62.野盗狩り⑰〜手配書の行方
「アリス!ケイン!母さん!」
「「母ちゃん〜!」」
「……エマ…、よく無事で……」
エマが無事テーゼに到着し、4人は感動の再会を果たした。
滂沱の涙に暮れる4人を確認し、ゼクスたちは静かに花屋をあとにした。
す
今日は家族水入らずで過ごさせてやろうと、慮っての事だ。
それからエリシアたちに一連の経緯を報告するために、領主邸に向かった。
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ーーーー領主執務室ーーーー
「お疲れさま、みんなよく無事に戻って来てくれた。
感謝する」
エリシア、アルベルトが皆を出迎える。
既に代官への連絡担当が、野盗討伐とエマ救出を報告済みであり、ふたりの顔も明るい。
ソファにゼクス、シド、エヴァが座り、騎士団5人がその後ろに並ぶ。
「シドもエヴァも、今回はいろいろと協力してくれてありがとう。君たち無くしてはこの作戦は成立すらしなかった。本当に感謝する」
エリシアが改めてシドとエヴァに頭を下げた。
「いやぁ、そんなに感謝されるほどの事はしてないよ。補佐さんの策の通りに役柄を演じただけさ」
エヴァが両手を振って恐縮する。
シドはいつも通り顔色ひとつ変えず、無言を貫いている。
「民間人の君たちが店を休んでまで協力してくれた。
これはその補償と礼金だ。受け取って欲しい」
アルベルトがテーブルに、金貨の詰まった巾着をシドとエヴァの前に置いた。
「…あれ…?このカネって…さっき返したヤツ?」
それは今回の小道具として、野盗に見せびらかすためにエヴァが持たされた金だった。
「君たちはこの前、補償は不要と言ってくれたが、
エリシア様がさすがにそうはいかんとおっしゃってな。
もともとその金は君たちに進呈するつもりだったんだ」
ああ、なるほどね、とエヴァがアルベルトに意地の悪い視線を投げかけ、冗談めかして言う。
「なぁんだ、そうだったのかい。そんじゃ、村長さんに渡した宿代、もうちょっとケチった方がよかったかねぇ。大盤振る舞いしちまったよ」
「もちろんその分は補填してある」
「……アンタ、やっぱ隙がないね…、どこまで見えてんだか…。
まあ、そこまで言ってくれるんなら、ありがたくいただくよ」
冗談を躱され、少しバツの悪い表情で巾着をシドに渡すエヴァ。
「騎士団諸君にも、今回の働きに感謝し、報奨金を用意してある。各自庁舎で受け取ってくれ」
エリシアの計らいに騎士団員から歓声が上がった。
ゼクスのみ、なんとも面白くなさそうな顔をしている。
「……お嬢…、わしには…何も…?」
その反応にエリシアがクスッと笑う。
「いや、もちろんあるぞ。リン、入ってくれ」
エリシアの声に促され、奥の扉からリンが飛び出してきた。
「ゼクスじいじ〜」
「おお、リンか、今帰ったぞ」
リンがゼクスに抱きつき、感謝の気持ちを吐露する。
「じいじ、アリスちゃんたちのお母さん連れてきてくれて、ありがと。おケガとかしなかった?だいじょぶ?
みんなよろこんでた?」
「おうおう、ケガなんぞするもんか。
今日はマギーんトコは家族水入らずってやつじゃ。
これからもずっと一緒に暮らせる」
その言葉にリンがポロッと涙を溢した。
「…ありがとう、じいじ…大好き…」
「おうおう、ありがとよ。じいじもお前の願いを叶えられてうれしいぞ。ほれ、泣くでないわ」
「どうだ、ゼクス。この報奨は?」
エリシアが腕組みをしてドヤ顔でゼクスに問い、当のゼクスも満足気だ。
「いやぁ、お嬢、さすがによくわかっておられる。
これ以上の褒美はありませんな」
「あ〜あ、いいな〜、アタシらもがんばったんだけどな〜」
エヴァが冷やかし気味にチャチャを入れるが、おねえさんもおじちゃんも大好き、と満面の笑みでリンから
感謝を示され、逆に顔を赤らめるハメになった。
ひとしきり、和気あいあいの雰囲気で談笑が続く。
ふと、ゼクスがある事を思い出した。
例の手配書。
あの黒歴史。
事が済んだら、アレは自らの手で処分するハズだった。
「おう、エヴァ。あの手配書出せや。
もう用済みじゃ、わしがこの手で処分するわ」
そう聞かれたエヴァは、ああ、そう言えば、と所在を思い出そうする。
そしてハッとして、急に吹き出した。
「……おいおい…、なんじゃい、急に」
「クックック…、あ…アレね…、クッククク…」
ゼクスがずいっとエヴァに圧を掛ける。
「お前…、まさか…無くした…とか、そんなお茶目
カマすつもりじゃなかろうなぁ…」
しかしエヴァは、ゼクスの圧にも全く動じる素振りもなく、しれっと答えた。
「無くしたなんてとんでもない。ちゃんとあるよ。
うん、ちゃんとある。
……もっともココじゃなくてーーーー」
「あの村の祭壇の奥にね」
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「…な…な…な……、なんじゃとおおおお!!
ど…ど…ど…どういう事じゃ!!」
顔を真っ赤にしたゼクスが、エヴァの胸ぐらを掴みながら狼狽する。
ガクガク揺らされながらもエヴァの笑いは止まらない。
「いやね、アタシら村の人からエライ感謝されてたろ。みんなに囲まれてお礼言われてた時に、あの手配書見られちまってね。
そしたら、コレをくれって、祭壇の奥に置いて毎日
拝みたいって、そう言われてさ。
そんで、まあいいかって、ハハッ、あげちゃった」
「……オ、オドレ……、なんちゅう事を……」
わなわなと震えるゼクスの肩に、ポンッとアルベルトが手を置いた。
「まあまあ、騎士団長、考えようによってはよかったじゃないですか。
女神信仰の地で祭壇に置くのであれば、手配書は密かに祀られるという事です。見えるように飾ったりしませんよ。
村人の心の安寧に役立つし、門外不出になりますし、捨てるよりよっぽど有益でしょう」
「いや…、確かにそうではあるが…、しかしのぉ…」
ぶちぶち文句をたれ続けるゼクスだったが、
「……ゼクスじいじはあの似顔絵、きらいなの?
わたしは好きだけど…」
「な、なに…?」
「だって、じいじのやさしいお顔描いてあったよ。
わたしと遊んでくれてる時、いつもおのお顔してくれてるでしょ。大好きなじいじのお顔だよ」
リンからのこのひと言で、ゼクスは完全降伏した。
後日、騎士団長室に手配書のゼクスのみが描かれた巨大な似顔絵が飾られ、シドの酒場にはゼクスのみ抜かれたシドとエヴァの手配書が貼られていた。
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次回タイトル予告「家族の再会・花屋の再開」




