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わたしはユールオリンデ。知識を求めて大陸を旅する冒険者

「どう、メディス?」


「ほぼ無傷よ。かすり傷とかはあるけど、今付いたものとは断言できないし……ただの気絶ね。体力は回復させたし、その内に目を覚ますと思うよ」


「ありがと」


「……へぇ、これがプルームですか? 初めて見ました」


 気を失った女性の状況を確認するためにメディスを召喚して調べて回復して貰う。……でも、そうするまでもなく1つ判ったことは、彼女がマーマン族の女性だということ。何故なら気を失ったら、下半身が足でなく人魚のそれになったから。……まぁ、人魚とは若干違うけど。


 マーマン族を初めて見たけれど、尻尾? 下半身が魚ではなくて、クジラやイルカのそれになっていたこと。鱗はなく、ザラっとした硬い皮。皮の色は青い。


 前世で知る人魚と違うというのはそれが理由だ。……まぁ、大分類は人魚なんだろうけど。


「そっか、アオには見せたことなかったね。木のプルームでメディス。癒し担当だよ」


「……」


 メディスが女性の治療を行っている間、アイルゥは俺の肩に乗って、ずっと抱き着いている。


 流石にこれが独占欲的自己主張だというのは、男の俺でも理解していた。むしろ判り易くて助かるまである。


「そっかぁ、プルームって可愛いなぁ」


「見た目は幼く見えるかもだけど、中身は違うから失礼のないようにね?」


「そうなんだ! ……でも、可愛いものは可愛いですよ」


 アオからはメディスは見えてもアイルゥは見えない。だから俺の置かれている状況は理解できない……いや、見えていたとして女性には微妙な俺のポジションを理解できるかどうかは視点の違いから難しいかもしれない。


「……今、戻りました~」


 今思えば、いつの間に居なくなっていたイクミタン。「おかえり。何処行っていたんですか?」と聞くつもりで彼女を見て、予定していた言葉が出てこなかった。


「え? あのぉ……え?」


「あっ、『海人海賊団』のマーマン族を捕まえる事に成功したので、これから連行するところです」


 彼女は、男性のマーマン族を台車に乗せていた。


 いや、彼女の操る獣は『竜騎幻想』でイルカと知っているから、多分イルカと協力して捕まえたのだろうとは思うけど、この環境で捕縛してきたことに正直驚きしかなかった。




 イクミタンは捕まえたマーマンを牢屋に連れて行くと言い、彼女の解放と逃亡阻止を任されたので、パーティ全員で彼女を見張ることになった。……船の方は海賊団が逃げたばかりだし、大丈夫だろうと言われてしまった。


 まぁ、念のためユッカンヒルデには〈アナライズ〉を定期的にして貰っている。


「んっ……ん?」


 女性が目覚めて、囲んでいる俺達を見てビクッと怯える。


「大丈夫?」


「……えっと、はい。とりあえずは……あの、この方々達は?」


「仲間。大丈夫だよ、彼女達も危害は加えない」


「そうでしたか……って……あっ! 変身!」


 彼女の下半身がヒューム族の足になっていく。


「えーっと、見ましたよね?」


「うん。マーマン族って初めて見たよ」


 彼女はしばらく俺の事を真顔でジッと見ていたが、笑顔で話し始めた。


「……大丈夫そうですね……わたしはユールオリンデ。知っての通り、マーマン族の冒険者です。助けて頂き、ありがとうございました」


 そう言って、彼女は鞄の中からアイアン級の冒険者カードを見せる。そのカードには確かにユールオリンデ=セリーンヴァンスと書かれている。


 膝まである青い髪に青い瞳。今はヒューム族の姿で身長160センチ越えだが、下半身が尻尾状態だと更に5センチほど増えていたと思う。ヒューム族基準で言っても間違いなく美少女に分類される彼女はスタイルも良いことから冒険者時代苦労したかもしれない。


