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89、幕間の神獣大会 ~尚更戦いにくいではないか~

「おいキエル! お前本当に何者なんだ!?」


 アギルのいる酒場まで歩いていくと、すぐにアギルが突っかかってきた。


「何者、と言われても、ただの旅人だが」


「相手は『絶対怪力』だったんだぞ!? 俺もいけるとは言ったが、まさかいきなりあの『絶対怪力』を倒せるとは思ってなかったぜ!?」


「いきなり、と言われても、第一試合があいつだったんだから仕方ないだろ」


 何故か知らないが興奮しているアギルに向けて、俺は事実を伝えた。トーナメントなのだから運が悪ければ強敵と当たってしまうことだってある。まあでも、その強敵を倒した訳だから、後は結構すんなりいけるんじゃないかな。


 せっかくの大会だ。いける所まで行ってみようではないか。








 Bブロック勝者 レンティウス・コーテス、ドリアス・マクドレイ、ヴェリノ・グワテマス、ロンドーグ・チュニス、メイジ・ウツィ――――


 Cブロック勝者 ギルバーニョ・ゴッデル、トーテム・ジージクロウ、デミゴルム・トーマス、ソーク・モニスター、フジゴ・ボーテン――――


 Dブロック勝者 ホネス・ボーニア、キーオ・シシラン、セグニム・ゼート、レレス、ソクド・ロータル――――


 Eブロック勝者――――






『魔王戦』開始まで あと 334日→332日






 二日目には初戦が全て終了し、三日目には第二戦が終わった。


 今日は第三戦。予選内の準決勝である。


 そしてこんな話をするということは――当たり前ではあるが――俺が第二戦を抜けたということを意味するのである。


 ここまで残っている人間というのは比較的多いのだろう。何せまだ予選である。今回の形式でいけば、予選の後に四つの決勝トーナメント1があり、その勝者が真の決勝トーナメントに進めるという形になっているのだから、まだまだである。


 しかし俺はここで壁にぶつかることとなった。


 無論、大きな壁と言えばどう考えても最初の『絶対怪力』なのだが、そういう問題ではなく。


 相手が女なのだ。


 女。


 女の子。


 紳士たる俺からしてみれば非常に戦いにくい。ミトラとかいう猫耳の少女には全力で戦うとか何とか言ってしまったような気がするけれど、あんなの冗談のようなものである。実際に戦うとなれば話は別。


 加えて大きな壁となっているのが、その少女が俺の知っている人だったということである。


 知っているとは言っても、その人間自体を知っているのではない。俺が知っているのは名前だけだ。


 カイナ。


 あのギルマスは確か、そんなことを言っていたはずだ。


 俺に襲い掛かってきたサキとかいう少女の宿敵であるらしいカイナは、女なのである。


 それに、どうやら外見は俺に似ているらしい。尚更戦いにくいではないか。


 大丈夫かなあ。


 大丈夫じゃない気がする。


 女の子に手を上げるというのはどうしても抵抗がある。



 ああ、だけど。


 それでも俺は。


 何故か、勝とうとしている。








         ――――――――――★――――――――――








「綺慧瑠君、待っていてね。私、まだ諦めていないから……」


 昼。太陽が南中し、一日の中で最も明るい時間帯。辺り一面が光に照らされる時間帯。しかしながら、それは大地全てを照らす訳ではない。


 渓谷の底は闇に閉ざされ、深き森には木漏れ日すら届かない。


 どれ程陽射しが強かろうとも、届かない場所はある。


 夜に輝く黄金の月。それが闇夜を照らそうとも、届かない夜もある。それと同じこと。


 白邪は今、陽射しの届かない森の中にいた。


 そこは植物が皆無彩色に染まっていて、森というより沼という言葉の方が相応しい。しかし木々は――青くはないが――生えているので、そこは森なのだろう。


 だが、そこがどこなのかということは、白邪には関係ない。ただ作業の進めやすい場所だったというだけの話である。


 人がおらず、辺りが暗く、静かな場所。


 それくらいならこの世界のどこにもありそうなものである。


 そしてその一つを今、白邪が見つけたという訳なのだった。


 それにしても、白邪のいるその森には何やら悪しき空気が漂っているように思える。それはその土地そのものの気力なのか、それとも白邪から放たれる邪気なのか。それは定かではない。つまり、それ程までにその波動はその雰囲気に同化しているということである。


「私、まだ、色々できるのよ……?」


 その空気の中心にいるのは間違いない白邪である。


 彼女は誰に話しかけるでもなく、着々と準備を進める。


 準備とは言っても、それは何かの規則に基づく綿密な設定ではない。


 ただ枯れ木と泥とを使い、少し開けた土地に魔法陣のようなものを書いているだけだ。その少し開けた土地を、白邪は自分の力でさらに広くして、そして体の動くままに準備を進めた。


 朽ちた葉と動物の死体。両方とも白邪が殺した訳ではない。この場の空気が殺したものだ。それらを用いて、彼女の準備は続く。


 魔法陣を幾重にも重ねて描く。


 彼の名を呟きながら。


 愛を呟きながら。


 足りなくなった資材は、そこら辺から取ってくる。儀式を行うには、その場のものを使うのが一番なのだ。





 だから白邪は、拾う。重ねる。燃やす。


 掘る。削る。引き裂く。


 祈る。


 願う。


「綺慧瑠君、私――」



 光の届かない土地がある。


 光の届かない者がいる。


 果たして、それらが急に日の目を見る時、起こり得る事態とは。




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