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75.【別視点】運送業組合長ベンの奔走

 【ベン視点】


 なにぃ、またアルベルトが来おった?

 

 はぁぁ…、また何ぞ面倒事を持ち込んできよったか。

 まぁしゃあない。ここんとこ世話になりっぱなしなんは事実じゃ。

 パン屋のメリッサの時も、こないだのマギーのばあさんの時も、あやつは驚くような手際で面倒事を捌き切りよった。


 今度もろくでもない話なんじゃろうが、わしらで役に立てるちゅうんなら協力せにゃならんな。


 しかし、あやつはどんだけ面倒事に好かれる星の下に生まれてきよったんじゃい……。




**********************




 ザイル運送商会…じゃと…?


 知らん商会じゃ……。

 ワシも所属しとる業者を全部覚えてるわけじゃないでな。

 ちょいと待ってくれ。

 名簿、名簿…と…。


 ああ、あったあった、コイツらじゃな。


 加盟後1年と少し、職員3人、薬品や薬草主体の

近場専門…と。

 新参者の小規模商会じゃ。



 ……で…、コイツら何やらかしたっちゅうじゃ……。


 お前さんが目ぇつけたんなら、何ぞ問題があるんじゃろう?





 なにぃ!ゴッヅとメリッサの嬢ちゃんを騙しよったじゃと!!


 ……ふんふん…

 ほお、犬のために……

 メリッサがのぉ……

 それで…

 ……む?…確かにあの日……

 ワシを訪ねてきたらしいが……

 そ…そんな…!あん時か!

 なんちゅう事じゃ!


「ちょ、ちょっと待っとれ!」


 ーーよりにもよって子供のキレイな心根につけ込んで貯めた小遣いまで手ぇつけよったじゃと!

 そんな外道がまだこの業界におったっちゅうんか!

 許せん!許せんぞ!



**********************




 ……しかし…、コイツの頭の中はどうなってるんじゃ……。


 ワシから見ても完璧と言っていい契約内容から、特約に仕組まれた罠を見破りよった……。

 

 確かにな、薬が実在しないってトコから理路整然と

条項を潰していけば、そこにたどり着くんじゃろうが…。

 そんなんは普通の人間の発想じゃないわ。

 詐欺を仕組む側の人間でなきゃできん芸当じゃ。


 コイツ…、やっぱ恐いやっちゃなぁ……。


 しかし…労せず金をせしめる方法にゃ違いないが、

契約を有効に成立させたうえで、犬殺めて依頼主からの契約解除を仕向けようとは……。

 なんちゅう卑劣な奴らか!


 すまんのぉ、メリッサ……。

 ワシが居らんかったばかりに……そんな卑劣な悪党につけ込まれるとは……。





 ……いや…、アルベルトよ……。





 ……そこはツッコんではいかんトコじゃろ…。



 ……おい…、何もかも知っとるぞ、みたいな目…

せんでくれい……。


 全くこやつは…なんでも見透しよる……。


「……いや…、ココんとこ口説いてたおなごがーー」


 じゃが反省はしとる!反省はしとるぞ!

 確かにワシが居ればな、メリッサの嬢ちゃんがクズどもに騙される事はなかった!わかっとるわ!


 せめてもの罪滅ぼしじゃ。

 なんでも言うてくれ。協力させてもらうぞ。


 む、明日か…?

 ……思いのほか…急な話じゃな……。

 ……明日は…あのおなごにもう一押し……


 いや!ダメじゃダメじゃ!

 しっかりしろ!ワシ!


 わかっとるって、明日はちゃんとここに居るよ。

 明日一番で特約を承認して、公明正大に契約を成立させてやる。

 そんで昼には奴らに引導渡したるわ!




**********************




 アルベルトは上手くやったようじゃな。

 

 クズどもが狼狽えおって…、おお、いいザマじゃ。


 そしてトドメにワシがおもむろに登場すると。


「く、組合長…、なぜこんなところに…」


「おお、取り込み中にスマンな。ちょいとアンタに用があってな」


 そして颯爽と懐からーーー

 除名通知を出す!!


