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ep.0 プロローグ エルファリア王国とは

世界最大の大陸であるバルフォア大陸から南に800キロの位置にある大陸、エルファリア大陸にはとある一つの国が繁栄していた。


《エルファリア王国》


人口10億人を抱え、あまりにも恵まれた資源と土地を持ち、並外れた工業力を保有するこの国は、GDPにてあらゆる大国、超大国を圧倒しての一位を維持し続け世界最強の単一国家と呼ばれている。


バルフォア大陸より西に進むと大西洋を挟み2つの大陸がある北サレザー大陸と南サレザー大陸である、うち北サレザー大陸にはとある超大国があった


《ノースウェル合衆国》


自由をモットーに世界中に同盟国を持ち、世界中のあらゆる地域に影響力を持つ超大国、一国としての能力はエルファリアに及ばないものの、この国の率いる同盟国を含めた一大陣営の総力はエルファリア王国をも凌ぐ


世界最大の大陸であるバルフォア大陸中部に位置する世界最大面積の国家


《コミーテル社会主義共和国連邦》


ノースウェルと双璧を成す超大国であり、陸軍戦力は他の追随を許さない、シェストワ条約機構という同盟を持っており、これもまた総力を挙げればエルファリア王国を凌ぐ


主にこの世界はこの2カ国の超大国が激しく競り合い、エルファリア王国はひたすらに中立、不必要の不介入を基本方針としている。


しかしどの国もエルファリアに手を出そうなどとは考えない、エルファリアは単独国家においては正真正銘の最強国家でありエルファリアの軍事方針により奇襲による初撃での攻撃をもってしても望む効果を得られない可能性が高いためだ


()

空母12隻、強襲揚陸艦15隻、イージス駆逐・巡洋艦計200隻、戦艦7隻、補給艦50隻その他艦艇多数


これがエルファリア王国単独の海軍戦力である、同じく海軍大国のノースウェル合衆国もこれほどは保有していない。


戦車3000両、装甲兵員輸送車1万両、自走榴弾砲1500門、その他各種装甲兵器多数


陸軍戦力ではコミーテルに及ばないもののノースウェルとほぼ互角である。


戦闘機3500機、攻撃機300機、戦略爆撃機計50機、早期空中警戒管制機18機、その他輸送機を含む多数


これは両国を凌ぐ戦力である、特に戦闘機部隊は数、質ともに世界最強と呼ばれている


()

エルファリアは数100年に渡り武装中立を堅持してきたが決して戦争をしていないわけではない、むしろ数多の戦争を戦い抜いてきたのだ、その中でとあるパイロットが世間にその名を轟かせる戦争があった。


4年前、とある戦争があった。


テルリア戦争


バルフォア大陸東南部の端にテルリア民主共和国という小さな国があった、漁業と鉱物採掘を生業とするいわゆる小国であったが近年は急速な軍備拡充とそれに伴う軍事バブルが国を潤していた。


「我々は!決して許さない!我が国の森を枯らし、土地を細くさせたエルファリアを!復讐を!エルファリアに経済的弁償を!」


2016年辺りから声高に叫ばれたフレーズである、しかしこれは完全な濡れ衣であった、森を枯らしたのは無秩序な鉱物採掘を進めたテルリアの財閥、土地を細くしたのはテルリアに無理に食料を作らせていたコミーテル連邦である、しかし怒りの矛先はエルファリアに向けられた。


2020年8月9日

エルファリアから派遣された人道支援並びに経済振興協力団120名がテルリアに入国後に連絡が途絶えた。


翌日、彼ら彼女らは画面の前に姿を写した

服や身につけていたものを全て奪い取られ、産まれたままの姿のまま殺され、街中に吊るされるか引きずり回される姿を。男は男である証を切り取られその死体には石を投げつけられる、女性は激しい性的暴行を受けたのち、最後に殺され、晒された。