 ……一部のアホな連中からは別の意味でも苦労したかもしれない。不老不死とか万能薬とか。


「凄いですね。マーマン族が冒険者するのは大変だったんじゃないですか?」


 ……冒険者は基本海中で活動することはないからな。


「確かに、冒険者という職業や対象にされたサービスはヒューム族向けになっていますから苦労は多いのですが、ヒューム族以外の方達と大差ないですよ」


「そうですか」


「あの、こちらからも2つほど質問しても?」


「もちろん」


「本当に貴方達は国外から?」


「そう。俺達は今となっては多国籍チームになっているけれど、出発はグアンリヒト王国出身だよ。だから、マーマン族に偏見ないから心配しないで」


「……ご存知だったんですね」


「うん。ちょっと驚いた。……それで、もう1つは?」


「あの、そちらにいる銀髪や銀眼の方々は? もしかして、貴方達は邪竜王側のヒューム族?」


「いや。ヒューム族の銀髪銀眼でそんなこと意識している人はいないよ」


「そうでしたか」


 ……むしろ、意識しているのは銀髪銀眼を見る人達だけどな。




「こちらからも聞きたいことがあるんだ」


「何でしょうか? 恋人の有無ですか? それともスリーサイズですか?」


「……違う。何故追われていたん? 同族間で何かあったにしても、命を狙ってくるって徒事じゃないよね?」


 最初は『海人海賊団』に攫われたヒューム族女性が泳いで逃げてきたと思っていた。……変身ベルト……『変身の腰紐』をあの一瞬では確認できなかったからね。


 けど、彼女が意識を失った事で彼女がマーマン族だと判った。なら、同族が命を狙ってくる状況というのが不自然だ。……仮に、『海人海賊団』がマーマン族とも敵対していて、悪人的立場から美女を拉致する……なんてことは考えられるけど。


「話すと長い理由にはなりますが、構いませんか?」


「はい、話して下さい」


 ……まぁ、聞かない事には彼女への対応が判らないからな。


「事の発端はわたしが冒険者になったことでした。冒険者になる事自体、実は別に珍しいことではないんですよ。でも、ヒューム族に混ざって冒険者をするわたしは、マーマン族の中では異端だったかもしれません」


「何故?」


「今のわたしは違いますが、マーマン族のほとんどはヒューム族を怖がっています。殺されてしまう可能性を考えているんですよ。ヒューム族は野蛮で、自身の利益のためなら同族でも殺すと伝わっています」


 ……うーん。あながち間違っていないから困る。


「ですが、わたしは知っています。実際はそんなヒューム族は極僅かです。どんな種族にも善人だけじゃなく、悪人もいます。……ですが、それは他の種族を自分の目で確認して初めて知ることができる……マーマン族は他種族が善人か悪人かを確認するために命を賭ける余裕はないんです」


「まぁ、それはマーマン族だけじゃない。多くの戦闘能力のない人達は種族問わず、そうなんじゃないかな?」


「そうですね。……そんな当たり前のこと、マーマン族は解ろうとしない……」


 そう悲しそうにユールオリンデは言う。


「直接ちゃんと見た結果、多くのヒューム族はわたし達が思うような人達ではなく、わたし達と大差ない良い人達だということでした」


 ……つまり、マーマン族もヒューム族をよく思っていないということか。




「冒険者になると決断したキッカケは、マーマン族以外の種族が、マーマン族の伝承について、どのように伝わっているかを確認するためでした」


「伝承?」


「不思議に思うかもしれないですが、実はマーマン族に伝わる伝承と、他の種族に伝わる伝承では内容が違うんですよ」


 ……まぁ、その辺は予想できていた。アックアイル国民はマーマン族に恨まれる筋合いは無いと言っていたしね。


「細かいところは色々ありますが、大きな部分として、邪竜王との開戦時と水竜王の魂を封印した話というのが大きく違っているんですよ」


「どういうこと?」


「マーマン族に伝わる伝承では、開戦時には戦いを好まないマーマン族だったんですけど、妖魔であるサハギン族との戦いに苦戦したヒューム族に乞われて、渋々ヒューム族を助けたという話になっているんです」


 ……真逆?


