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土属性の上位精霊ベヒーモスは甘々姉様声な犀だった

 結論として、ほぼ回復はしなかった。


 その感覚は身に覚えがあって、多分物質界と妖精界の違いなのだろうと思う。こればかりは誰にも判らない。妖精側だってサンプルが無さ過ぎて、人の事など知らんというわけで。


 それでも、動ける程度に回復したのはミナコールが居たから。厳密に言うと、ミナコールが保管していたスタミナ回復用の薬品があったから。


 俺とマリアキラ以外の全員に配って微量ながらスタミナが回復したようだった。


 全員でゆっくりと最奥まで進むのだが、最下層も砂地は続く。……周囲を見ていて可哀想になる。アトモスの時と雲泥の差過ぎる。


 そんな事を思いつつゆっくりと最奥に向かい、ついにベヒーモスと会った。


「……今回も凄い迫力ですね……」


 ニチリカが露骨に動揺する。


「いらっしゃい。お疲れでしょう? どうぞ、こちらにお座り下さいな」


 そう言うと、彼女の周りで石を削って作られたようなベンチが現れる。


 重い足を引き摺るように歩き、何とかベンチに腰掛けるのを確認してから俺も席に着く。


 みんな場所の取り合いをする元気もないようで、出口に近い場所から席が埋まっていた。


「皆さん、初めまして。わたしはベヒーモス。土の上位精霊をしております」


 そう言って、彼女は軽く頭を下げる。


 ……ダメだ。視覚情報と音声が合ってなくて脳がバグる。


 まず、彼女は犀だ。大きさは他の上位精霊同様に巨大ではあるが、犀は犀である。その身体は傷だらけで歴戦の猛者を感じさせる。多分、見た目だけなら渋い男性の声が似あうだろう。


 しかし、聞こえてくる声は30歳前後の優しいお姉さん……しかもASMRが得意そうな甘い声の女性ボイス。目を瞑れば、色気全開の若奥様にしか思えないのに……犀である。


「あの……何故、そんな傷だらけに?」


「これ? フフフ……実はね、【剣の乙女】と力比べをしたの。弱すぎてビックリしちゃった」


 ……あれ? 意外にも好戦的?




「最初に、今回の時間の方は……」


「余裕ありますよ。急がなくても平気です」


 最初に確認する事。今回は急がなくても良いようで……周囲は助かるんじゃないだろうか?


「余裕があるなら……何故、ムッチミラ……【剣の乙女】と力比べなんかを?」


「気にするのね? ……まぁ、口止めされていないから良いけど……彼女、進化したの」


「進化って、天職ですよね?」


 ……聞いておいて、それしか無いと思うのだが理解を拒んでしまった。


「もちろん。そこで、わたし達上位精霊の力の一部を使えるようになるらしいのだけど……正直、あまり貸したくないものだから」


 新しい天職は【召喚士】? いや、そうでなくとも召喚系なのかもしれない。


「それで、お貸しした感じですか?」


「手加減しているわたしに負けたら貸せないわ」


 そう言って、「フフフ」と上品に笑う。……豪快に笑いそうな犀なのに。


「そうですか……じゃあ、雑談は終わりにして本題。シオリリア……黄鱗の竜人(テーライア)族の子供が、魔人族に狙われた理由をご存知でしょうか?」


 彼女は数秒の沈黙。


「あ~……うーん……そうね。魔人族が襲撃してきた理由は、彼女が貴方に渡るのを阻止するためだったのでしょう」


 ……何故?


「どうも、女神は貴方と竜人族を会わせようとしているの。でも、それをよく思わない勢力がそれを阻止しようと動いている」


 ……そう言われると思い当たるところが多々ある。


 シーナッツは女神と魔王の力はほぼ拮抗していると言っていた。そして、幾つもあった未来を潰されているとも。お互いアホでもなければ策に気付いた時点で放置している訳がない。


「つまり、今回も貴方に竜人族を集めようとしている戦略がバレて、阻止をしようとした。しかし、それを貴方が直接阻止した」


「なるほど」


 ……そうなると、シオリリアが暮らしていた生家……迷宮? を追われたのは……?


「もしかして、シオリリアが1人になってジャイアント族に養われていたのは俺のせい?」


「そんな事ないわ……でも、魔王側が竜人族の合流を嫌がっているのは有効という事」


 ……どうやら、本当にシオリリア達が対魔王側の切り札になるようだ。




「次の質問。ヒューム族とジャイアント族の対立って、他の亜人種と比べると様子が違うような気がするんだけど……?」


 ヒューム族と亜人種の対立は『竜王の時代』まで遡る。竜王の暴走を止めるヒューム族の選ばれし者……初代の神器使い。竜人族と共に戦い恩義を感じていた亜人種。彼等の目にはヒューム族は裏切り者と映った。……それが、主な種族間対立の始まり。


 現在は二極化していて、ドワーフ族やグラスビット族のようにヒューム族は短命で今いる人達とは違うと考えている人と、エルフ族やマーマン族のように原則関わらないように生きる人達。しかし、ジャイアント族はヒューム族を嫌悪しながらも極少ない場ではあるが交流を維持している。