エルファリア王国政府はテルリアに対して外交的接触を試みた、遺族への弁償並びに謝罪、遺体の引き渡し、残虐行為を行なった人間をテルリアの法律で裁くことが条件とされた


これに対してテルリアはテルリアの領海から離脱しようとしていたエルファリア船籍のクルーズ船ルビーエメラルダを拿捕。略奪と虐殺の限りを尽くすという形で返答した。


これらの行動に対してエルファリア国民議会はテルリアに対する軍事的報復を全会一致で可決した。


「我が国は平和を尊び、世界の安定と手を取り合っての発展を願い続けてきた、しかし世界は非情であり幾度となく我が国も戦火に巻き込まれた、我々はあくまでも身を守ることに徹してきた、しかし!この暴虐を見過ごすことは平和を尊ぶことを意味しない!平和を享受するには理性と力が必要である、我々は今、その力を行使する。」


これはエルファリア国民議会議長ストック・ホルン議長の演説である、こちらからは手を出さない、しかしもし殴ってきたなら殴り返す、それがエルファリアの国家方針だった


派遣された王立海軍第2艦隊は空母プリンス・ジョージⅢ世を中核としイージス艦8隻、補給艦3隻を含む大艦隊であった


8月25日

エルファリア王国はテルリアに宣戦を布告、布告より3時間後に空爆を開始した。


攻撃開始より1時間後、テルリアの内務大臣、国軍大臣を含む高級官僚が相次いで爆殺、テルリア軍上層部は総司令官を含むそのほとんどが爆殺もしくは暗殺された。


彼らには十分に隠れたり逃げる猶予は与えられていたが彼らの動向はその全てがエルファリア情報局対外収集部に筒抜けになっていた。


そしてこの戦争と共にとある雛鳥がその翼を世界に羽ばたかせようとしていた。


8月25日

テルリア沖、空母プリンス・ジョージⅢ飛行甲板上


「おい、新米!何ボサっとしてるんだ、行くぞ!今日はお前に頭のお守りをしてもらわなきゃならないんだ、しっかりしてくれよ?」


中佐の階級章をつけたパイロットが少尉の階級章をつけたパイロットにそう言った


「すみません、行きましょう。」


彼の胸のネームタグには彼の名前が書かれていた


ケイ・ハルトマン 海軍航空隊少尉


今年、実戦部隊に配属されたばかりの新米パイロット。


両親は他国からの移民であり姓を父から引き継ぎ、名を母から与えられた。


「まったく、これから実戦だというのに、空でもボケボケしている気かハルトマン少尉?」


「ピアース中佐の頭は僕がしっかり守ります。」


ケイの言葉に中佐の階級章をつけたパイロット、ローガン・ピアースは笑った


「まったくw、覚悟だけは無駄にあるみたいだな、我々は生きて帰ればそれでいい、その生きて帰るのに重要な役割をお前に託すんだ、しっかりやってくれよ?」


2人はヘルメットを手に取った、ハルトマンのヘルメットには彼のタッグネームが書かれていた


Knight (騎士) と


これは彼のタッグネームの名づけた人が夜を表すNightを変換ミスして付けられたものである、結果としてケイは眠りの騎士様としばらく揶揄われたのであった。


甲板上に上がると既に機体には武装が取り付けられていた


F-15MX ネイビーイーグルII


1970年代にノースウェル合衆国と共同開発されたF-15制空戦闘機の海軍版F-15Mの最新生産版


エンジンを超高出力の二次元推力偏向エンジンへ換装し、垂直尾翼は形状を変更し、逆ハの字に傾けられている。また、レーダーは支援AIと繋げられ、ステルス機の捕捉も見込めるものになった。対地・対艦もこなせる多目的性も新たに盛り込まれた。


