表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/94

094 : 新たなる旅立ち

待ての勇者と急ぎの姫騎士


094 : 新たなる旅立ち





 町のみんなは「神殿を作ろう!」と言ったが、ロキもシギュンも断った。



 ついこないだまで、別の世界から身を引いて森に隠棲していた身なので「神殿というのは憚られる」ということらしい。


「謙虚な神さまですねえ(^^)」


 エマは額面通りに受け取るが、ヒルデは違う。


「神殿に祀られたら自由がきかんだろ。ロキの趣味は変態だからな、変態」


「アハハ、ヒルデが言うと、ちがうヘンタイに聞こえるぞ」


「そっちのヘンタイの意味も籠めている。じかに人と関わろうとするのは神の道に外れる」


「真顔で言うな」


「なぜだ、真面目な話だぞ」


「ヒルデも十分すぎるくらい俺たちに関わっているじゃないか」


「はい、お世話になっています。わたしもです(^^;)」


「ギギも!」


 出会いは交通事故みたいなものだったが、このハイデベルクまでの旅は俺たちを、その……家族のように……と言うと照れくさいが、まあ、そういう感じにしてくれた。


「……わたしは、ヴァルキリーの名簿を取り返すためだ」


「あいつら魔王に……」


 この手でぶちのめしたり止めを刺したりしてきたので後の言葉を呑み込んでしまう。


「幾百幾千のいくさを駆け抜けてきた者たちだ、簡単には消滅しない。強者中の強者。また名簿に戻されて、あの名簿が魔王の手にある限り繰り返し使われることになる」


「……そうなのか?」


 だとしたら残酷すぎる。


「それに、名簿に載っているのはあんな人数ではないからな」


「そうなのですか……申し訳ありません、軽く言ってしまいました……あ、列が動き始めました」


「そろそろ中に入れるかなあ」


 俺たちは、げんこつ山の次に体裁を整えたギルドに来ている。早めに来たつもりだったんだけど、もう長い列ができている。


「これが全部冒険者なら、手当たり次第にブチノメスところだがな」


「ヒルデさまぁ(^^;)」


 今度のギルドは商人や職人、職人やらフリーターやら、いろんな職業を網羅して行き届いている。


 行き届いてはいるが、その分、駆け込んできた人数は半端じゃない。なんだか開園間近のディズニーランドのゲート前みたいだ。


「お待たせいたしました、これよりご案内いたします(^^)」


 めちゃくちゃ可愛い案内さんに、少しだけときめく。


「スグルさまぁ」


「なに鼻の下を伸ばしている。あれはロキの分身だ」


「え!?」


「やつは単に化けるだけじゃない、簡単な仕事なら何人も分身が作れる」


「そうなのか」


 感心していると案内嬢と目が合って、ニコリと微笑まれる。ヒルデの話を聞いていなかったら、頬が赤くなったかもしれない(^^;)。


 そうなんだ、このギルドはロキがシギュンを説得して作った総合ギルドなんだ。


 北への旅を再開するにあたって、俺たちは開店間もないギルドに来ている。


「スグル様ご一行は、冒険者以外に商人や職人の通行証もお持ちですので有利でございますよ」


 受付嬢が笑顔で答えてくれる。シュプルーデ川を発つとき、シャイロックからもらったあれこれが役に立つ。


「はい、それでは、こちらS級冒険者の免許になります。ヒルデさま、エマさま、ギギさまも同様でございます。お気をつけてお励みくださいませ(⌒∇⌒)」


「あ、はあ(*´ω`*)」


 思わずデレテしまうと、受付嬢は「ワハハハ」と笑って、首だけロキの爺さん! 後ろで女三人が遠慮なく笑いやがる。


 くそ!


 ギルドを出ると入れ違いに魔術師の姉妹。人の流れがあるので目で挨拶するだけ。でも、いくつもの戦いを経てパーティーこそ別だけど戦友という感じだ。他にも見知った顔が冒険者の受付に並んでいる。


 過酷な旅になるだろうが、みんなそれぞれがんばれ。


 

「ギギ」



 ギギが何かを予見して立ち止まる。


 なにやつ!?


 少し身構えて立ち止まると、懐かしいやつが顕現した。


「いやぁ、ごめんなさい。遅くなってしまって!」


「「「女神!?」」」「ギギ?」


「特別枠で、元に戻せるようになったんで、急いで来たのよ! いやあ、気には掛けていたんだけど、なんせ受け持ちが多くって。二人とも令和の日本でいいわよね?」


 さっそくロッドを取り出す女神を俺は手で制した。


「え?」


「俺たち、魔王を倒すところまではやってみるよ。なあ、ヒルデ」


「ああ」


「あ、えと……そっか、メイドさんの他にも……え、二人の娘さん!?」


 ギギを見て顔をほころばせる女神。


「「違うから!」」


「え、あ、早とちりか(๑>؂<๑)」


「ひょっとして、安心したとか?」


「え、ああ……少し……(〃▽〃)」


 なんだか急にモジモジしだす女神。


「女神さん、おトイレ行きたい?」


 ギギが目ざとく見抜いてしまう。


「あ、ちょっち急いで来たから……」


「じゃ、ここでゆっくりしてくれ」


 ギルドの筋向いに六本木にありそうな公衆トイレを出してやる。


「あ、ありがとう!」


 バタム!


 ドアが閉められる音だけ聞いて、俺たちはハイデベルクのそこだけ無事な北門に向かって歩き出した。



 

 待ての勇者と急ぎの姫騎士 第一期  完


 

☆彡 主な登場人物


・鈴木 すずきすぐる    三十路のフリーター

・ブリュンヒルデ         ブァルキリーの戦乙女

・エマ              バンシーのメイド

・女神(甲と乙)         異世界転生の境に立つ正体不明の女神たち

・ハンス・バウマン        ズィッヒャーブルグのギルドマスター

・フンメル            西の墓地に葬られている一万年前の勇者

・カルマ             フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い

・トルクビルト(工藤甚一)    ズィッヒャーブルグの幻影魔法士(娘:ビアンカ、カリーナ)

・シャイロック          ヴェニスの商人

・ロキ              荒れ野の神(ヒルデの義理の叔父) シギュン(妻)

・親指姫             げんこつ山のゴーレムに取り込まれていた

・秀を取り巻く人々        先輩  アキ(園田亜妃) 田中

・他の冒険者たち         オンケル シュベスタ―

・魔物たち            謎かけ魔物 リーツセル(Rätsel) ガイストターレン シュプルーデ川の魔物 樹叢の魔物 セイレーン(半鳥半人) ギギとクク(元セイレーンの姉妹) げんこつ山のゴーレム  巨大唇の化け物 グズルーン(魔王に魂を売ったジークフリートの王妃)

    

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