「理由は砂漠ね」


「砂漠?」


「聞いた事があるでしょう? 砂漠が拡大してヒューム族のエリアを侵蝕している。状況はお互い理解している。だけど、認識は違うの」


「どういう事?」


「一番のポイントは、ジャイアント族に砂漠化現象を抑える力は無いの」


 ……それは察している。まず、ジャイアント族は残念ながら知力が低い。もちろん個体差はあるし、中には天才みたいな人材は現れる。……あくまで平均的なジャイアント族の話。


 更に言うならば、砂漠が広がってもジャイアント族にとってはそこまで不都合を感じないというのが根底にある。……実際は食料調達が苦しくなるんだけどね。


「他のヒューム族以外の種族の方々と同様にジャイアント族にとって基本的にヒューム族の印象が悪いの。だから、ヒューム族によって砂漠を狭まられるのは理屈が解っても受け入れられない人が多い。困る事も今のところない。……ジャイアント族にとって協力する必要があるかって話になるの」


 例えは少し違うが『対岸の火事』って感じなんだろうな。ヒューム族が困ろうと知った事じゃないのだろう。




「とりあえず、対立に転生者が関わっていない事は判った。じゃあ、次の質問。……瞳や髪の色は魔法の適正と抵抗力を示していると思うんだけど……合ってる?」


「合ってる」


 ……これ、本当はマリアキラの親父さんに聞こうとしたんだよなぁ。そんな時間無かったけれど。


「知っての通り、物質界に生きる生物は両親の影響を受ける。身長だったり、性格だったり、顔の形や肌の色だったり。ただ、瞳の色や髪の色は母親を通じて身体に取り込まれた空気中のマナに含まれている精霊力のようなモノの影響を受けるの。……もちろん、色は母体にいる時点で確定されるわ……もちろん、例外もある」


 今の説明であれば、氣属性の橙色や音属性の桜色が多い理由は何となく判る。


「例外?」


「命が宿ったタイミングで精霊に祝福されたり、特定の精霊の影響を強く受けたりした場合」


 それ以外の色は、こうして生まれる。……つまり、精霊の匙加減次第って事か。でも、そうなると、余計に謎なんだよな。


「ここに、アダマスオーロ王国第一王女、アヤルンゼールが居ます。彼女の髪と瞳の色は何の適性があるのか教えて欲しい」


 ……もちろん、推測はしている。ただ言葉にするべきではないと思っている。根拠も確信もなければ尚更の話。憶測が外れたら目も当てられない。


「気付いていたのですか?」


「もちろん。特殊色……勝色だね……黒に近い深い青系の色で紫を帯びている色。緑を帯びる藍色とは違う色だよね」


「……そうですね。その色はこの世界にあってはいけない……魔属性の色です」


 予想通りの答えをベヒーモスは答え、それを聞いたアヤルンゼールはショックを受けていた。




「やっぱりか……つまり、お城に魔属性の影響がある何かがある……もしくは、あったって事だよね……じゃあ、最後の質問。上位精霊達はユニーク職持ちが集まるような運命に俺はあるっぽい説明をされたと思う。見つけたユニーク職は全員スカウトしないとダメ?」


 記憶違いでなければ正式には転生者だったと思う。細かい言い回しは違うかもしれないけど意味は間違っていないはず。


「ダメという事はないわ。貴方も感じているとは思うけれど、既に貴方達は国を相手に戦える程の戦力を有しているわ。……まぁ、絶対勝てるという保証もないけれど……でも、負けるとは言い切れないところまで来ているわ。だから、貴方が選べば良い」


「……」


 何か言おうと口を開いたが言葉が出て来ない。


 こんだけ強くなっても戦力不足だと言われている……その副音声には気付いた。


「これも気付いていると思うけれど、貴方にとって必要な用意された人材は積極的に仲間へ加わろうとするわ。貴方の意思に関係なく」


「そっか」


 俺の意思に関係なく、必要な人材は勝手に来る。……それは、こちらから誘う必要がなく、運命により彼女達にとって仲間に加わる理由があるから来る……という事か。


 ……という事は、あの2人もいずれは仲間に入れろと言ってくるのだろうか?




「ありがとう。ベヒーモス様から俺に改めて何か伝える事はある?」


「大丈夫。もう伝えたわ」


 想定外の返事。てっきり「何も無い」と言われると思った。


 ……つまり、俺の問いへの答えに伝えるべき事があったという事?


「失礼しますね。ベヒーモス様からの皆様への前報酬でございます」


 そうロリ声で話し掛けてきたのは、可愛らしい顔の黄色い狸だった。……多分、中位精霊。


「ありがとう。それで貴女は?」


「わたしは土の中位精霊のオレイアスです。マレイゼリンさんに大事なお話があります」


 前報酬に感謝を告げた後、みんなより先に俺はフェアリークイーンの元へ向かった。

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