「ロジャー2、カタパルトに進入。」


ロジャー2とはハルトマンの部隊呼び出し符号である。ロジャー隊の2番機を示し、今回の作戦では特に呼び出し符号の変更は行われない。


カタパルトに入るとフライトデッキクルーが発艦の準備を始める。


クルー達が退避を始めた時、隣のカタパルトのピアース中佐が射出された。


中佐は1500ポンド誘導爆弾3発と500ポンド誘導爆弾8発を搭載しているため、射出後に少し沈んでから浮き上がった。


シューターが姿勢を屈めると右腕を突き出した。


直後に、機体は急加速して空に放たれた。


「ロジャー2より1へ、発艦完了。」


「ロジャー1了解、俺についてきながら高度を15000フィートへ。」


「了解。」


2機の機体は中高度域まで上昇していった。


「見えるか?ハルトマン少尉、眼下の街が」


ハルトマンは下を見た、黒煙が上がる街、すぐ近くには強襲揚陸艦ヘルファイアが停泊していた。


そう、この街がテルリアの首都、ロマエである。


現在は上陸した海兵隊と陸軍が制圧している、一連の戦闘で味方は兵士6名戦死。民間人は467人が死亡、誰に巻き込まれたかは不明。


「はい、ロマエですね。民間人を盾にした陣地もあったと聞きました。」


「らしいな、女子供ばかりを並べてその奥に機関銃陣地を配置する、手榴弾も迫撃砲もダメ、掃射もできないでかなり苦しんだらしいな、誤射したらPTSDだ。」


「我々は静かですね、開戦から敵の姿を見ていない。」


「宣戦布告してから1時間後に基地を潰したからな、その後にステルス機部隊が食い荒らしていったさ。ただ、参加したステルス機のうち7機が帰ってこなかったらしい。」


「F-35ですか?F-22ですか?」


「F-35Aらしい、パイロットの脱出も確認されていない、それがSAMによるものなのか敵戦闘機によるものかは判断がついていない。」


「なるほど、だから全機を爆装させず護衛を…」


その時作戦空域に入った


「まぁ、いい、お前に頭は任せる。お前は高度を上げろ。上空警戒にあたれ。」


「了解」


レーダーを入れて高度を30000フィートまで上げる。


レーダーはクリア、特に脅威となるものは映らない。地上ではピアース中佐が敵車列に対して空爆を行っている。


(ん…?)


レーダーにごくわずかな反応が出たら消えたりする、支援AIが識別しきれていないノイズ、もしくは敵機。


「ロジャー2より1へ、不審な影を確認。支援AIは目標を敵機とは断定できず。しかし、違和感があります。攻撃の中止を。」


ピアース中佐は答える


「ちょうどひと暴れを終えたころだ、合流する。」


ピアース中佐は1500ポンド爆弾3発を要塞へつながる道にある橋に投下し、身軽になったところで高度を上げ始めた。


そのとき

「Warning!!Warning!!」


けたたましい警告音が鳴り響く、RWRがレーダーを照射されたことを示していた。


「レーダースパイク12時方向!距離120マイル!ミサイルです!」


レーダーはハッキリとそのミサイルを捉えた、先程の反応はおそらくウェポンベイを開いたステルス機だったのだろう。


「回避するぞ!チャフ!左に旋回しろ!」


相手に尻を向けて離脱する姿勢を示す、同時に高度を下げてミサイルから運動エネルギーを奪う。


「山の稜線を使いましょう、山を盾にして躱す方が確実だ」


「ロジャー1、了解。それしかないな。」


2機は山の稜線を巧みに活かしてミサイルを躱しきる、レーダー反応が途絶えると周りを確認する。


「後部レーダーに反応無し、敵機を見失いました。」


「随分と厄介な相手だな、この機体のレーダーでも捉えきれないとは…。」


「ロジャー1よりHQへ、応答せよ。攻撃を受けた、増援を要請する。HQ!くそ、電波妨害か!」


電波妨害により短距離通信以外が繋がらない


その時レーダーにミサイルの反応があった

「ブレイク!」


「ちっ!躱しきれな…」

ピアース中佐が撃墜された、爆散だった。


ケイは咄嗟にフレアを撒いた、案の定ミサイルはフレアに連れられて地面に飛んでいった。


「ロジャー1、応答せよ。ロジャー1。…ダメか。」


(まさか赤外線誘導ミサイルも撃ってくるとは、レーダーに映ったミサイルの距離からして近いところにいるはず。)


その時ミサイルの発射煙が見えた、その元に機影が見えた


(3機か!!面倒な!)


