか。

「……とりあえず、私はあなたと一緒に競馬の予想をすればいいのね?」

 瑞希も、この春から二年生に進級したのだ。新米ながらも、先輩として、まずは彼女を支えてあげるのが役目というものだろう。

「ええ」

「だけど、最初に言っておくけど、私、馬のお世話の方法は知っているけど、競馬なんてほとんど何もわからないからね。予想が外れちゃっても怒らないでよね」

「そこは安心して。私がしっかり丁寧に教えていくから。それに、あなたに期待しているのは、競馬の知識とか予想の精度とか、そういうレベルの話じゃないしね」

 やはり、彼女の言葉はわからない。

 何を期待されているのかもわからない現状では何を頑張ればいいのかもわからない。だけど、彼女はこんな寂れた同好会の活動を、こんな頼りがいのなさそうな自分と一緒にがんばってくれると言ってくれたのだ。であれば、同好会会長として、それ以上言うべきことは何もないような気がした。

「私にできることだったらできる限りは頑張るよ」

 瑞希の言葉に、まりあはうなずく。

 そして、

「期待しているわね、瑞希パイセン」

 と不遜な態度とあどけなさの入り混じった顔で、そう言った。


 ーーーーーーーー

 第93回 日本ダービー 竜ヶ崎まりあの買い目

 単勝:17    50,000円

 馬連:11ー17 30,000円

    14ー17 10,000円

     1-17  5,000円

    13-17  5,000円

 ーーーーーーーーーーーーーーーー

 合計:     100,000円




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。