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プロローグ「300年前の夜」
初投稿です。
初回10話(プロローグ+9話)を一挙公開し、
その後は当面毎日投稿していく予定です。
夜空は血の色だった。
怒号、悲鳴、馬の蹄と嘶き、燃え盛る炎。
剣と剣、剣と盾、剣と鎧が、激突するたびに
泣き叫ぶように空気を震わす。
「お父様…」
横たわる領主の傍らで、その手を握りしめる幼い娘。
「私も…、私も共に……」
幼い娘のその言葉に、領主は震えながら娘の頬
に手を伸ばし、微笑を浮かべる。
「生意気な…ことを…。子供は……」
父が娘に最期に紡いだその言葉は、他の誰にも
聞こえる事なく、戦場に溢れかえる狂気に掻き
消されていく。
最期の言葉と共に、領主の手が娘の頬から地に
落ちる。
幼い娘と領主の、2人だけの空間から、あらゆる音が消え失せた。
そしてその刹那、地を震わす慟哭と共に、眩い
閃光が周囲一帯を包み込んだ。
悲しみも、絶望も、欲望も、何もかも包み込み……、そして閃光が消えた跡には……何も残っていなかった。
お読みいただきありがとうございました。




