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44、サマヨウ天死 across ザ・シティ ~キエルさんは薄情者です!~

 まずは情報収集。


 そう考えた白邪に早速耳よりな情報が入る。


 何か街が騒がしいと思ったら、レノクターン王国という所で何かがあったようである。


 聞こえてくる言葉によれば、誰かが脱走したようだが。


 誰が脱走したのか。どこから脱走したのか。何故脱走したのか。


 それらは全てよく分からない。


 だがその王国に大きく関係する人物が脱走したのは間違い無さそうである。国一つを大きく揺るがす人物の脱走。


 それは何か。


 王国の忠実な部下が逃げたのか。それとも牢に入っていた大罪人が逃走したのか。


 いや、そんな具体的な内容なら聞こえてくる言葉の中で気づくはずなのだ。


 噂では「逃げ出した」ということがはっきりしているのに具体的情報が全く聞こえてこない。


 それが意味することはつまり、その人物が得体の知れない者ということだ。あるいは存在を公表できない者ということだ。


 白邪はそう考えた。


 となれば、その存在自体が不明、あるいは公表できない人物というのはもしかしたら――


「とにかく、一度その国のお城に行ってみる必要があるようね」


 その国がどこにあるのかは知らないけれど、地図があればどうにでもなる。そして慣れてきた自分の力を使えばそれ程時間はかからないはずだ。


そこの王に聞けば教えてくれるかもしれない。


 何せ自分は勇者なのだ。きっと快く迎えてくれるだろう。


 しかし、白邪は『魔王戦』を知らない。そして勇者という存在が何なのかということも知らない。


 それでもあらゆる可能性を探ろうとするのは、それをするだけの意志があるということを示している。







          ――――――――――★――――――――――






 やっほー。まさかのモンスター討伐任務。よしよし、異世界でこんな経験ができることのなろうとは。素晴らしい。感激ものである。


 男なら誰もが一度は憧れるモンスターとの戦闘。自らの装備と腕をもってして強敵に挑む時のスリル。心臓の高鳴り。


 そういうものを普通はゲームなどで夢見る訳だが、何と今回、現実にそのチャンスがやってきた。これは素晴らしいことだ。


 超テンションが上がる。


 何を大袈裟な、と思うかもしれないが、いやいや、そんなことはない。実際に経験してみれば分かる。戦闘に赴く前のこの慟哭を。


 ……まあ、現実の戦争とは比べてはいけないけれど。


 そう、少年の夢など所詮は夢物語。現実の戦いというものは、それは無慈悲で惨たらしい。


 アニメや漫画、ゲームなどとは違うのだ。


 しかし、この世界ではどうやらそうでもないようである。


 例えば炎。自分の魔法で発生させる炎は全然熱くない。他にも、打ちつけられた時の衝撃や身体能力等、現実にいた時とは相当異なるものになっている。それがこの世界の法則なのかはしらないが、少なくとも俺自身は、現実の時よりも強い生命体になっているはずだ。


 だけど、そんなことは、今はどうでもいい。


 とにかくテンションが高いのだ。


 そのテンションの高さでつい街の外れまで来てしまった。でも、あれかな。今日は疲れているし、明日にした方がいいのかな。


 でもなあ……


 正直、このままモンスター討伐に行きたい。紙にはおよその位置と外見、その他詳細が書かれている。問題はない。


 でも、今日は、やめておこう。


 今出れば帰るのが何時になるか分からないし。


 それに、ルテティアも置いて来ちゃったしな。


 大人しく、宿を探すとするか。





          ――――――――――★――――――――――





「き、キエルさーん……私を置いてどこへ行ったんですか……私を一人にしないで下さいよ……」


 街の大通り、一人の有翼人の少女がさまようゾンビのように歩いていた。


 その天使のような外見と相俟って、この街では後に、『サマヨウ天死』の都市伝説が流れ出すこととなる。





          ――――――――――★――――――――――





「もう! 酷いです! 私を置いてどこかへ行ってしまうなんて! キエルさんは薄情者です!」


 宿を見つけてからルテティアを探しに行った俺は、見つけて早々散々喚かれ、宿についた後もこうしてぐちぐち言われているのであった。


「だから悪かったって。モンスター討伐とか超やってみたかったからつい、ね。でも今日は疲れたから明日行くことにするよ」


「そうですか。…………って、私を置いて行った理由にはなってませんよ!?」


「そうか?」


「そうです!」


 ルテティアは容赦なく言う。目の下が少し赤くなっていた。うん、もしかすると本当に心配したのかもしれない。ルテティアは一人になったら帰るしかないもんな。俺だって一人は心細かったのだからルテティアがそうなってもおかしくはない。


「……分かった。明日、一緒に行こう」


「……はい!」


 片手を「レッツゴー」といった感じに挙げるルテティア。戦いがそれ程楽しみなのかどうなのかよく分からないが、一緒に行く気があるというのなら別に構わないだろう。


「あ、でも、あの女の子は放っておいていいんですか? 依頼の紙、奪ったんでしょ? 追いかけてくるかもしれませんよ?」


 あ、忘れてた。


「そうか? わざわざ追いかけてくるなんてことはないだろ。それに一人じゃ難しい依頼らしいじゃん。あんな少女一人でどうにかなるものでもない」


「あれ、でも私戦力になりませんから戦うのはキエルさん一人みたいなものですよ?」


「お前戦わないんかい!」


 ルテティアの予想外の返答に驚きを隠せない俺。いやだって、一緒に来るってことは一緒に戦うってことだろ。戦わずして何をするんだよ。勝つの? 戦わずして勝つの?


「だって私、戦闘能力あんまりありませんし。でも、キエルさんは立派な旅人さんですから『グラゴニウス種』なんて余裕ですよね」


 楽観的思考でルテティアが言う。


 え、俺まだレベル30くらいですけど?


 何、『グラゴニウス種』とか言うのは強いんだよね。どれくらい強いの?


 それは勿論、四人がかりで行くような強さなんだろう。


「……お、おうっ、任せておけ。俺一人でどうとでもなる!」


「流石ですキエルさん!」


 いかん。見栄を張ってしまった。


「では明日に備えて今日は寝ましょう! やっほーっ! 明日は楽しみだなあ。お兄ちゃんに勝ったキエルさんの戦いぶりを見られるんだもんなあ」


 ニコニコしながらルテティアは俺の方を見てくる。


 うわあ、この世界の人間はやっぱり素直なのかな……そんな純粋な目で見られたら何か罪悪感とか諸々生まれるんですけど。どうしたものか。


 とあれこれ言っても仕方ないのでその『グラゴニウス種』とやらの対策でも考えますか。


 依頼の紙を取り出して見てみると、そこには『グラゴニウス種』の記述がされていた。









 討伐対象  サーシャドゥレス・ミス・グラゴニウス

  


  以下、専門家の調査による結果報告


  体長    約4メルツ


  魂体数値  約150


  強化補正―――――



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