八日目
フェリシティはウィリアムと一緒に、いつも通り庭園を散歩していた。ほとんどが薔薇なのだが、どこを見ても一つの芸術品のように美しく、飽きることを知らない。
「この辺りでいいかな」
今日はピクニックのようなことをウィリアム邸の敷地内で行うことにした。フェリシティには野菜、ウィリアムにはサンドウィッチが何個か用意されている。
「フェリシティはカリフラワーが好きだよね?」
そう言うと、ウィリアムは小さなお皿に数個、カリフラワーを置いた。また、次々にブロッコリーやレタスを置いていく。
今日もウィリアムはフェリシティに甘々だ。ピクニックを行い、フェリシティの好物を知って、それを出してくれる。
「どうだい? おいしいかい?」
フェリシティがウィリアムについて考えてながらカリフラワーを食べていると、ウィリアムがそう尋ねた。
フェリシティが食べるカリフラワーは上流階級の人たちがこぞって食べたがる、あの有名なブレア農園で生産されたものだ。なので、今まで生きてきた中で一番おいしいと言っても過言ではない。固すぎず、柔らかすぎず、味も絶妙で、ずっと食べていたいくらいだ。
フェリシティは何度も頷いた。ウィリアムについて考えても、その内お別れするのだから考えても意味がない。だから、おいしいカリフラワーを咀嚼することに夢中になった。
(お別れ……か)
少し、本当に少しだけ、この生活から離れてしまうのはもったいない気がした。モンロン男爵邸ではできなかった遊び暮らす生活は、フェリシティを怠けさせ、捕まえて離さない。
ただ、ずっとウィリアム邸にいるというのは難しい。フェリシティは十六歳で、家のために結婚相手を探さなければならない。
家族はフェリシティに獣人だとバレない範囲、或いはバレても大丈夫な相手と恋愛結婚を勧めているが、今の、いや、初めての舞踏会に行った後のフェリシティは、恋愛結婚はできないと諦めている。
あれほど陰で罵られたのに、その中から良い人を見つけるというのも酷な話である。
だから、せめて家のために結婚をしたい。そのために、一刻でも早くここから立ち去らなければならないだろう。そして、家のためになる人を探さなければならない。
また、やはりずっとウィリアム邸に滞在するのには不安がある。ウィリアムが三代公爵の孫で、ウィリアムの友人のノアが獣人に対して怒っているということが分かったからだ。そのため、バレたときのことを考えると、離れたほうが良いと分かっている。死刑されることも、奴隷になることも、家族に迷惑をかけることもしたくないからだ。
(ここから離れたら、こんな美味しいカリフラワーが食べれなくなるのね……)
本当に惜しい。モンロン男爵邸に戻っても度々ここにカリフラワーを食べに来たいくらいだ。
しかし、自分の将来と今を天秤にかけたとき、大事なのは安全な自分の将来だ。泣く泣く、フェリシティは帰ることを決意した。
次は円満に帰してもらえるように頑張ろうと思い、今はこの美味しいカリフラワーに集中することにしたのだった。




