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43、リア充 at ナイト ~だからリア充は滅びるべきである~

 ちょっと前の話。


 一通りの観光を終え、四人が宿屋に戻ったのは夜のこと、約七時であった。本人達はこれ以上長く遊べたのだろうが、そこは海王の「明日に備えて」という提案に従った次第である。


 そう、この街、『カウェルス』に来た目的はあくまでも中心部付近にある闘技場で訓練を行うためであって観光ではない。楽しむことは大事とは言ってもやはり本来の目的を見失ってはならない。


 そういう理由で海王達四人は早めに宿屋に帰ってきたのだった。


 しかし、明日に備えて今日はもう寝よう、というのかと思いきや、全然そんなことはないようである。何故なら、今四人は同じ部屋にいるからだ。男女で部屋を分けているのに同じ部屋にいるということはつまり、まだまだ遊ぶ気であるということである。


 観光の次は談笑という訳だ。確かにこの遠征自体、レベルの高い海王達にとっては腕慣らし程度の旅行程度であるのだ。途中で小さなハプニングがあったとは言え、今では四人ともまともに戦えるようになっている。少々油断気味な所もあるがそれも四人のレベルを考えれば当然のことなのかもしれない。


 つまり海王達は現在、修学旅行の夜のようなテンションで喋っているわけである。


「いやー、本当面白かったな!」


「うん、そうだね~」


 西治が床に寝そべりながらそう言うと綾火が海王の隣で同意を示す。


「最後はみんなで回れたし、食事もできたし、充実した一日だったんじゃないかな」


 海王も満足だったらしく、それなりに異世界を楽しんでいるようだった。友理は初めからずっと笑顔で頷いているため、言葉にしなくても考えていることが分かる。


 因みに、どうでもいいことではあるのだが、海王達は現在パジャマ姿である。


 持ってきた服装の中にパジャマが入っていることは驚きである。しかし海王と西治のものはただのTシャツとズボンと言った感じで何もわざわざパジャマ用に持ってきたものではなさそうだ。一着か二着、ラフな服を持っていると楽だと考えたのかもしれない。


 対する女子の方は明らかにパジャマである。皆が想像するようなパジャマであると考えれば大体外れはない。ただ、透けるようなネグリジェや西洋の囚人が着るようなシマシマパジャマではないということは言える。そんな極端なものではなく、ただの可愛らしいパジャマである。


 これはどう考えてもパジャマ用に持ってきたものであろう。


「それで、明日は闘技場って所に行くんだけど、俺と西治で今日少し見に行ってみたら結構大きくてさ。それで責任者みたいな人に一言かけておいたから、多分明日はすんなり入れてくれると思うんだ」


「え、もう交渉したん? 流石海王クン!」


 海王の報告に友理が反応する。


 確かに、予め顔を知らせておけば抵抗も減るものである。


「具体的にどんな訓練をさせてもらえるのかはまだ分からないんだけど、陛下から推薦状を見せたら快くオッケーしてもらえたよ。ああ、あと、出発前に言ったと思うけど、俺達は国の訓練システムテスターとして色々な訓練を行っているってことになってるから、勇者って単語は出さないようにな」


「了解だぜ」


「分かった~」


「了解!」


「明日は一日訓練になるから、今日は早く寝てゆっくり休まなきゃな」


 皆の了承の返事を聞くと、海王がそんなことを言い出す。いや、至って妥当なのだが。


「おいおい、お楽しみはこれからだろ! 俺、王国製のカードゲームみたいなの買ったんだぜ? それやろうぜ、それ!」


「そうだよ海王クン! せっかくなんだから楽しまなきゃ! まだまだ夜は長いですぞ~」


「海王~ さっさと寝ちゃうんじゃもったいないよ~」


 若者故、この様な反論が当然の如く出てくるのである。


「え、でもあんまり遅くまで同じ部屋にいる訳にも――」


「何何? 海王クン。遅くまで同じ部屋にいると何がまずいん?」


「え、えっと――」


「別にいいじゃん、叱られるわけじゃないんだし~」


「で、でも――」


「あれれ~? 海王クン。顔が赤いぞ~? 何かな、何か色々想像しちゃってるのかな?」


「お、俺は――」


「海王はうぶだなあ。そこは男らしく、今日は寝かせないぜ、とか言っておけばいいんだよ」


 海王が女子二人に責められているのを見かねて、西治が助け舟を出す。本当に助け舟になっているかは微妙な所だけれど。


「え!? そんなこと言う訳ないだろ!」


 海王は意外と押しに弱いのか、一度パニックに陥るとそのまま狼狽えてしまうようである。


「おっ! それいいね! 海王クンちょっと言ってみて!」


「私も聞きた~い」


「ええ……?」


 気づけば部屋の隅に追い詰められている海王。中々可愛い所もあるものだ。


「早く早く!」


「言っちまえよ。大丈夫、海王が言えば何でもかっこよく聞こえると思うぜ!」


「ええ……?」


 イケメンフェイスを苦笑で歪ませ、海王は混乱に陥る。


 しかしいくら考えても皆が退いてくれるとは思えない。


 言うしかないのだろうか。


「き、き、今日は、寝かせない、ぜ……?」


 と遠慮気味に言う。


「か、か、可愛い……!」


 と、三人の声が合った。


 海王の怯えながら言う姿は三人に受けたらしい。


「な、何だよ! もういいだろ!」


 若干自棄になって海王はその場を立つ。


「おいおい、ちょっと待てって! これからカードゲームやるんだから、取り敢えず座れって!」


 海王が逃げ出そうとした時、西治がその腕を掴んだ。(ここは女子二人の部屋である)


「そうだぞ、海王クン。今日は寝かせないって言ったのは海王クンだぜ?」


 ノリノリの友理。ニコニコの綾火。


 海王はどうやら逃げられないようだ。


「はあ……分かったよ。今日は眠くなるまで遊ぼう」


「いやいや、眠くなっても遊ぶんだよ!」


「そうだぜ!」


「そうだよ~」


「…………」


 呆然とする海王。



 だから、リア充は滅びるべきである。



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