見えたなら戦うしかない


フレアを撒きながらまずは赤外線誘導ミサイルAAM-10を1発放つ、短射程ミサイルという割には射程の長いこのミサイルは敵にも十分届く。牽制としては十分だった。


敵が回避を始めた、2機はヨタヨタとしていてまるで訓練生だ、だが先程からミサイルを撃ってくる1機だけは動きが鋭い


放ったミサイルがヨタヨタとしている1機に飛ぶ、その機体は回避しきれず直撃して墜落する。


(何故あのミサイルにも当たるんだ?牽制のための1発だぞ)


動きの鋭い1機がこちらに向かってくる、ミサイルを撃つには近すぎる距離だ。


(機関砲勝負か!)


交錯するその少し手前で引き金を引く


光の筋が伸びるが相手を捉えない


代わりに相手の弾はこちらを掠めていった。


(危なかった…)


前を見るとヨタヨタと飛ぶ機体がミサイルを撃ってきた、機体をロールさせながらフレアを撒き、ミサイルを躱したところで反撃のミサイルを放ち、撃墜した。


(見たことのない機影だ…)


唯一動きのいい機体とドッグファイトになる


中々に難しい相手だった、簡単にはミサイルを撃たせてはくれず、気を抜くと堕とされる。


(くそ、中々決定機を掴めないな、どうする?)


その時、敵機は旋回をやめて離脱していった、すかさずロックして中距離ミサイルを放ったが躱された。


後部レーダーにこちらに接近する機体が4機映った、友軍だ


「ロジャー隊応答せよ、こちら空母プリンス・ジョージⅢ所属、マグナ隊。援護に来た。」


やっときた


「こちらロジャー2、ロジャー1を喪失、敵機2機を撃墜、1機に逃げられた。」


「マグナ隊了解した、貴機をエスコートする。」


こうしてケイは戦闘を終えて離脱した。


ピアース中佐は後に戦死が確定し、ケイの交戦した敵機は未知の機影であり高度なステルス性を有することからテルリアの機体ではないとの結論が下された。


敵機の残骸より敵はこちらの最新鋭機と同等レベルの性能を有することが推測され、コードネーム、レイダーと名付けられた。


ケイは2機の撃墜が認定され、任官初年に2機以上を撃墜した現代最初のパイロットとなった。


()

