何故かシオリリアを狙うセルケティオ族と魔人族襲来
ジャイアント族の里の名前はレッツアレーナ。どうも話を聞いている限りでジャイアント族の目的は【杯の乙女】であるモモニウレーラのようで。
何かあったら対応できるように離れる事はできないが、部屋に入る必要はないようでユーマオロ達がいる部屋の近くに待機していると女の子が2人近づいてきて離れない。
それ自体は嫌では無い。むしろ嬉しい。でも、それにより仲間達の視線が刺さるように痛い。特にミューディアには殺意が混ざっている気がする。
……皆さん、お仕事ですからね……。
俺より大きい彼女は可愛くなった……いや、本来の姿に戻ったマリアキラ。身長は俺よりはるかに大きい211センチと聞いた。童顔カワボの女の子で大きな黄色の瞳に股上まである明るい黄髪を三つ編みにしている。
もう1人の女の子。名はシオリリア。マリアキラと同じ黄瞳に黄髪ではあるが、身長が140センチくらい。子供であってもジャイアント族にしては低い。そんな彼女はマリアキラが言うには黄鱗の竜人族だという。流石に3人目だと驚かないけれど。
色々聞きたい所ではあるが、今は仕事中。……仕事中にしては既に充分らしくない状況にはなっているが、何故かジャイアント族の他の方々は俺達を見ても何も言わなかった。
「すっかり気に入られましたね」
話が終わり部屋から出てくると、2人にくっつかれている俺を見た里長が話し掛けて来た。
「みたいです……仕事中に申し訳ありません」
「いいの。娘が女の子らしい反応するのを初めて見ました。……わたしは本当に娘を産んでいたようです」
「……どういう意味?」
「……性格の話よ」
……素はどんな性格なのやら。
ムッとしているマリアキラへ里長は当然のように答えた。
「今夜は皆さん宿泊して頂く事になりました。……マリアキラ、案内よろしくね」
宿泊になる事は知っている。場所は違うけれど襲撃されるのは日没付近の予定だった。
俺が宿泊する部屋は里長の屋敷だった。理由はマリアキラを救った恩人だから直接もてなしたいという話だった。……ただただ恐縮するのみ。まだ、ちゃんと助けていたのなら素直に受け入れる事ができたのだが……だからといって、きっぱり断るのも失礼な話なわけで。
夕飯を食べ終えて2人に翻弄されていたら、予定通りに外が騒がしくなった。
「何事?」
「セルケティオ達の襲撃です」
「また? ……客人がいるタイミングで……」
マリアキラが部屋の中から外にいる人を適当に捕まえて話を聞く。
「俺達がいるから襲って来たんだと思う」
そう言って部屋を出ると、マリアキラも慌てて俺を追いかける。
「アイツ等、シオリリアを狙っているの」
「え? ……いや、説明は後でいいや。目的は理解した」
……襲撃される事は変わらず、目的だけ改変されたって事か。
[サクリさん、リンクします……どう動きますか?]
リンクされると既に他のメンバーともリンクされていて敵の位置も小マップで確認できる。
[敵は……ハイセルケティオと魔人族が混ざっているのか……]
[はい、現在ジャイアント族の自警団の方々と王国兵団の方が交戦中です]
魔人族ギガース……どちらにせよ数から言っても厳しそうだ。
[サクリさん、我々でハイセルケティオを相手にしませんか?]
そう言って話に入ってきたのは意外にもイクミコット。
[何か策があるの?]
[はい。フローティラス姉妹によるバフをマップ全体で回します。拡声器、完成しました]
……おぅ、スピーカーできたんか……。
[解った。みんな、話は聞いての通りだ。アイナッツとミハーナルは拡声器を使った歌の準備を。残りは全員出撃。目的はハイセルケティオの排除]
全員からの「了解」という返事と共に戦場へ出撃する様子を確認する。
「マリアキラさん、お願いがあるんだ。ジャイアント族の自警団の方達にギガースの対応をお願いできないかな? セルケティオはこちらで対応するからって」
「わかった。行ってくる!」
……これで、こちらが優勢に戦える……そう思っていた。
2人の歌がガンガンと戦場に響き渡り、チーム全体の回避率と命中率が上がる。ジャイアント族の方々にバフが掛からないのが申し訳ないが、それは仕様上仕方がなかった。
ただでさえの大規模戦闘だ。彼等には彼等の戦い方がある。
〈砂漠の加護〉により厄介な敵となったセルケティオ達だったが、バフのおかげで決着が付きつつある。……もちろん、こちら側の圧勝で。
[敵、増援が来ます!]
