スキアーオスクリタの有名な商家令嬢コトリスティナ
食事もご馳走になり、雰囲気的に撤収するなら今だと思う。とりあえず、墓荒らしの件も死者の霊を呼ぶ話も俺達には関係ない事。だから帰る前に1つだけ尋ねる。
「そろそろ、俺達は撤収するよ。でもその前に俺達も墓荒らしと間違われないためにも墓荒らし事件の詳細を教えてほしいんだけど」
「それなら捕まえて頂けると……」
「それって正式な依頼?」
「いえ、そういう訳では……」
……まぁ、そうだろうな。彼女が身銭を切って冒険者を雇う理由があまりない。
「正論を言うなら、俺達の仕事じゃないと思うんだ。それは町の自警団や国の兵士の仕事……国は動かないとは思うけれどね。で、仮に町の自警団を動かすのは町長だから、自警団に無理だと判断したら冒険者を雇うと思うんだ」
町の治安の責任は国から命じられて町長として治めている王族の責任だ。クリスターク王国の理屈で言うならば、力ある者が上に立つべきだから。
「そうですね」
「だから、俺達に関わる義理はない。だけど関わらなきゃならない可能性もある。知らずに疑われても仕方ない状況になり、こちらの落ち度だからこそ潔白を証明しなきゃならなくなった場合なんだけど。……それを避けたいんだ」
経験値稼ぎのためにも、今すぐポーンブラへ帰るわけにいかない。あと数日は滞在したい。そのためにも地雷原は避けて通る必要がある。
「先程話した内容で知る限りのほとんどを話したと思うのですが……死んで一ヶ月以内の埋葬済みの遺体が6体盗まれました。……あっ、享年が最年長で30歳未満で身体が損壊していないレア職の方ばかりでしたね」
……その情報、割と重要じゃね? 主に【死霊術士】を犯人として疑うなら。
これもあくまで『竜騎幻想』の設定と同じなら……という不確定なものが根拠ではあるけれど、仕様では呼び出されたアンデッドの強さには個体差がある。その理由付けとして、元となった遺体の生前の強さが影響するという話で。
「それで、現在犯人は見つかっておらず。墓場は監視されている状況なんですよ」
「じゃあ、墓場に近づかなければ大丈夫……もしくは町の住人と一緒に行くくらいか?」
……これ、絶対犯人捕まらないだろ……ってか、何目的なんだろ?
コンコン。
「はーい」
来客。コトリスティナが扉を開ける。俺達は入れ替わりで出ようとアカネムに話すと、来たのはアオランレイアだった。
「サクリさん、遅いので迎えに来ましたよ」
「あ~、悪い。ちょっと墓荒らしの件について犯人見つかってないから怪しまれないよう対策を考えていたんだ」
これまでの話を駆け足で説明する。詳しくは帰ってから説明すれば良いし、今はアオランレイアが状況把握できればそれで良い。……と思っていたのだが。
「……なるほど。じゃあ……〈アナライズ〉しますね」
唐突な〈アナライズ〉。一瞬、「どういう事?」とは思ったが、犯人の目星をつけるのに初手として軽く探るつもりなのだろう。……まぁ、それくらいなら……。
「えーっと……犯人は、貴女?」
そうメグルーナに尋ねる。……言うと思ったよ。
「違う、違う!」
俺が指摘すると、彼女は少し考え……。
「じゃあ、貴女ですね?」
と、今度はコトリスティナに尋ねる。……コイツ、ポンコツか?
「んなわけあるかっ!」
「そうですか? だって、彼女はユニーク職ですよ? できる事が知られていない事が多いユニーク職は疑うのに充分な理由だと思いますよ?」
「えっ?」
ボケだと思ってツッコミいれたが、想定外な答えが返って来た。
「確かにわたしの天職はユニーク職だけれど……犯人ではないです」
「でも、貴女が犯人なら【死霊術士】の彼女を招いた理由もターゲット逸らしと理解できるわ」
……おぅ、真犯人はまさかの人?! なんか最初はなんてボケとか思ったけれど……。
「違います。メグルーナさんに依頼したのは先程話した理由です。それに、わたしの【幻術士】には遺体を利用するようなスキルはありません」
「疑ってごめんなさい。……ですが、貴女の言い分を鵜呑みにしているわけではないの。結局のところ、目星をつけることが目的の〈アナライズ〉だから。でも、まさか怪しいのがお二方になるとは思わなくて。……もし捜査が始まったら、疑われてしまうかもって話です」
結論は簡単には犯人を見つけられない……けれど、それ以上の大発見で……。
「あの、コトリスティナさん。もしかして、転生者?」
ここにいる部外者はメグルーナのみ。彼女だけなら意味不明だろうと思い……急遽尋ねた。
「……あのぉ、転生者って何ですか?」
コトリスティナは不思議そうに俺に尋ね返す。
「あ~、いえ。知らないなら大丈夫です。失礼しました」
……おや? 割と確定していると思ったのに、ここにきて違うのか?
「じゃあ、迎えも来たし帰ろう」
アカネムに声をかける。そもそもたいした事はしていない。お礼という意味では食事をご馳走になっただけでも過剰なくらいだ。
「あたしも今日は宿屋に戻るね。準備も必要だし」
俺達の撤収タイミングでメグルーナも宿に戻るみたいだ。
「あの、サクリウスさんにだけ大事な話があるので残って貰えませんか?」
「少しなら……」
帰る3人を見送ってから、2人きりになると俺の顔をジッと見る。
「あの、転生者という言葉を知ると言う事は、貴方も転生者?」
……知っていたんかい……ということは、やっぱり転生者か。じゃあ、あの時に語らなかったのは他の連中が居たからというのと、俺が転生者である事を確認するためかな?