 ハッハッハ、あの顔!この世の終わりみたいな顔しおって。

 まあ、この世の終わりではないが、運送業者としては終わったわけじゃからのぉ。


 おお、そうじゃぞ、純な子供の気持ちを平気で踏みにじるような卑しい輩はウチの業界にいていいはずないわ。


 それじゃサヨナラじゃ。もう会うこともないがな。


 

 おお、騎士団の方々、お役目ご苦労さんですな。

 奴らは上にーー

 あ、ザコが降りてきよった。

 親分見捨てて逃げる気か。

 ご愁傷さま。


 ほお、次の職場は『鉱山』か。

 よかったのぉ、すぐに新しい職場が見つかって。

 お仲間とまた一緒に働けるぞい。


 それじゃ達者でのぉ。




**********************



 

 さて、メリッサの嬢ちゃんにも金を返せたし、ようやく肩の荷が下りたわい。


 嬢ちゃんにゃウソついてしもうたが、こういう腹芸ならお手のモンよ。

 ああいうキレイな心根は大事にせんとな。

 クズどもに汚されたなんてわざわざ教える必要なんてないわ。


 アルベルトに借りも返したし、これでお役御免か。


 チョイと残念じゃ。これまでアルベルトからの頼み事を名目にして仕事休んどったからなぁ。

 その間、あのおなごずっと口説いてきた甲斐あって、もうあと一押しでイケるトコまで来とる。

 どぉれ、今度こそあのおなご口説き落としちゃるわい!

 待っとれーー


 ……ん…?

 

 ……なんじゃ…?


 ……なんか……後ろから…エライ剣呑な気配が…。


 ……おお……、副組合長……。

 ……奇遇じゃのぉ……


 い、いやぁ、もちろん今から組合に帰るトコじゃ。あ、当たり前じゃろ。


 ワシもな、アルベルトからの頼まれ事のせいでここんとこ仕事できてなかったけどのぉ、ようやくそれも片付いたで、今度は溜まった仕事片す番じゃっちゅうてな。


 それよりお前こそ、こんなトコで何しとるんじゃ。

  

 …はあ…?、ワシを待ってた?

 さっきアルベルトが挨拶に来た……?


 "長らく組合長にご尽力いただきましたが、本日の

メリッサへの返金を以て私の頼み事は終了致しました。

 組合長には連日1〜2時間とはいえお仕事を中断してご協力いただきまして、私のせいで組合員の方々にも多大なご迷惑をお掛けした事と存じます。

 こちら、シュルツのヤムル地方名産の果物です。

 お詫びと言ってはなんですが、組合の皆様でお召し上がり下さい。

 この度は誠にありがとうございました。

 組合長に、アルベルトが感謝していたとお伝え下さいませ”



 ……あやつ…、礼儀尽くす振りして、ワシがあやつの頼みを隠れ蓑にして仕事サボってた事、しれっとバラしおった……。




 ワシも腹芸には自信があったが…、あやつの腹芸というか……人心操作は尋常じゃないわい……。




 神話に出てくるメフィストなんたらとかいう悪魔は…

たぶんあやつにそっくりなんじゃろな……。

 



 


 



 

 


 


 


  

 

 

 




 


 

 



 


 

 



 

お読みいただきありがとうございました。


第四章「老犬」完結です。


結構お気楽に投稿してきまして、

「消化早っ!」とまでは言いませんが

ここまで若干ハイペースでした。


ストック状況を踏まえ、第五章からは 

投稿ペースを週3回に

変更させていただきます。


少しでも「続き読んでもいいかな」と思って

いただけましたら大変嬉しいです。

今後の励みになりますので、よろしければお気持ちの分だけ☆をいただけますでしょうか。


できましたら、ブックマークもしていただけると嬉しいです。

末永くお付き合い下さいませ。

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