闇竜王討ち封ず伝説の光集う剣、神器『ユカリッサ』
幸いな事に多分『ハイ』と思われる9体を殲滅しつつ、5の倍数階にいる『アーク』を倒す感じで地下40階層を突破。
地下41階層からは『アーク』種と思われる9体が雑魚として登場し、地下45階層の『ロード』種も倒し、地下49階層へと到達した。
当然ながら、地下41階層からはアイシア達には戦闘を参加させずにいる。本人達も納得しておとなしくしている。
一方、メンバー達は何ら問題なく『ロード』以外は倒せていた。その『ロード』だけは俺が倒す事で概ね順調。つまり、俺が直接戦ったのは1回のみである。
地下49階層。敵はアークトロール。流石に簡単じゃないな……。ぶっちゃけ俺でもめんどくさい。無駄に多いHPと耐久力、それに強力な自動再生能力。……いや、ここは草原じゃないから〈草原の加護〉が無いので、そこまでの再生能力じゃないのか?
……きっと苦戦する。そう思っていた。
ズゥン!!
今、9体目のトロールが倒れる。割とあっさり。
「ふぅ、これでこの階層も終わり。次が最後だよね?」
ヨークォットが良い運動だったと言わんばかりに声をかけてきた。
……俺は「相性」という単語を思い出したよ。
「あぁ、予定では次がラスト。しかもボス付き。行く前に休憩しとこう」
アークトロールの死骸が無いところで食事休憩。多分、時間的にはもう夕飯時だろう。根拠はカノエルンの瞳の輝きが消えて、代わりにリンクルムの髪が輝き始めたから。
「ご苦労様です。皆さんにお願いして良かったです。……ナツ、食事の準備を」
「はい、アイシア様」
アイシアが大きな荷物を運んでいたのは食事のためだというのは昼の時点で気付いていた。でも、まさか夕飯まで用意されているとは思わなかったが。
「本来であれば、わたし達でも倒せるレベルの敵が配置されているはずだったのに……もし、適当な冒険者を雇っていたら全滅しているところでした」
……それはそうなんだよな。
多分、これを仕掛けた奴はアイシアを殺そうとしている。しかも、割と強めな護衛を雇って挑もうとしているのも想定済みで。
ガッツリ育成をして、この辺では経験値が入り難いレベルに育成した俺達が適正になっている時点で、この遺跡の難易度はおかしい。……それでも、天然モノの遺跡なら理解できるが。
食事休憩も終え、問題の地下50階層に来た。
「最初は慎重に行こう。敵の強さが判らない」
だが、先に敵さんの方から迎えが来てしまった。
「あれは……アンテグラ族だ。多分アークアンテグラ。1人で戦うな!」
「「なら、2人で!!」」
俺が注意を発すると、ヨークォットとアオルッティが同じタイミングで飛び出した。
アンテグラ族は〈遺跡の加護〉を持っている。その効果は知らない。ただ、これまでの経験から加護持ちは危険と判断した。もちろん、心配のし過ぎであれば、それに越したことはない。
激しい打撃音は鳴らない。何故なら2人は既に捕まっていた。だが……。
「ありがと」
「助かったぁ」
「どういたしまして」
カノエルンの糸が2人を捕まえていたアンテグラの腕を切断していた。
ドスッドスッ!
ハルクアルマとソラナディアの弓がアークアンテグラの胸部を貫くが、止まる気配はない。
「トドメを失礼」
いつの間にか背後に回り込んでいたナオリンがサクッと首を切断していた。
「近接だけでは倒すのはしんどそうだな。とはいえ、楽勝とも言えない。2手に分けるよ」
1パーティずつ分けてフロアを探索して貰う。相手の強さは今ので全員が理解しただろう。
「ねぇ、サクリ様。あっちから嫌な感じが……近づいてくる?」
ずっと後頭部に張り付いて静かに見守っていたダクネスが前に回り込んで奥を指さす。
「2人とも注意。ヤバそうなのが近付いて来る!」
視界でも捕らえる。武装したアンテグラ。明らかに他のアンテグラとも違う。
「まさか……ロード?」
……だとしたら、俺でも手加減や誰かを庇う余力がない。
とりあえず、考えても判らないし、充分怪しいのだから悩んでいる場合でもない。
「ダクネス!」
「かしこまっ!」
何故か嬉しそうに返事して黒い槍を放つ。
「ビジュペ! 《金精の叩尾》」
「任務了解!」
ビジュペを呼び出し、金属性の範囲攻撃……鉛玉による散弾フルオートを叩きこむ。
穴だらけになったアンテグラは一瞬で絶命してそのまま後ろに倒れた。やっぱり遠隔だと有利に戦えるっぽいな。
……手応え的には『ロード』だったのかは判断が微妙だけど。
「4体倒してきたよ」
「こちらは3体って、ここに居た!」
倒れたアンテグラの死体を見ながら、ナオリンは驚いていた。
最奥に階段があって、地下51階層に降りた。幸い、続きではなく、最下層に辿り着いたようだ。……マジ、予定通りで良かった。
迷路状にはなってなく、壁をぶち抜いた広い部屋だった。広さもこれまでの半分……いや、もう少し狭いかな。でも14人が入っても広いと思えるくらいの広さは充分にある。
「アイシア様、こちらに!」
慌てるナツキヨノにアイシアも駆け寄り、何事かと俺達も様子を覗きに行く。
「これは……」
「どうした?」
いや、俺も覗き込んではいるものの、さっぱり判らない。
「設定がぐちゃぐちゃにされているの。てっきり、わたしを狙ってのものかと思ったけれど……これはただ適当にやっただけね」
……そうなん?