9月2日

ペスカトーレ要塞攻防戦


テルリアという小国が持つにはあまりに堅固で強力な要塞、ペスカトーレ要塞。


複雑な地形、密林、高密度の対空兵器、塹壕、地下トンネルが張り巡らされたこの要塞はエルファリア王国軍参謀本部を持ってしても攻略に1週間を要すると判断させた。


要塞攻略に際し、本土より増援として戦艦ヤマトを主力とする打撃艦隊を追加派兵した。


この日、ヤマトを主軸とする打撃艦隊による大規模対地攻撃を皮切りに逃亡したテルリア首相を含む主戦派の殲滅を目的とした大規模侵攻作戦:永遠の決意作戦。が実施された。


ヤマトには51センチ三連装半電磁加速砲が三基搭載されており比較的内陸にあるペスカトーレ要塞すら軽々と射程に収めている。


ヤマトの猛烈な砲撃により敵の伏兵はある程度が消し飛ばされた。


これに続き、王立陸軍第1機甲師団が道を切り開く。


そして空軍並びに海軍航空隊はというと


「以上の計画をもって、敵の防空網を無力化させ、然る後に新型地下要塞破砕用爆弾インドラを投下する。海軍航空隊は防空、空軍はSEED任務に専念せよ。」


「ハルトマン少尉、貴方は私の2番機に就きなさい。ふふ、心配せずとも撃ち落とされたりなんかしないわ。」


ブリーフィングを終えて立ち上がったケイに話しかけたのは第8空母航空団VFA-133 ロジャー隊副隊長のエメリア・スカーレット少佐である。


「承知しました、スカーレット少佐。2番機に就きます。」


「期待しているわ、さぁ、格納庫に行きましょう。」


スカーレット少佐に続いて甲板に向かう、甲板上では機体がどんどん打ち上げられている。


4機が飛ぶとエレベーターが上がり新たな機体を甲板に運び込んでいく。


格納庫では大量の空対空ミサイルが置かれ、武装の取り付けが行われていた。空母のF-15には中距離空対空ミサイルAAM-12が24発搭載できる。


タラップを登り機体に乗り込む。


機体のスタートアップを行い、各種計器の確認を行う。


トーイングトラクターに引かれてエレベーターに乗り機体が甲板上に運び込まれる。


「私達はペスカトーレ要塞北部を警戒することになるわ、燃料には気を配ること。いい?」


「了解。ビンゴの再チェックを行います。」


燃料的帰還限界を再確認した後、カタパルトへの進入許可が出たので移動する。


「ロジャー2、パイロット、ハルトマン。機体重量報告から変更なし、エンジンオールOK。発艦準備よし。」


シューターが姿勢を屈めてから左腕を突き出す。


機体が一気に加速し空へ放たれる、同時にエンジンを噴かせて上昇する。


「ロジャー2、HP01にて待機します。」


すぐにスカーレット少佐も上がってきた。


「ロジャー1、続くわ。」


()

