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「……これが初仕事って、かなりキツいね」

 話が纏まると、アッツミュ達が運んできた積荷を自分達の荷馬車に積み替える。最初の内は淡々と作業をしていた彼女だったが、感情の限界を迎えたのか俺達から少し離れた。


「……これが初仕事って、かなりキツいね」


「そうですね」


 そんな中、ユミウルカとサティシヤが荷物を運びながら話す声が聞こえている。まぁ、当事者が居ない間に感情を共有したかったのかもしれない。


「こういう時は生き残れただけで偉いんだから、次があるのは凄いことだよ」


「そうそう!」


 アッツミュに話を聞かれない内に話の流れを断ち切り、荷物の移し替えに集中させようとするが、想定外のクレアカリンの相槌で俺の中で不穏な空気が流れる。


「あたし達にできることは彼女を送り届けることくらいだから、さっさと積みましょう!」


「「「はーい」」」


 ……まぁ、俺等もそうなんだけど。護衛依頼受けるとイベント発生するフラグでもあるのだろうか? フィクションなら判るし、俺なら女難が絡むとは思うんだけど……いや、もしかして、その事故も俺の……いやいや、そんなわけないよな。自意識過剰良くない。


「サクリ君、燃やし終えたよ」


「ありがとう」


 コボルシフトの遺体を燃やし終えたマオルクスが戻って来た。彼女だけがスキルで遺体の焼却と消火ができるのというのでお願いしていた。


 ……フィクションといえば、『竜騎幻想』関連で何か似た話があったような気がするんだよな……うーん、何だったかなぁ?




 マオリクスが呼びに来たことで、今度は俺が焼却したコボルシフトを土葬する。適材適所とは言ったモノで、〈サイコキネシス〉で土を掘って、燃やしたモノを触れずに入れて土を被せる。感染症の類であれば燃やせば菌は高確率で死滅しているだろうが、呪いの類であれば遺体に触れたくもないだろう。……何がトリガーになるか判らないし。


「……あっ!」


「え? どうしたの?」


 傍に居るのがマオルクスだけなことに安堵しつつ。


「いや、この状況に何か憶えがあるな……って思っていたら、ようやく思い出したってだけ」


「思い出した?」


「実はアッツミュさんって、何処かで見たような気がしたし、この状況にも心当たりがあったんだ。でも、『竜騎幻想』にはこんなイベントは存在しないし、アッツミュというユニットも存在しない。だから、何処で見たんだろうって考えていたんだ」


 ゲーム内の女性ユニットは思い出すまでもなく全員憶えているし、男性ユニットもだいたい憶えている。NPCに至っては気に入ったキャラなら憶えているが、他は怪しいところ。それでも、【魔術士】にして冒険者であれば間違いなくユニット候補だろうし容姿や声からも憶えていないことはありえないので、存在しないと断言していた。


「実は、アッツミュは没キャラなんだ。開発スタッフ達の裏話が掲載された時に、何人かサンプルがあって……」


「そんなのよく憶えているね……」


 感心しているのか呆れているのか判らないリアクションだが、そんな反応は前世ではよくあった話だ。


「まぁ、好きな見た目と好きな声だからね」


「へぇ~。サクリ君はどんな女の子が好みなのかな?」


「……そんなん、どうせ興味ないでしょ」


 この手の話に付き合ったら、面倒なことになるのは経験から判るんだ。


「そんなことないよ。興味があるから聞いてるんだし」


「まぁ、気が向いたら考えておくよ。今はそんなことより早く埋葬しないと」


 世界が変わっても、女子はこういった話が好きなのだろうか?




 ……とりあえず、空気読んで会話を終了してくれたかな?


