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推しに殺される大罪人に転生。推しのために……  作者: 流庵
一章

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第〇四五話 協力

 魔力の底を見た翌日。どこかの戦闘民族のように魔力が増えたようで、母は危険だとメイドたちに引き離されてしまった。


 増えたとはいえ減らし方も分かったので、ベッドの上で大丈夫な範囲内でゴーレムを作り、メイドたちが近寄っても問題ない程度に調整しておいた。


 数日後フリーダがやってきたが、当然異常は見つからない。


 しかし、俺の魔力が空になるという事態に興味津々のフリーダは、体の隅々まで調べ尽くして帰っていった。


「ルーシャス様、アルカリオ殿がいらっしゃいました。奥様より研究室には行かないよう申し付けられておりますので、応接室の方に通してあります」


「部屋から出ても大丈夫なのか?」


「奥様の了解は取ってあります」



 ◆ ◆ ◆



 メイドに連れられて、アルカリオが待つ応接室へ向かう。


「ルーシャス様、ご無沙汰しております」


「まだご無沙汰というほどでもないが、剥製で問題でも起きたのか?」


「いえ、モンスターでなく普通の鳥でよいということで順調に集まっております。今回は試作品をお持ちいたしました」


 そう言ってアルカリオは俺の前に箱を置き、蓋を開けると中には十羽の鳥の剥製が入っている。


「手に取っても?」


「もちろんでございます。ただ、中の骨は粘土で固定してありますので、優しく持っていただくのがよいかと」


「分かった」


 ハトぐらいの大きさで赤い嘴の鳥を持ち上げる。


「これはキョクアジサシだな?」


「おお! ルーシャス様は鳥にも詳しいのですか! 仰る通りキョクアジサシでございます」


「たまたま図鑑で偵察に相応しそうな鳥を調べただけだ」


 キョクアジサシは地球で最も長距離を移動する渡り鳥で、北極圏と南極圏を往復する個体もいるそうだ。


「珍しい鳥は高く買い取るといったところ、なかなかの個体が集まりました」


「このハヤブサも良いな」


「モンスターでない鳥の中で最速のスピードを誇る鳥でございます」


 そんな高速な鳥のモンスターいたか? あとで調べておこう。


「カラスとスズメはどこにでもいるから使いやすいな。さすがアルカリオは分かっている」


「ありがとうございます」


「ひとつアルカリオに聞きたいのだが、例えば俺と二人だけの秘密にしたい内容があったとしたら、秘密は守れるか?」


「ルーシャス様と二人だけの秘密ですか!? それはもちろんでございます」


「アルカリオはリリアナに恩義があると聞いているが、その辺りはどうだ?」


「もちろんリリアナ様には命の借りがございますが、ルーシャス様には職人魂の借りがあり、そちらの方が上でございます」


 職人魂というとリグナムバイタの件だろうか? 普通に命の方が重いと思うが、その辺りは本人のこだわりなんだろうな。


 秘密にしてくれると助かるが、最悪バレても問題ない。アルカリオが味方になってくれることが重要なのだ。

 

「実はこのようなゴーレムを生成してみた」


 蜘蛛型ゴーレムのゼプトを見せる。


「これはまた小さな……蜘蛛型のゴーレム――!」


「さすがアルカリオ気がついたようだな」


「鳥では外からしか情報収集できませんが、これなら屋敷の中に潜伏してもバレません。なるほど、それでハヤブサよりキョクアジサシに反応したわけですか。鳥のゴーレムで蜘蛛のゴーレムを運ぶのですな?」


「そうだ。ただ、俺はほとんどをベッドの上で生活していたため、貴族の情報に疎い。今回の情報収集はできれば家族にも内緒にしたいと考えているのだ」


「なるほど、情報収集を考えているけど、どこから手を付けて良いのか分からないということですね?」


「そういうことだな」


「ご家族に相談しないのには何か理由でも?」


「今後、領内に降りかかるであろう災いを事前に潰したい。ただ、これは俺が何度も夢で見た内容のため、真偽は分からん。ただでさえ忙しい家族にこれ以上俺のことで迷惑をかけたくないのだ」


 歴戦の商人に嘘は通用しないが、ゲームでの出来事は俺の夢の中の出来事と捉えれば嘘にはならない。


「なるほど、夢の中のですか……」


「そうだ、胡散臭いと思うなら忘れてもらって構わない。ただ、夢の中では最悪世界は亡ぶ」


「――! それは真ですか!?」


「そうだ、一つ聞きたいのだが、邪神という言葉を聞いたことはあるか?」


「――!」


「その様子だと何か知っているようだな。残念ながら、屋敷にある書物では分からなかった。何度も見た夢で結末は違うが、邪神が出てくるのは共通しているのだ」


「邪神の出現を食い止めようということでしょうか?」


「邪神の出現をか……」


 そういえば、邪神は必ず出てきたので、出現を潰すというのは考えていなかったな。


「正直、邪神は必ず出現していたので、出現を止めるという発想はなかったな」


「必ずですか?」


「夢ではな。邪神を倒せなければ世界は亡ぶ。俺はレティシアや家族、シャドウブレイズ領を救いたいと考えている。今はそれだけのために動いているが、本当に起きる未来なのか確証はない」


「……邪神についてですが、邪神復活を目論む宗教があると噂で聞いたことがございます」


「そうなのか!? それはどんな宗教だ?」


「……その真剣な眼差しは本気なようですな。残念ながら噂程度なので詳しいことは分からないのですが、不思議なことに、一年に一度は耳にするのです」


「そうか。しかし、そのような宗教があるとすれば、一部を潰したところで止まらないだろう。邪神を倒す未来もあるから、そっちを目指すつもりだ」


「それをお一人でなさるつもりですか?」


「何か確証が出てくればもちろん相談するつもりだが、伝える事によって夢の未来と変わっては困るから今詳細は言えない」


「できるだけ正解の道筋を辿りたいと?」


「そうだ。残念ながらいくつかの結果を知っているだけで、その間がさっぱり分からないのだ。今俺が行っているゴーレムの研究はその間を埋めるためだな」


 もうすぐルーシャスに乗り移って一年経とうとしている。つまりあと三年しかないということだ。


「ちなみに、邪神がいつ復活するのかは分かるのでしょうか?」


 邪神復活はゲーム開始と同時。つまり、主人公が十五歳で学園に入学すると同時に起こる。俺が死ぬのは十四歳から十五歳の間だろう。


「邪神が復活するのは俺が十五歳になった時だな。学園が始まると同時に復活する」


「そんなに迫っているのですか!?」


「そうだ。まだまだ乗り越えなければならない壁も多く、情報も不足している。俺が望む最善の未来へは程遠い」


「分かりました。このアルカリオ、ルーシャス様に協力いたしましょう!」


「それは助かる。この蜘蛛のゴーレムをばら撒くのにアルカリオの協力が欲しかったのだ。もちろん、アルカリオが欲しい情報も加えてよいからな」


「お任せください。情勢を一度調査して効率よく情報収集しましょう」


「その辺りは頼んだぞ」


 アルカリオに頼んだことが吉と出るか凶と出るかは分からないが、家族やシャドウブレイズ領を守るためにできることをしようと思ったのだった。

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