同日。ペスカトーレ要塞、南部


ペスカトーレ要塞南部では激しい戦闘が行われていた、機甲部隊を主軸とするエルファリア王国軍は圧倒的な火力と装甲に物を言わせて敵陣地を踏み潰していく。


同時に航空機による空爆が地上部隊を支援する。


ゲリラ的に対抗するテルリア軍人も装備が貧弱で有効打は与えてこない。


しかし、ペスカトーレ要塞の要塞砲があまりにもしぶとく、一向に進むことができない。


「あの要塞砲を空爆してくれ!」


幾度となく地上から上げられる要請はこればかりだった、しかし頑強な装甲によって空爆は思うような成果をあげられない。


そこでエルファリア王国軍は地中貫通爆弾インドラの前倒し使用を決定、同日の午後3時、インドラにより敵要塞砲は沈黙した。


地上部隊は再侵攻を開始、要塞内部に突入し激しい室内戦を繰り広げる。


これに合わせて航空部隊は補給と再攻撃にあたった。


「ロジャー隊全機へ通達、エレメントを組み任務にあたりなさい。」


「「「了解!」」」


戦闘空域に到達したロジャー隊は空中哨戒任務に入った。


「レーダーはクリア、引き続き警戒にあたります。」


「例のステルス機、どこから来るか分からないのが嫌なところね。」


その時空中哨戒任務に就く部隊に連絡が入った


「こちら空中管制機ロングロード、戦域に近づく敵機影を確認、MIG-29が12、不明機が1機、おそらく例の新型だ、全機交戦を許可、叩き落とせ。」


「あらあら、随分と都合のいいタイミングね。行くわよ、ロジャー隊全機、各エレメントの判断で攻撃しなさい。」


射程に入って少ししてからAAM-12を複数発放った。


「FOX3、クランクします、右に旋回します。」


「FOX3!了解したわ、私も右に旋回。」


先に放った1発がMIG-29に命中して撃墜した。


「スプラッシュワン、敵機撃墜。」


「まったくヨタヨタと飛ぶ敵機ね、まともな訓練を受けてないんじゃないかしら?」


直後、味方が1機撃ち落とされた。


すぐにもう1機、さらに1機、さらに。


「味方が!?」


犯人はすぐに察しがついた、早期警戒機のレーダーがステルスを捉えたのだ。まっすぐ向かってくる。


「ハルトマン、付いてきなさい。これ以上犠牲を増やせないわ。我々で落とすわよ。」


「了解、相手は手強いです。気を抜かずに。」


アフターバーナーを入れて加速していく。ミサイルを撃たせないためにロックし次第どんどん撃ち込んでいった。


しかし、敵の方が上手だった。ミサイルを軽々と躱してくる。


あの攻撃を躱すとは只者じゃない、もはや人を捨てているとも言える。


「これも躱すの!?正気!?」


その動揺した隙をついて敵機が反転してきた、少佐と敵機の間にフレアを撒きながら割り込む。


敵の放った赤外線ミサイルが逸れる。


「ハルトマン!?」


そのままスカーレット少佐の上を通り抜けていくと相手はこちらに食いついた。


(よし、こい。そのまま食いつけ。)


「援護につくわ、もう少し耐えなさい。」


敵機を振り回す、敵機もまたこちらを狙いつつも少佐に撃たせまいとしている。


???「この動き、貴方少し前のパイロットね?」


幻聴でなければ変な声が聞こえた


???「エルファリアのパイロット、いい腕をしている。とても面白い飛び方ね、まるで…」


これは、エルファリアの言語か?


「オープンチャンネルで話しかけてくるなんてとんだ度胸ね!詳しい話は貴女を落としてから聞かせてもらうわよ!」


少佐はAAM-12を放った、このミサイルはある程度近距離でも命中させられるように推力偏向ノズルが付いている。


???「貴女に興味はないの、落ちてちょうだい。」


敵機は突如下方に潜り込み、機体を捻ってミサイルを躱し少佐の下からミサイルを放った。


「躱しきれない!」


機体後部にミサイルが命中し、機体が炎上した。


「ベイルアウトする!」


少佐はベイルアウトした、旋回した時にパラシュートの展開が見えた、脱出自体には成功したようだった。


???「さて、興味があるのは貴方、面白い飛び方をするわね、まるで風とお友達みたい。」


???「この国のパイロットはダメね、まるでセンスがない。ヨタヨタと出来の悪い玩具の飛行機のようにしか飛べないの、まぁ、皆堕とされてしまったけれど。」


???「あら?もうタイムリミットね。残念だわ。」


敵機は離脱していく、他の部隊が続々とミサイルを放ち敵機に攻撃を仕掛けていた。


「スコーピオン1から12、FOX3!」


オープンチャンネルで質問を投げる


「待て、お前は何者だ。何故エルファリアの言葉を話せる?どこの所属だ。」


「質問が多い男は嫌われるわよ、私はどこの所属でもない。この世界にいながら、現れては消える。そう、蜃気楼。」


突如、レーダーが不自由になる。強力なECMだ。同時に大量のフレアを撒いていった。


(AAM-12の誘導方式については流石にある程度分かっているか…。)


ミサイルは目標を見失って自爆したり地面に突っ込んでいく。その中で蜃気楼と名乗った敵は悠々と離脱していった。


この戦闘においてロジャー隊はスカーレット少佐を含む5機が撃ち落とされた、うち3名が救助された。スカーレット少佐は敵に捕まったものの、襲われている途中で敵兵士3名を殴り倒して武器を奪い射殺して味方に合流した。


9月3日

ペスカトーレ要塞の防空網沈黙に合わせてインドラの再投下が行われた。これにより敵地下施設は丸出しとなる、そこに栄光ある王国空挺部隊が強襲を敢行、要塞各所で続く屋内戦も収束に向かいつつあった。


9月4日

テルリア民主共和国首相のヤコブ・ムワディチはエルファリア王国軍の降伏勧告に従い投降、なお抵抗を続ける敵に対して王国軍は燃料気化弾頭プロメテウスを搭載したBLU-135誘導爆弾を要塞の露出部分に投下、加えて工兵部隊が要塞各所にプロメテウス弾頭を設置、要塞内部を焼き払った。


9月6日

テルリア民主共和国はエルファリア王国に無条件降伏、賠償としてテルリア内の財閥が保有していた鉱脈を譲渡した。


()