「うん。俺は日本という国で知念朔理という名で高校生をしていた」
クリスターク国民は慎重な人が多い。こちらが知りたい情報を先に話す事で聞き出しやすくなるかもしれない。
「えっ、サクリウスさんは朔理君? サクリ君って呼ばれている時点で気にはなっていたけど……わたし、夢咲胡桃」
「え? 胡桃さん?」
夢咲胡桃は2歳年上の幼馴染みで、家の向かいに住んでいた。姉のような存在で幼い頃からかなり世話をやいて貰い、幼い頃は彼女に懐いていた記憶がある。
「そっか、朔理君は転生して冒険者になったんだ……そっか。冒険者カード、見せて? あと、話したい事いっぱいあるの。今夜は泊まって行って」
「泊まるのは構わないが、一応仲間に断ってからね」
「嬉しいな~。転生者に会ったのは初めてだけど、最初に会ったのが朔理君だなんて、運命感じちゃうなぁ……あっ、今度は年齢1つしか違わないのね」
コトリスティナは完全に浮かれていて……俺は情報の整理が追いついていなかった。
翌日。若干眠気に襲われながら、メグルーナの仕事を見学する事になってしまった。理由はコトリスティナから頼まれてしまったから。
【幻術士】のスキルには〈クリエイトイメージ〉というアクティブスキルがある。表向きは自分が見た事あるモノを3D映像にして表示させるもの。本当の事は昨夜聞いていた。
……みんな出る杭が打たれないように必死だわ……。
そのスキルで作り出した映像を元にユーリンチェルが【再現師】のスキルで特殊メイクする。すると、コトリスティナの見せた若き日の母親と瓜二つの姿が再現された。その姿のユーリンチェルにメグルーナが彼女の母親の魂を降ろして、触れられる母親を再現するらしい。
本当は彼女の母親の骨から一時的にアンデッドとして復活させて会わせるつもりだったが、当然ながら状況的に厳しいと判断。ユーリンチェルに気持ち程度の報酬を支払う形で依頼し、俺が見守っている事を条件に母親に身体を貸す事を了承していた。
「それじゃ、サクリさん。行ってきます」
……正直心配だ。前世でいう所の「イタコ」のようだもんだろ? テレビのバラエティーでやっていたモノの動画なら見た事はあるけれど、本物は知らないし。本人に後遺症的な影響が無ければ良いけど。
一応仲介した形にはなったが、断っても平気と伝えた上で了承したのはユーリンチェルだからなぁ。……俺が仲介したからという理由で無理して引き受けていなければ良いけど……。
流石に親子水入らずを邪魔するのも野暮なので別室待機させて貰ったが、何かあれば駆け付ける準備だけしておく。
「ただいま戻りました」
「おかえり?」
……雰囲気が変だ……。
「サクリウス=サイファリオ様。この度は協力をして頂きありがとうございました。……娘の事、よろしくお願いしますね」
それだけ言い残すと、ユーリンチェルはいつもの彼女へと戻った。
あれから数日滞在し、墓地には近づかないようにしながら経験値稼ぎを始めて貰う。留守番をするのは俺とアカネム、エルミスリーの3人。エルミスリーはレベル上げに関心が無い。それなのに『天職進化の儀』をやり過ぎて経験値は順調に稼いでいるらしい。
そんなエルミスリーが付いてきた理由というのが、『天職進化の儀』のためだという。どうも、まとめて儀式をするのが本当に嫌なのだと。
今回の経験値稼ぎでアイシアは【精霊術士】、ナツキヨノは【軽戦士】、トモリルは【アークグラスビット】に天職が進化した。全員上げてしまいたいところだが、今回はあまり長居をする気になれない。……濡れ衣や巻き込まれは怖い。
撤収準備中に昼食へ誘われて、フォクスポワール家にお邪魔していた。
「ねぇ、サクリ君。冒険者辞めて、一緒に暮らさない?」
呼び方が朔理君と音が一緒ということでそう呼ぶようになったコトリスティナ。
「一緒には居たいけれど、冒険者は辞めるわけにいかない」
部外者故に話していないが、大陸の危機を救う約束をしてしまったから。
本来であれば、直ぐにスカウトするところ。でも、父親が亡くなりそうな程弱っているのに連れて行けない。だから、クリスタークから撤収する時に会いに来ようと思っていた。
だが、彼女がどうしても一緒に居たいと言うのなら誘うだけ誘って決断して貰うしかない。
「でも、コトリスティナさんが冒険者になってチームに加わってくれるなら、俺は歓迎するけれど……今は難しいよね?」
答えは聞くまでも無かった。
「コトリス……行きなさい」
そう言いながら現れたのは初めて見るコトリスティナの父だった。メイドさんに身体を支えられて、姿を現したが実際に会うと本当に衰弱していた。
「でも……」
「彼が大切なのだろ? ならば手放してはいけない。一緒に行くべきだ。大丈夫だ……私は余生を彼女と共に生きて、寿命を迎えたら母さんと天国へ行く」
「……お父さん……わかった。サクリ君、お願いがあるの。既に調べ始めているメグルーナさんと協力して墓荒らしの犯人を突き止めてほしい。解決したら、わたしと……本人が了承したらメグルーナさんも共に仲間に入れて欲しい」
スカウトの条件を聞いてしまった俺は、それに「ノー」とは言えず。……渋々了承した。
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