ニチリカの念話による警告。
すると、サイクロプスとアークセルケティオの軍団が現れる。
……おいおい、大規模すぎんだろ……『竜騎幻想』でもハイセルケティオで充分な数だったんだけど?
〈砂漠の加護〉付きのアーク級を相手にするとなると、バフがあっても苦戦する。まともに相手ができるのはユニーク職のサチカーラとコトリスティナくらいだろう。……あくまで相手ができるだけであって安全に倒せるレベルでもない。
……仕方ない……あまり気が進まないけれど……。
イクミコットの横まで行き、指示を出す。
「何があっても歌は止めるな。拡声器、頼りにしている……ユカルナ」
念話をするまでもなく、呼ぶと俺の影からユカルナが現れる。
「〈エンゲージ〉」
「闇纏の黒斧、参ります!」
そう言って、彼女からキスをする。そのまま俺の身体に纏わりついて武装化する。
初めて装備したユカルナは俺用にカスタマイズされた両手斧。デザインも変わっていた。
「いくぞっ、せーのっ!」
振り被って、下ろした瞬間に錘が手元から先端に「ガンッ!」という大きな音を立てて柄を移動する。重心が変わり先端が重くなった斧は加速がついて一撃で切断音無く裂いた。
重さで腕の筋力が大きく疲労したのを感じつつ、次の敵へ向かった。
「〈セパレート〉」
「なんでっ?!」
ユカルナとの〈エンゲージ〉を解除する。戦闘の最中での〈セパレート〉にユカルナからの当然の苦情。
「……悪いな。1人のMPを全部使わせるわけにいかないんだ」
そう、俺の考えた作戦……というか実験。
「サヤーチカ、〈エンゲージ〉!」
「鋼弾の灰銃、貴方に身を任せます」
彼女からのキスを受けいれ、そのままバスターライフルとそれを補助する装備へと姿を変える。そのまま狙いを定めてサイクロプスの頭を打ち抜く。
「〈セパレート〉……ホーコリン、〈エンゲージ〉!」
「空轟の茶錘、選んでくれる事は判っていたよ!」
……おかしい。出力をセーブしてMPを節約しているのに身体が痛くなっている?!
しかし、多少無茶しなきゃ全滅すると思ってホーコリン……直径20センチあるヨーヨーを構えてセルケティオに投げつけて轢き潰す。
こうして、〈セパレート〉と〈エンゲージ〉を繰り返す。ただし、リナトーラは除く。
「〈セパレート〉」
思わず動きが止まる。身体が痛い……〈セパレート〉する度に痛みと疲労が累積していく。
サイクロプスもアークセルケティオも数でこちらが優勢になったと思った矢先、複腕の巨人が現れる。それと同時に足元からミカコラプスが出現する瞬間を見てしまった。
ヌンチャクと呼ぶには鎖が長い双棍を手に取り……ニチリカからの情報を確認しながら、ヘカトンケイルを一撃で吹き飛ばし……俺のレベルが3にアップした。
……目が覚めて、眠っていた事に気付いた。
オートマタ達が居るので船に戻って来たのかと一瞬思ったが、どうやらまだ里長の家。
「お目覚めですか、主人?」
「あ~……リエルディラ……俺はいったい?」
「ミカルコアを最後に使用して、MPを全部持っていかれて気を失われたのです」
「戦闘は?」
「怪我人は出ていたようですが、既に全員全快しています」
……身体が動かない。首から上しか動かないようだ。
よく見ると、看病してくれていたのかマリアキラとシオリリアも近くで眠っていた。
コンコン。
来たのは里長の旦那。食事の時に顔を見たけれど、会話はしていないはずだ。
「予定通りに意識が回復したみたいだな。……本来は何もアドバイスするつもりは無かったが……里を守ってくれた礼だ。まず、竜人族を保護する事になるのは女神ナンス様からのテコ入れだ。暫く大事に守ってやってくれ。それと、昨夜のような戦い方はするな……死ぬぞ?」
「貴方は……」
「最後に、頼まれたからといって『邪竜討伐軍』へ合流するな。前回のように詰むから」
……そう忠告されて理解した……彼はきっと、『女神様の使徒』だ。
「あら、アナタもサクリウス君に興味があったの?」
「そりゃあ、娘の婿になるかもしれない人だからね……では、私は失礼するよ」
……今の話は黙っていろって意味かな? ……話すつもりはないけれど。
里長が来て、入れ代わりで彼が出て行く。彼女は寝ている娘達を見て目を細める。
「本当に娘だけでなく、里も救ってくれた英雄サクリウス様。貴方が居なければ里は間違いなく全滅していた。ありがとう」
そう言って、彼女は深々と頭を下げる。
「……もう、限界かもしれないわね」
頭をあげるとシオリリアを見ながらボソッと呟いていた。
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