この戦争でエルファリア王国軍は陸軍兵士40名、空軍兵士12名、海軍兵士3名が戦死、テルリア民主共和国は軍人2万8000人、民間人8000人が戦死した。


これに対してノースウェル合衆国並びにコミーテル連邦はそれぞれ以下のような声明を発した。


「エルファリアの此度の軍事行動に関して我が国は最大限の理解を表明し、支持する。いかなる理由があろうとも他国の民間人を虐殺し、非人道的な行為を行うことは許されることではない。」

ノースウェル合衆国大統領ドワイト・ダック


「エルファリア王国の軍事行動に対して、民間人の犠牲といったいくつかの憂慮すべき事態はあるものの、自国の民間人にあのような残虐な行為をされた国家として当然の対応であると我が国は判断している、その後のエルファリアの人道支援に関しては非常に評価するべきものがあり両国に平和が訪れ、いつの日か手を取り合うことを望む。」

コミーテル連邦書記長 イワン・ロバコノビチ・ベリーコフ


両国が表立っての批判を避けたのは両国ともにエルファリアがされたことにある程度同情できること、両国ともに侵略戦争をいくつも行っている国であるため逆批判を恐れたこと、そして何よりエルファリアの軍事力と決断の速さに改めて一対一では勝てないと感じたためであった。


しかし、批判する国もあった

「エルファリア王国軍の残虐なる虐殺とエルファリアの国家としての自制心、理性の無さにはひたすら遺憾の念を抱くのみである、この戦争で子供を含む多数の民間人が犠牲となり、エルファリア王国軍の銃弾に倒れた者も非常に多い、この非人道的行為はエルファリアの本性そのものであり、これは国際社会の将来的な不安材料となり得る。」

サン・アルマターレ教国総司祭 セラフィム・セレス


アルマターレ教を信ずる者が集った宗教国家、サン・アルマターレ教国。


太陽の名の下に集う信徒を示すとされる名を持つこの国は、昔、エルファリアに対して二度戦争を仕掛け、二回とも惨敗した。


しかし、エルファリアはサン・アルマターレの国土は焼かず。彼らの軍備を消耗させ尽くすに留めた。それ以後、サン・アルマターレは反省どころかさらなる憎悪をたぎらせていた。


()

後の調査でケイが放ったミサイル複数のうち3発が敵機に命中していたことが判明、累積撃墜が5機となったためエースに認定された。空軍において28年ぶりのエースの誕生であった。


彼は大々的にテレビやネット、新聞で取り上げられ、世界中のメディアも彼のスクープを撮りにきた。


それには理由がある。彼の父、エーベルト・ハルトマンは28年前のこの国のエースパイロットであり、さらに彼の祖父、フリードリヒ・ハルトマンは第二次世界大戦でのノルトハイム帝国の圧倒的エースであり56機撃墜という偉業を成し遂げたためだ。


メディアからしてこれ以上美味しい話はない、特に二次大戦当初は敵国のパイロットであったフリードリヒだが、その人格とあまりにも人道的な性格から強制収容所の壁をあえて誤爆、そこに囚われていた人々を逃す、ということを何回か行った。戦争終結後、その人道的判断から世界中でノルトハイムの良心と呼ばれて広く讃えられた。


その子孫がまたエースとなった、あまりに出来すぎたシナリオでもあるが事実として彼の腕は確かに配属一年目としては驚異的なものがあった。


()

9月15日 第2艦隊タークポート軍港 士官居住区

(話には聞いていたけれどやはりメディアの対応は疲れるな)


自分の部屋に戻ったケイはゆっくりとベッドに横になった、少し目を閉じた後、ポストに入っていた諸々を確認する。


(メディア、メディア、メディア、前買ったゲームの請求書、メディア、これは…?)


