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天職進化で初の失敗者の出現とベヒーモスからの招待

 宴の翌日、用件が済んだユーマオロ達はエレツテーレに帰ると指示があった。


 行きと手順を逆行ように巨大化したジャイアント族にオネーサンドまで運んで貰い、そこから現在は馬車での移動。


 もちろんHP、MPは満タンでバットステータスも無い。しかし、ステータスに影響はない程度の筋肉痛と疲労は確実に身体を蝕んでいる。


 無茶した反動は簡単に回復しない。……それにしても思ったより自分の限界が早い事に驚いたな。MP節約の換装作戦は失敗と言って良いだろう。


「サッ君、大丈夫ですか?」


「うん」


 普通に返事する。……ランファスが話し掛けてきたのも、今は聞かれる心配がないからだ。何故なら今はシャドウメイデンで移動中だから。


「昨日はベッドから出たら宴で、全てを把握できていないけど、気絶後も楽勝という雰囲気では無かったみたいだね」


「死人がでる可能性をサッ君が1人で刈り取ったのだから、気にする事じゃないですよ」


 ……いや、仲間は信頼しているけど……色々あったっぽいんだよなぁ。


 ちなみに今回出撃した面々はマリアキラ、シオリリア、オートマタも含めて既に撤収済み。帰りも多分何も無いだろうと推測し、俺1人で充分と判断した。


 ……まぁ、実際何も無かったんだけどね。


 この大行列であれば、原則臆病なコボルドは近づいて来る事も無いし、セルケティオは砂漠から出てしまえば雑魚なので、砂漠から出てくる事は稀だ。治安が良いのか野盗の類も出現率が稀で、採石場付近に比べれば段違いだ。


「お疲れ様でした。サクリウス様、お父様に了承を得てきますのでお待ち頂けますか?」


「いや、今日返事を貰うのは不可能でしょ? やるべき事もあるし、王子から報酬を頂いたら先に船に戻るよ。2人でゆっくり来て」


 アヤルンゼールからの滞在要請を断り、報酬を貰ったら即時撤収した。




 《孤独の楽園(リターン・ホーム)》で帰って来ると、会議室に行くように言われた。


 休む間も無く会議室に行くが空室で、場所を間違えたのかと思ったら今回防衛線に呼んだメンバーが集まってきた。


「おかえりなさい」


「ただい……ま?」


 何事かと思ったけれど、俺が戻る間に『天職進化の儀』をして貰っていたのだと言う。


「良い話と悪い話、どっちから聞く?」


「じゃあ、良い話から」


 エルミスリーに尋ねられ、そう答える。


「じゃあ、順番に……」


「じゃあ、わたしから。……えっと、ウルトラレア職の【邪導戦士】に進化しました」


「【邪導戦士】?」


 『竜騎幻想』には無い天職だ。しかもウルトラレアと言っている時点でユニークじゃないわけで。……知らないという事は『ヴァルキリーサガ』の職業か? 正直判らない。


「邪属性の魔法を使えるようになったみたいです」


 イヴァルスフィアで生まれ育った生物は、学習すれば属性問わず簡単な魔法が使える。俗に言われる『生活魔法』と呼ばれる殺傷能力を得ようとすれば、知恵を絞って道具を揃える必要がある程手間の掛かる……非戦闘用魔法の事だ。世間一般ではそれを「魔法を使える」と大人は言わない。……つまり、魔法戦士のようなものになったという事だろう。


 続けて、アヤカシアは【闇導戦士】、ミューディアは【暗殺者】、サチカーラは【計桃騎士】、ナツキヨノは【光導戦士】、コトリスティナは【幻影盗士】、カナエアリィは【獣魂装士】、マミルリーヌは【野伏】、リョーコロンは【軽戦士】に進化していた。


「それで悪い話って?」


「フローティラス姉妹の2人が天職進化できなかったの」


 ……いや、一般的には普通の話ではあるんだけど……確かにここでは異常だった。


「彼女達に説明は?」


「してあるけど……」


 エルミスリーの歯切れの悪い返事から、リアクションは微妙だったのだろう。


「それと、マユシェさんも進化失敗。……そっちは受け入れているみたいだけど」


 ノーマル職からレア職へ進化した事自体がかなりのレアケース。それだけでマユシェはフローティラス姉妹と違って満足だったのかもしれない。




 フローティラス姉妹の落ち込み具合は酷かった。……正直、一度だけ慰めの言葉を告げた後は何と話し掛けたら良いか判らず、遠巻きに心配しているだけだった。


 『竜騎幻想』だったら所謂「成長終了のお知らせ」なのだが、現実の場合は【職審官】を変えて『天職進化の儀』をすれば、低確率だが進化する可能性はある。……ちなみに推奨はされていない。心が折れていくだけだから。実際、レア職賜っただけでも凄く、スーパーレア職になっただけでも奇跡的確率なのだ。


