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沈黙のストライカー  作者: ムーミンの丸焼き
アストン・ヴィラ4年目

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160/160

ニコラスvsアリスター――2戦目


---


オールド・トラフォード。残り二節。


スタジアムが満員だった。キックオフ前から声が止まなかった。


---


## ユナイテッド、ロッカールーム


キックオフ一時間前。


選手たちが準備していた。誰も余計なことを話さなかった。


アリスターはスパイクの紐を結びながら、今日のヴィラの映像を頭の中で流していた。


ニコラスの動き出し。パブロのパスのタイミング。ロジャーズの仕掛け。


ブルーノが立ち上がった。「みんな聞いてくれ」


ロッカールームが静かになった。


「今日勝ったら首位に立てる。でもそれだけを考えるな。ヴィラは今季最強のチームだ。一瞬でも気を抜いたら持っていかれる」


マグワイアが続けた。「十一月を覚えてるか。誰もいなくなったあのロッカールームから、ここまで来た。今日、その答えを出す」


トム・ペリーが「やるぞ」と言った。コリンズが「やるぞ」と繰り返した。声が重なった。


アリスターは立ち上がった。


「行こう」


それだけだった。でも全員がアリスターを見た。そしてついてきた。


---


## ヴィラ、ロッカールーム


同じ時間、エメリーが前に立っていた。


「今季、ここまで戦ってきた。今日のユナイテッドは本物だ。でもヴィラも本物だ」


ニコラスは前を向いていた。


「ユナイテッドは首位を取りに来る。俺たちは守りに来たんじゃない。勝ちに来た。それだけだ」


パブロが頷いた。ロジャーズが頷いた。パウ・トーレスが「行こう」と言った。


ティーレマンスが「今季ずっとやってきたことをやるだけだ」と言った。


ニコラスは手の甲のライオンを見た。


「行くぞ」


---


キックオフの笛が鳴った。


両チームが前に出た。ヴィラのプレスが速かった。ユナイテッドのプレスも速かった。どちらも一歩も引かなかった。


ボールが行き来した。チャンスが来ては消えた。どちらかが前に出れば、もう一方が押し返した。息つく暇がなかった。


---


前半二十七分。


アリスターがティーレマンスのプレスを受けた。


体を入れ替えた。半歩ずらした。それだけでティーレマンスの重心の逆を突いて抜けた。


右サイドへの道が開いた。


デイヴィスが走り込んでいた。アリスターはデイヴィスを見ていなかった。見なくてもわかっていた。


出した。


デイヴィスが受けた。縦へ仕掛けた。ヴィラのDFが対応しきれなかった。クロスが上がった。


ガルナチョが走り込んでいた。ヘッドで叩き込んだ。


一対〇。


オールド・トラフォードが爆発した。アリスターは立っていた。デイヴィスが走ってきた。「最高だ!」と叫んだ。


---


ヴィラが前に出てきた。


パブロがボールを受けた。ユナイテッドのMFが寄せてきた。体を入れ替えて前を向いた。ロジャーズが右サイドへ仕掛けた。デイヴィスが対応した。


パブロがボールを持った。ユナイテッドのDFが絞った。


その瞬間、右にスペースが生まれた。


ニコラスがすでにそこへ走り込んでいた。


パブロが出した。声はお互い必要なかった。


ニコラスが受けた。GKと一対一。右足のインサイドでゴール左隅へ流し込んだ。


一対一。


ヴィラのベンチが立ち上がった。スタジアムが揺れた。パブロがニコラスのところへ走ってきた。「見えました!動き出した瞬間に絶対入ると思いました!」ロジャーズが「そうだ!」と叫んだ。パウ・トーレスが後ろから「続けて取るぞ!」と声を出した。


