孔明の死
書き直しました
ピチャ、ピチャ、ピチャ、顔に落ちる水滴の冷たさに目が覚める。送られた当初は気絶していたみたいだったが、目が覚めてここはどこだろうと周りを見た。だが真っ暗で何も見えなかった。とりあえず立ち上がろうとして手をつくと石の様な固い物が床一面ばら撒かれているような感覚がある。壁に手をつくとその壁はブヨブヨと不快感な柔らかさに、なにかドロッとした液体が掛かっているかのような感じだ。
「うぅ・・・・・・・ ぐすっ、楓」、思わず弱音が出てしまう。ときおり躓きながらもノロノロと歩いた。しばらくすると、真っ暗な闇の中でも広い空間に出たと知覚で解かった。しばらく辺りをキョロキョロと見回した後ふたたび歩くと、何かにつまづいて転んだ。
「いてててて、これなんだよ・・・・・ ん? かばんみたいなのか?」
手探りで色々やっていると、やっぱりかばんみたいだった。かばんらしき物の中に手を入れると
「ん、この固いの・・・・魔道具か? 灯りの魔道具なら助かったぁ~~」と安堵した。魔道具は二種類に別れていて、予め陣や詠唱だけが組み込まれていて魔力は自分で供給しなければならないもの。もう一つは魔力も注入されているものとある。灯りの魔道具は後者だ。
スイッチを押すと暗闇から僅かとはいえ急に発光した事によって一瞬目の前が真っ白になった。ようやく目が馴れ初めたところで「うわぁぁぁぁ!! な、なんだよこれ。こんなのもう嫌だよぉぉぉ」と腰を抜かした。
床一面には大量の人骨が散乱しており、かたわらにもついこの間まで生きていたと思われる人骨もあった。孔明は気付いていなかったが、その人骨には所々肉のような物もこびりついていたのだ。孔明はブルブル震えながら心が折れていた。
しばらく時間が経つと、「「「うぅぅぅ、うぉぉあぉあああ」」」というような声が聞えてきた。だが孔明の折れた心は最早立つ気力すら失われていて、三角座りをして顔をうずめてぶつぶつ言っている。地面・壁・天井、ありとあらゆる所から出てきたそれは見た感じ半透明でふわふわしていて、それはまさしくゴースト、それも非常に禍々しくなったものだ。それらが複数、いや集団とも言うべき数で孔明の周りを取り囲む。
「辛いねぇ~」「苦しいねぇ~」そんな声に
「うん、僕は苦しいよ。僕は捨てられたんだ。お前の命なんかいらないって言われて」と返事をした。
「ひどいねぇ~」「可哀想にねぇ~」、と不気味な声が返ってくる。それにはうめき声が混ざっていて、気分の良いものではなかった。
「僕の事、好きだって言ってくれた女の子にも裏切られた。命すら助けて貰えなかったんだ」と吐き捨てるように叫んでしまった。
「捨てられたんだぁ~」「でも安心して、私達が居るよ~」「ここで永遠に私達と一緒に暮らそうねぇ~」「とても楽しいよぉ~」そんな声が聞える。そのまま孔明は眠ってしまった。
二日目、そして空腹が襲ってきてさらに脱力感が襲ってきた。下半身は糞尿に塗れ、さらに水も飲めない状況で喉が渇く。
「辛いねぇ~」「苦しいねぇ~」「も……う大丈夫だよ………」
いつの間にか亡霊以外にドロドロのブラックスライムの様な物が取り囲んでいた。そいつらはいつまで経っても襲ってこず、まるで僕の様子を楽しんでいるようだった。
孔明はまだ独り言を呟いている、「神様・・・・・・ どうして僕をいじめるのですか? 僕が何か悪い事をしましたか? 僕は出来る限り精一杯生きてきました。僕はただ人並みの幸せが欲しかっただけなんだ。僕の周りは悲しい事が多かったけど、それでも不満も言いませんでした。何故・・・・・・何故・・・・・・」
背後ではズリズリと何かが迫ってくる音が聞えるが、全く耳に入らない。何者かが迫る音と、極悪な亡霊どもの声がどんどん近付いてくる。
三日目、全身の脱力感がさらに増し、飢餓と乾きがさらに僕を苦しめる。途轍もない苦痛で頭が狂いそうになる。そして考える
何故・・・・・・・・・・・・何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故
神様、僕は何かしましたか? 僕にどうしてこんな酷い仕打ちをなさるのですか? 僕は人並みの幸せすら送る資格が無いのですか? 僕が弱いからですか? 僕がゴミ屑だからですか?
もうこの怒りと恨みの念は抑えきれずに噴き出している。
許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない
何が魔族だ。何が王国だ、何が帝国だ!! 何が神だ!!。僕、、、、いや 俺は絶対に許さない。絶対にだ!!
最初は小さな呟きだったが、段々と大きな声になってくる。そして亡霊やスライムの様なものが死期が近いと悟ったのか、その声に関係なく近付いてくる。そしてとうとうスライムは足に噛り付いて肉をズボンの布ごと咀嚼し、凶悪な霊は集団で透過した腕で人体を解体していく。それと同時に他の奴等も次々と腕や腹に噛り付いた。
ああ 喰わせてやるよ。テメエラの好きなようにしろ。誰にも知られていない遥かに深い地底に俺は死ぬ事になるだろう。だが俺はこの復讐心を忘れない。
秀郷・光輝・護に田山達、俺を生贄に選んでなお後悔の念すら浮かんでいなかったクラスメート、訓練と称して有力な奴等以外のクラスメートと共に俺を毎日半殺しの目に合わせたこの世界の奴等、そして楓。俺は絶対にお前等を許さねぇぇぇぇ!!
「覚えてろよ!! 覚えてろぉぉぉ!! 絶対に、絶対にぶっ殺してやるからな!!今までも都合の悪い奴を始末してきたんだろ!! 俺は、俺は絶対に許さねぇぇぇぇ!!!!! がふっ」最後は絶叫になったが、衝撃が走ったかと思うと黒い尖った物に背後から胸を刺された。ヒューヒューと息しか吐けないながらも、自分の肝臓らしき物を食しているのを光を失った目で見ながら唇は最後まで復讐を誓っていた。
孔明は、以前王国にとって都合の悪い人物が辿った道同様、死という形で幕を閉じたのであった。