 ……どう行動するかは彼女達次第だろう。


 一方、俺はというと戻って来てから疲労気味。それはオートマタ達に使用分のMPを毎晩補給しているから。


 オートマタは寝ない。寝る必要がない。横になってもMPは回復しない。回復手段は主人である俺が与えるしかない。


 常時ダルい日が続き、消費分のMPを補充し終えて二度と同じ事はしないと心に決めた頃。


「お待たせしました、サクリウス様。ユイリーナも連れて参りました」


「いらっしゃい。チーム入り承認は、食事まで待って貰って良いですか? 今は仕事で船から離れている人も居るし、見ての通りお客様もいるので」


「……お客様?」


 どうやら、今になって甲板にいるのが冒険者だけじゃないと気付いたようだった。


「お姉様。わたしが案内しますよ」


 マレイゼリンとマミルリーヌがアヤルンゼールへ強制的に船内案内を開始する。甲板より下は承認されてからと話はしてある。


 ……まぁ、承認されたんだけどね。


「おめでとうございます、アヤルンゼール様」


「えっ? 貴女は……」


 世間一般よりは遅い夕飯時。食事の前に全員に確認を取り、無事に2人ともチーム入りが承認されたんだけど、チーム内に顔見知りの他国の姫様達が居た事に驚いていた。




 その日の夜。イクミコットに呼ばれて彼女の部屋へ行く。


 イクミコット=フィリアスは俺と最近加わったネオンと同じ特別な事情で地下3階の住人である。そして、特別な理由というのは、彼女が船の動力炉を管理している【機工師】だからなんだけど。


「それで話って?」


「結論としては神器の杯のレプリカは作れない事が確定したの」


「それは……しょうがないとしか……」


 今回のオネーサンドまでの護衛という依頼内容を説明した際に強く同行を彼女が求めたのは、元々モモニウレーラの神器である『杯』を見る為だった。


 神器のレプリカを作る事は【機工師】の目標みたいなものだから。


「既に水を生み出す壺なら魔道具で存在しているの。薬品生成はそもそも材料がないと不可能。他も考えられなくはないけれど、あたしが考えられるのは対応した霊石に応じた物質くらい。そうなると、原則無意味なモノしか生み出せない」


 液体、固体と限定するなら、水と土、金と木くらいか。魔石を動力として生み出せるモノは水や氷、石、鉄、果実か? ……果実なら食料不足解消……いや、そんな量となると魔石がいくつ必要になるやら……。


「確かに、魔石を消費してまで得たい物となると無理だしね。だけど、収穫が無かったわけではないの。そこで、サクリさんにお願いが……」


「お願い?」


「はい。サクリさんの神器の武器のレプリカを作る許可と協力が欲しいんです」


 ……うーん。仮に強力すぎる武器ができたら、特定の勢力に売ると大問題になるよな?


「チームの戦力アップだけが目的で販売目的じゃないなら……1つずつね」


 武器化した時点でMP消費するので、頻繁に見せられないと釘を刺しつつ了承した。




 イクミコットとの打ち合わせを終えて、部屋に戻る。


 すっかり湯冷めしているが、問題なかった。


「「「おかえりなさい」」」


 ベッドを占拠する者が1人増えていた。正直、子供とはいえ4人で寝るのはかなり狭い。


 ……最初、そんな素振りは無かった。


 みんな地下2階に個室を持っている。お風呂入るまでは自室にいる事が増えているが、ちゃんと日中は甲板でお手伝いをしているらしい。


 それでも、風呂から出ると3人とも部屋に来る。


 シオリリアは最初こそ1人で寝るつもりだったと思う。でも、ミサキオレとアズサーラの行動を理解した瞬間、彼女も同じ行動をしてきた。……竜人族の子供に共通する何か意味のある行動なのだろうか?


「んじゃ、寝ようか」


「「「はーい」」」


 俺を挟むようにミサキオレとアズサーラは寝転がる。今回はシオリリアがアズサーラの隣に寝る。……どうやら交代制のようだが……。


 初めは、寂しいのなら3人で寝られるように大部屋で同室にしようかと提案したのだが、どうもそれは違うらしく、3人は断固拒否していた。


 2人は抱き枕へ抱くように密着してくれるから良いが、1人離れている子だけは腕枕になって、毎朝片腕だけ痺れている。……もう諦めている。最初は俺に被さってうつぶせ寝しようとしたので、ランファスが寝られなくなるところだった。


「サッ君、ベヒーモス様が呼んでいます」


 まだ寝転がったばかりだったので、ランファスの声は俺の耳に届いた。


「じゃあ、明後日は『土霊王の古祠』に出発だな」


 そう答えると、間もなくして意識を失った。


 翌朝には、アオランレイアとニチリカに報告して出撃メンバーを相談する。


 そして、その翌日にはシャドウメイデンに乗って1人で砂漠へと向かった。

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