「それで、戻せるの?」
「いえ。無力化はできますが設定は判りませんから、後で詳しい人を寄越そうかと。今はとりあえず、無力化を……」
……でも、つまるところ設定を弄った犯人がいるという事か。
「さぁ、目的の場所へ行きましょう」
「ここが目的じゃ?」
設定している間、俺の問いには答えず。アイシアは部屋の入口とは反対側の壁へと向かう。
「……文献だと、この辺だったわね?」
「はい、アイシア様……あっ、これです」
壁と床の接する壁側。そこにわずかながら切れ目が見えた。そこをアイシアが足で軽く奥へ押し込む。すると「ガコッ」という重い音がしたかと思うと隠し扉が開いた。
「この先が目的地です。行きましょう」
アイシアを先頭に歩いて行く。ナツキヨノが何も注意しない辺り、安全なのだろう。
「サクリウス様は気付いていらっしゃると思いますが、元々この遺跡には名前が無く、初代国王が『王位継承試練場』という名を付けました」
「みたいだねぇ」
そもそも、遺跡はヒューム族が国を興す前から存在している物。なら、その名前は変だろう。
「実は、ここは闇竜王の墓場なんです」
……あ~、どうやらナンス様が一枚噛んでいたか。
少し長めの廊下。その先は更に半分くらいの部屋だった。
……あ~、うん。何度も見た感じだ。
「えっ?!」
最初に驚きの声をあげたのはナツキヨノだった。
「何故抜けているの?」
続けて、明らかに困惑しているアイシアが続く。
パッと見、明らかに何もない部屋。でも、アイシアの言葉から床を見回し、剣を見つけた。
「わたしは何のために……」
ナツキヨノがその抜かれた剣を見つめながら呟く。
「ナツキヨノはね、その剣を抜く事を目的にメイドとしてわたしに仕えていたの」
……神器、抜いちゃダメだったんだけど……まぁ、野暮は言うまい。
「サクリウス様は『光の英雄クアン』の伝説を知っていますか?」
「……いや」
アイシアの問いに答える。すると、ナツキヨノが神器の剣を持とうとしながら続きを語る。
「英雄クアンはこの剣の持ち主で、闇竜王を倒したヒューム族の英雄で、初代国王と伝えられています」
……あ~、神器の前の主か。そういえば、神器の前の使い手に関する伝承は聞いた事が無かったな。
「わたしは……その伝説をぉぉぉぉ!!!!! ……継ぐのがぁぁぁ!!!」
必死に神器を持ち上げようとするが、ナツキヨノには全く持ち上がらなかった。
「……はぁはぁ……夢、でした……」
彼女は上がらない神器を悔しそうに見つめる。
「伝説では、『英雄クアン』も白髪白眼でした。だから、わたしにもワンチャン……なんて」
……あ~……英雄願望か……気持ちは解る。
「ナツ?」
「アイシア様。残念ですが、わたしには資格が無かったようです」
神器から手を離す彼女の表情は俯いていて、こちらからは判らなかった。
……このタイミングで神器を拾うのは嫌味になるのではないか?
一瞬そんな考えが脳裏を過った。でも、遅かれ早かれ登録する事になる。もう、話を聞いてしまった以上、俺が拾わなきゃならない事は確定しているわけで。
内心申し訳無さを引き摺りつつ、神器に近づく。
「サクリウス様?」
不思議そうに俺の名を呼ぶアイシア。反応こそ無いが、ナツキヨノも気付いているはず。
神器は細剣。例によって古びて使い物にならなそうな……エストック? それに触れる。
[種族確認……適正確認……思考同期成功。これにより所有権が正式にユニット名『サクリウス=サイファリオ』へ移行されました。適応を開始します。個体名を変更して下さい]
名前は……白い細剣か……光属性の片手剣……
「名前は『ユカリッサ』」
[名称変更を確認。今、この時より名称を“光針の白剣”ユカリッサに変更されます。よろしいですか?]
「はい」
毎回のプロセスを経て、『ユカリッサ』を持つ。
「サクリウス……様?」
その様子を見ていたナツキヨノが思わず呼ぶ。
「そうなのね。やっぱりサクリウス様がわたしの旦那様だったのね!」
「それは違うかな」
「違わない! そもそも国宝に認められた時点でサクリウス様に拒否する権利はありません!」
……なるほど、これで予知夢が達成されるわけですね?
「ははっ……まさか、目の前で選ばれる瞬間を目撃しちゃうなんて……でも、気にしないで下さいね。剣が抜かれていた時点で、既に夢は砕かれていたので」
……あ~、よくあるよね。突き立てられた剣を引き抜けた者こそ勇者的な話。それって自分で抜くから達成感があるわけで。
「それでその、重くないですか?」
「うん。選ばれた者だけは軽く扱えるみたいなんだよね」
「そうなんですね」
彼女は『ユカリッサ』を羨ましそうに見ていた。
「そろそろ、帰りましょうか?」
こっそり『闇竜晶』を回収した後、ナツキヨノが脱出用のスクロールを使用し地上へ戻った。
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