「水竜王の魂を封印する話もヒューム族とマーマン族を助けた水竜王だけど、ヒューム族が裏切って水竜王を魂ごと封印したことで、竜人のアクーリア族を滅ぼした元凶と言われています」


「……いや、それは……」


「知っています。各竜王が傲慢になって他種族を虐げ始めたんですよね? マーマン族も水竜王の被害にあって、種族存亡の危機に陥っていた時、女神ナンス様から授かった神器にてヒューム族の英雄が各種竜王を封じて、マーマン族は水竜王の危機から救われた……恐らく、これが史実です。……ですが、幼い頃から違う伝承を教えられてきたわたし達には衝撃的過ぎてなかなか受け入れられないのが現状です」


 うーん。幼い頃に教わった事。しかも周りの人全員が同じとなると、信じて当然だよな。


「しかし、わたし達は真実を知る権利がある。そう思って、わたしは故郷に帰ってきたんですけど……旅立った前とは里の様子が全然違っていて、貧困化していたんです」


 ユールオリンデの話では、彼女が冒険者として旅立つ前は、透明度の高い澄んだ海水、美しい珊瑚、海藻豊かな美しい里だったそうだ。しかし、今は見る影もないと言う。




「あれだけ緑豊かだったのに海藻は全て消え、海水は常に濁り、そのせいで里全体が薄暗く、あれだけ親切で情に厚く美しいマーマン族が、喧嘩の絶えない物騒な里になっていました……もう思い出に残る故郷は無いのだと悲しくなりましたね」


「……原因は?」


「多分、サハギン族が我が物顔で里に住んでいることが原因だと思います」


「妖魔と共存?」


「……そうですね。わたしが旅立つ前からサハギン族はいましたが、そんなに目立つ存在じゃなかったんですよ。むしろ、同族のように馴染んでいました」


 妖魔が馴染む? そっちの方が信じられない。……って、あっ……もしかして、邪竜王復活と関係があるのか?


「実家に帰ってきても歓迎されないどころか、あれだけ仲良かった家族が険悪になっていて、心配になるくらいでした。……とりあえず、わたしは調べて知った真実を家族に伝えてみたのですが嘘を吐くなと信じて貰えず……友人達にも話してみたのですが、「誇り高きマーマン族が弱くて卑怯者のヒューム族に助けられた? ……我々を侮辱する気か?」って、怒鳴られてしまいました」


 ……誇り高いねぇ……。


「そんなわけで、自分達の言っている事が矛盾していることにも気付かないくらい理論が通じなくなってしまったので、わたしはマーマン族の裏切り者ということになってしまいまして。居場所を失ったわたしは、逃げるように地上に戻ろうしたところ、何故か『海人海賊団』がわたしを追いかけて来たんです」


 ……あ~、偶然……なわけないよなぁ……友人との話でも聞かれてしまったのかもしれない。


「そのぉ、ユールオリンデさんは何故『海人海賊団』が襲って来たと思います?」


「都合の悪い真実を知っているから? それとも、ヒューム族に殺されたことにして、マーマン族のヒューム族への怒りを煽るためですかね?」


 ……ん?


「それって、『海人海賊団』に知り合いがいるってこと?」


「いますよ。もちろん、話した時に彼女が『海人海賊団』だったとは知らなかったですけど、里の人達はほぼ顔見知りなので……あっ、サハギン族は別ですけどね。物騒だから近づかないようにしてますし……ですから、全ては真実が悪いんですよ。知ってしまったから、わたしはもう家族と仲良くすることもできない……」


 悲しみから涙を零す彼女だが、彼女の「真実が悪い」という結論は納得できなかった。

読んで頂きありがとうございました。

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尚、5日間連続投稿1日目+本日中にあと1回投稿します!

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