第〇二七話 魔石の形
詠唱の改良に成功した俺は、強制停止も確認したが、一度強制停止すると魔石の効力が消滅し、二度と起動することはなかった。
まあ、通常は命令して止めれば十分なので、これは保険にすぎないが、もしものことを考えると機能として盛り込めたのは大きい。実験の中で一つ問題が発覚した。詠唱をこれ以上増やそうとすると魔石が砕け散るのだ。不要な部分はないので、強制停止機能を削るか、別の対策を考えなければならない。
「まさか、詠唱を増やすとは思いませんでした」
「リリアナとの会話がヒントになった。ゴーレムを起動する目的以外を削った結果、使えないゴーレムが出来上がったのかもしれないな。まあ魔石が見えなくなったからといって、ゴーレムを動かす魔力は減らないので、使えないことには変わりないだろう」
「つまり、次は消費魔力の研究をなさるのですね?」
「そうだな。ちょうど残っているマリオネットが数体あるから、これで実験してみよう」
「石材は使わないのですか?」
「石材はもっと俺の魔力を浸透させてから使いたい。実験にはマリオネットの方が手に入りやすくていいだろう」
「気になさらなくても、レクス様とライラ様から、ルシャ様の研究のためなら好きなだけ使って良いと言われております」
「そうなのか?」
「はい、魔石を宝石に変えるのを発見したことで、莫大な富を得られるそうなので気にするなとのことでした」
「そうか、それでは遠慮なく実験することにしよう」
巾着に入った魔石は虹色に変化してしまったので、母に相談したところ、新しく形を整えた魔石をすぐに用意してくれた。まあ、その代わりに宝石用にたくさんの魔石を虹色に変えることになったけどね。
まずは普通の魔石で形の違いによる性能の変化があるか調べることにした。
◆ ◆ ◆
いろいろな形の魔石で試したところ、性能が良かった順は球体、二十面体、十二面体、八面体、六面体、四面体の順だ。
つまり、魔石の形が球体に近いほどゴーレムの性能は上がる。
しかもラッキーなことに、十二面体ぐらいから詠唱を増やすことが可能なようだ。
「どうやら魔石の形はゴーレム生成において重要なようだな」
「ここまで差がはっきり出ると、一般公開するのは躊躇われますね」
「一般公開してはダメなのか?」
「ルシャ様に申し上げにくいのですが、魔石が露出しない物と組み合わせるとかなりの武器となってしまいます」
「だろうな」
「そうなると、今までゴーレムのスキルというだけで虐げられていた者たちの中から、復讐に出る者も現れるかもしれません」
「……なるほど。その可能性はゼロではないな。しかし、せめて領内で作業する同じゴーレムのスキルを持つ者の役に立ちたいのだが、ダメか?」
「そうですね……こういうのはいかがでしょうか? ルシャ様が生成したゴーレムを貸し出すのです。ルシャ様なら詠唱を改良して余計なことをできないように制限をかけられるはずです」
「なるほど。俺が作ったゴーレムを貸し出すのか! それならば大きなゴーレムの実験もできるな。そうなってくると、形と詠唱の増え方の法則もはっきりさせた方がいいな」
「ルシャ様、形ではなく大きさはどうでしょうか? ルシャ様の詠唱により魔石は魔力に変換されるようなので、頭部の大きさを気にしなくても良さそうです」
「なるほど、確かに二十面体や球体は、実験で使っていた他の立体より明らかに大きい。詠唱が増やせた理由としてその可能性は考えられる、早速実験してみよう」
マリオネット人形の上に、砕く前の魔石を置いて詠唱すると、魔石はすべて魔力に変換され、人形に吸い込まれた。
「リリアナの言うとおり、大きな魔石でも問題ないな。つまり、できるだけ大きい球体の魔石を使う方が望ましいということか」
「詠唱の量によって大きさを使い分けるのが一番でしょうね」
「その辺りの境目も今度調べなければならないな。今回は形と色つきしか用意していないから、次は色つきの実験だな」
色つきの魔石は魔力が抜けないため使用できないと言われているが、まずは本当に使えないのかそのまま試してみる。
「……なるほど、確かに通常の詠唱では全く反応がないな」
「色のついた魔石は買い取りもしていないのでゴミ同然かと」
「強いモンスターを倒して色つきだったら可哀想だな」
「ある程度の大きさがあれば置物として買い取ってくれるところもあるでしょう」
なるほど、石の愛好家なら欲しがるかもしれない。
「次は魔力に変換する詠唱だな」
青色の魔石を乗せ詠唱すると魔石は魔力に変換されゴーレムが生成された。動作確認すると問題なく動く。というより、普通の魔石よりも動きが良い。
「これは大発見ですが、捨てる魔石をどうやって集めるか考えなくてはなりませんね」
「普通に買い取ってしまえばよいのではないのか?」
「魔石を買い取ったシャドウブレイズ家から、新たな宝石やゴーレムが次々と出てくれば怪しまれますよね?」
「そうか、バレれば価格が高騰したり、秘密を探ろうとする輩が増えるというわけか」
「仰る通りです」
「それについては、また考えるとして、一つ聞きたいのだが、青い魔石は水に関係するモンスターから出てくるとかあるのか?」
「その通りですが、どうされました?」
「魔石を魔力に変換した瞬間感じたのだが、水属性に関する機能をつけられそうな気がしたのだ」
「どのような機能でしょうか?」
「気がしただけだから、今のところ全く思いつかないな」
「例えば、水魔法を使えるゴーレムなら戦闘で役に立ちそうです」
「水魔法か! それも今度試してみることにしよう。次は虹色の魔石も試してみよう」
虹色の魔石もまずは普通に試してみるが、反応はないので魔力に変換しないとダメみたいだ。
次に魔力に変換する詠唱でゴーレムを生成し、動作確認すると色つき魔石よりさらに性能が上がった。機能は何かつけられそうだが、具体的に何がつけられるのかはピンとこなかった。
その後、色々と実験を繰り返し、分かった結果をまとめるとこうなる。
・魔石の形は球体に近いと性能が上がる。
・魔石の大きさに詰め込める詠唱の量は比例する。
・色つき魔石は性能が上がり、詰め込める詠唱の量も増える。
・色つき魔石は属性の機能がつけられそう。(未実験)
・虹色の魔石は色つき魔石のさらに上位互換。
つまり、最大級の球体の虹色の魔石があれば、二十メートルのゴーレムを動かせる可能性が出てきたということだ。
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