アリスターはその場面を見ていた。ニコラスが動き出した瞬間から見えていた。でも止められなかった。パブロが出す前にすでに遅かった。


---


前半が終わった。一対一。


ユナイテッドのロッカールームでブルーノが言った。「後半も同じように行く。引かない。前に出続けるぞ」


マグワイアが立ち上がった。「あと四十五分だ。出し切ろう」声が上がった。


ヴィラのロッカールームでエメリーが言った。「前半の内容は悪くない。後半も続けろ。ヴィラのサッカーをやれ」


ニコラスは水を飲みながら頷いた。まだ終わっていない。まだ取れる。


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後半が始まった。


どちらも攻めた。どちらも守った。ヴィラがボールを動かした。ティーレマンスが展開した。パブロが仕掛けた。ニコラスが動いた。


コリンズが体を張った。マグワイアがクリアした。


ユナイテッドがカウンターに入った。アリスターがボールを受けて右へ展開した。パウ・トーレスが戻ってパスコースを消した。


GKが何度も動いた。DFが何度も体を張った。


一対一のまま時間が過ぎた。スタジアムの緊張が高まっていった。


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七十八分。


ユナイテッドがボールを回した。ヴィラのDFラインが引いた。ブロックを作った。ペナルティエリアの前が壁になっていた。パスコースが消えていた。


エヴァンスがアリスターへ下げた。


エリアまで二十五メートル。


ヴィラのMFが前に出てきた。アリスターは一歩右に動いた。重心を左に見せて右に踏み込んだ。MFの重心が左に傾いた。


一瞬だった。


その一瞬にアリスターは左足に体重を乗せた。右足を大きく引いた。


ゴールの右上隅が見えていた。マルティネスの右手が届かない位置。


右足を振り抜いた。


ボールが走った。壁の脇を抜けた。伸びた。


マルティネスが右に跳んだ。右手を伸ばした。


届かなかった。


ゴール右上隅に突き刺さった。


二対一。


オールド・トラフォードが揺れた。地鳴りのような声だった。


---


アリスターは走らなかった。一歩も動かなかった。ただ立っていた。


ブルーノが最初に来た。「お前しかいない!」


デイヴィスが来た。「信じてたぞ!」


トム・ペリーが来た。「最高だ!最高すぎる!」


コリンズが来た。「やったぞ!」


マグワイアが来た。「これがお前だ!」


アリスターはチームメイトに囲まれながら、ようやく笑った。


---


ヴィラのベンチが動いた。エメリーが選手を送り込んだ。


ニコラスは前を向いた。


まだ十二分ある。まだ終わっていない。


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ヴィラが総攻撃に来た。


ニコラスが動いた。パブロが動いた。ロジャーズが仕掛けた。ティーレマンスが展開した。パウ・トーレスが上がった。


何度も来た。ユナイテッドのDFが体を張り続けた。コリンズが跳ね返した。マグワイアがクリアした。


アリスターは中盤で走り続けた。ボールを受けた。時間を作った。パスコースを消した。


時計が進んだ。アディショナルタイムに入った。


ヴィラがCKを得た。マルティネスが上がってきた。蹴られた。マグワイアが跳んで跳ね返した。


ブルーノが拾った。アリスターへ出した。アリスターがタッチラインへ逃げた。


笛が鳴った。


二対一、ユナイテッドの勝利。


アリスターはその場でしばらく動かなかった。


今季の最初、ヴィラパークで負けた夜のことを思い出した。


ロッカールームに一人で座っていた。チームメイトが全員出ていった後も、足が動かなかった。だめなのか、と思った。自分にはタイトルを取れないのか、と思った。


あの夜から、ここまで来た。


今日、同じピッチで逆転した。


アリスターは顔を上げた。


チームメイトが走ってきた。


---


順位が入れ替わった。ユナイテッドが首位に立った。


残すは最終節のみ。


---


試合後の通路。


ニコラスとアリスターがすれ違った。


ニコラスが立ち止まった。アリスターも立ち止まった。


しばらく何も言わなかった。


「あのシュート」とニコラスは言った。「マルティネスが届かなかった」


「狙ってた」


「そうだろうな」


アリスターはニコラスを見た。「来週も勝つ」


ニコラスはアリスターを見た。「俺もだ」


二人は別々の方向へ歩いた。


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