 埋葬しながら恋話は流石に不謹慎と思ってくれたかもしれない。……原因は俺にあるのだから言葉にした時点でダメだったんだが、うっかりだから勘弁してほしいところ。


 ……でも、アッツミュのことは完璧に思い出した。


 ちなみに公式には名前は付いていなかったはず。ただ、灰色の髪に銀色の瞳。ピンクのソフトレザーアーマーに黒のローブは見覚えがあった。


 確か、彼女のキャラデザは良かったのに没になった理由が【魔術士】の序盤の需要が無いことが原因だった。


 実際のアッツミュもそうだったけれど、【魔術士】の初期装備は魔導書1冊。得手不得手はハッキリしていて、正直弱い。【魔術士】が強くなるのは魔導書3冊くらい入手してからなのだが、それが初期では手に入らないんだよね。……リアルは知らんけど。


「それで、サクリ君的に好みのタイプであるアッツミュちゃんはチームに誘うの?」


「誘わない」


 即答。……というか、俺が女性を誘うという選択は基本ない。特に今の環境では。【念動士】という天職を授かったから女難回避率は高くなっているかもだが、死なないという保証もないわけで。


「え~、何で?」


「彼女だってそれどころじゃないでしょ。まずは事後処理をしないと」


 全員分の穴を掘り終えたので、今度は1体ずつ焼却した遺体を穴に入れていく。MPもガツガツ削れているし、もうスキルを使用した戦闘は難しいだろうな。


「ちょっと意外」


 ……いったい俺を何だと思っているのか。




 【魔術士】の育成は難しい。普通に育てると序盤が弱すぎるのですぐに死ぬ。


「ちなみに俺は誰も誘ってないからね?」


「……そうなの?! サクリ君って前世から常に女の子と一緒にいるイメージだったから誘っているのだとばかり」


「小4以降は誤解だからね?」


 ……小3までは近所が女子ばかりだったからというのもあったし、気にした事もなかったからなぁ。


 そんな前世の話はさておき、【魔術士】の育成は戦闘を行ってMPを消費したり、スキルを使用して回復したりすることで経験値を得る。だが、基本的に魔導書は販売されてない上に、【魔術士】が装備できる防具がソフトレザーアーマーより堅い素材の防具は不可能。ソフトレザーアーマーなんて、革ジャンに少し防御力を付け足したようなもの。俗にいう『紙装甲』というやつだ。


 戦力となるユニットが少ないのに、たいしたことができない【魔術士】の席はチームにない。『竜騎幻想』をベースに考えるならばの話だが。


 育てる手段は無くもない。ただ、そこまでして自分の女難による死ぬ確率を自ら誘ってまで上げたくはない。


 ……そもそも、『竜騎幻想』の初期メンバーに【魔術士】が既にいる。


「ふ~ん。それは想定外だったなぁ。サクリ君って女の子慣れしているイメージだった」


「いやいや。俺より目立つ男子は沢山いたからね?」


 ……目立ちたくなかったので、おとなしくしていたっていうのもあるけどね。




 穴に土を戻していく。つまんない話を聞かせながら埋葬することを許してほしい。……普通「爆ぜろ、クソガキが!」とか思うよな? ……本当にすまん。


「……そっか」


 あまり掘り下げないで欲しいタイプの話題ではあるが、終わってくれるなら都合が良い。何となく、「マオルクスはどうだった?」と聞いて欲しい雰囲気はあるが、絶対に聞いてやらない。


 ……それにしても、ラフ画しか無かったけれど、アッツミュって没にするには惜しいユニットだし、声も良いんだが?


 正規メンバーは男キャラだったから、俺だったら彼女を育成するかなぁ。ちなみに序盤で【魔術士】を2ユニット育てると言う選択はない。


「おし、終わり。この場に【修道士】いないから素人な弔いだけど……安らかに眠って下さい」


 片膝をついて両掌を合わせる形で握り、冥福を祈る。


「さて、荷物も積み終えているようだし……戻るか」


 隣を見ると、マオルクスも祈っていたようで立ち上がる。


 ……初依頼はトラブルにつきキャンセルってところかな。




「到着だね。……御者さん。申し訳ないけど、荷物をアッツミュさんと一緒に運んで頂いても良いですか?」


 ユミウルカが御者さんから了承を得ると、アッツミュも申し訳なさそうに頭を下げる。


「アッツミュさん。最初に冒険者の店に行ってから、依頼主の元へ行ってくださいね」


「はい、丁寧にありがとうございました」


 シオリエルにも頭を下げる。そして……。


「サクリウスさん、そしてチームの方々。ここまで助けて頂いてありがとうございました」


 出発時の集合場所でアッツミュと別れ、俺達は“朽ちぬ日輪”亭へと帰った。

読んで頂きありがとうございました。

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