見慣れない封筒に入ったものを見つけた、封筒の中身は手書きの手紙だった。


文字ですぐに察しがついた子供の字だ


(ピアース中佐には確か、9歳と6歳のお子さんがいたな…)


内容はまぁ、予想通りのものだった。


(残念ながら、僕は天使でも神でもない、この世から消えた人をこの世に戻すなんてことはできないのさ。)


ケイは机に向かってペンを持った。書き終えた手紙を封筒に入れ、ピアース中佐から昔貰ったサングラスを入れたケースと共に彼らの元に送った。


()

軽くこの世界の年表、特にエルファリア王国に関わるところを抜粋してみる。


西暦1100年 エルデン8カ国連合王国 誕生

西暦1508年 エルファリア連合王国 誕生

西暦1707年 エルファリア王国 成立

西暦1889年 エルファリア武装中立宣言

西暦1911年 第一次世界大戦勃発

西暦1914年 エルファリア王国、独自参戦

西暦1919年 第一次世界大戦集結

同年    エルファリア王国、協商国・同盟国と終戦

西暦1934年 ノルトハイム第二帝国成立

西暦1939年 第二次世界大戦勃発

西暦1943年 エースパイロット、フリードリヒ初実戦

同年    エルファリア王国、連合国側として参戦

西暦1944年 サン・アルマターレ教国、エルファリアに         宣戦布告

西暦1946年 第二次世界大戦終結

西暦1947年 三極冷戦発言

西暦1948年 シュドラ湾危機

西暦1962年 ヒューバ危機

西暦1971年 エーベルト生誕

西暦1999年 サン・アルマターレ、エルファリアに宣戦布告

西暦2000年 エーベルト、エース達成

西暦2001年 サン・アルマターレとの恒久停戦条約締結

西暦2002年 ケイ生誕

西暦2008年 ベルサルド紛争勃発

同年     エルファリア介入

西暦2009年 ベルサルド紛争終結

西暦2025年 機動空中空母 アルテミス就役

西暦2026年 テルリア戦争勃発

同年     テルリア戦争終結

西暦2030年 特殊戦術航空群セラフィム 創設

チャフ・・レーダー波を反射する金属片、レーダーを誤魔化すために使用される。

フレア・・マグネシウムなどを用いた欺瞞弾、赤外線ミサイルを誤魔化すために使われる高音・発光する金属片。

RWR・・レーダー波受信機、機体に向けられたレーダーを探知して方向と距離を示す。

AAM-10・・エルファリア独自の短距離空対空ミサイル、画像識別、赤外線を併用しており、推力偏向ノズルによる高機動を実現、射程もそこそこ長く短距離空対空ミサイルの中では世界最長。

AAM-12・・エルファリア独自の中距離空対空ミサイル、アクティブレーダーホーミングと赤外線の併用、射程110マイル、優れた命中性と汎用性、量産性から広く国内外で採用されている。

SEAD・・敵防空網制圧任務、敵の対空兵器を無力化する任務。

CAS・・近接航空支援任務、空爆などで味方地上部隊を支援する任務。

F-15MX・・垂直尾翼やエンジンの変更を加えた海軍向けの新造機、世代としては第4.5α世代に分類される。ステルスとは別進化を遂げた戦闘機、この機体の搭載能力と空戦性能は高い魅力。

戦艦ヤマト・・エルファリア王国を構成するテンカ地方に伝わる大いなる和という意味の名を冠したエルファリア最大の戦艦、主砲射程は500キロに達し使用弾薬によっては最大800キロを狙撃できる。その他、多数の防空ミサイルと対艦ミサイル、対地ミサイルを搭載できる。


お読みいただきありがとうございます、この世界は某エースなコンバットに近いような感じの世界観です。もちろん、ミサイルの搭載数はあれほどではありませんが。この世界ではレールガンもある程度は広まっていますし、何だったらバカでかい空中空母も飛んでます。とはいえ弱点も多かったり…。

そこら辺はこの後の話で出てくるので楽しみにしていてください。それと、コールサインなどはツッコミ所も多いのですが分かりやすさ重視ということで勘弁をお願いします。それでは、また次の作品で。

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