第4話 ピョンとジョ◯ョと茂み
チューチュー
蚊が進化して人型になったらどうなるんだろうな。
多分、主食は血液だから、針は絶対あるでしょう。その針がどこにつくかが問題なんだよなあ。
今みたいに口に長い針が付いてたら、人間と言えなさそう。社会に馴染めないな。前世、人間だった頃も似たようなものだったんだけれども。
尾骨ら辺に付いてたら、収まりはいいな。でも、ケツに味覚があるってこと?ケツで味わうってどうよ。
尻尾から人を丸飲みするやつとかいたけど、あれ味とかしてたのかな。
異形になって、初めて異形についてしっかり考えた気がする。意外と奥深いし、難しい。
チューチュー。
ズ、ズズー……ズ。
蛾の血の残りが少なくなっても、ドリンクをストローで飲んだ時の最後みたいな音するのね。
《鱗粉レベル1を獲得しました》
蛾なんてほとんど翅だ。
体積に対して血液量が少ないせいで、スキル獲得がギリギリになってしまった。
血を吸ってもすぐにはスキルを獲得できないから、一定量吸わないといけないのかもな。
そういえば、ガルド一向の子守りしてたの完全に忘れてた。
戦闘に進化、食事まで済ませてしまったせいで、結構な距離を離れている。
それに、森は食糧は多いが非常に危険だ。入り口をちょっと入っただけでも、強敵に出会ってしまった。出直してきます!
森に向かって例、ありがとうございました。
◇
屋根の上を伝いながら、定住先を探す。
毎度のこと、屋根の上を伝っていると、この世界で初めての同僚に会った。
蚊と話すって、改めて考えるとどうなってるんだこの世界。
「どうもー」
「やあ、屋根の上とは珍しいね」
その男は非常に紳士的だった。
「ここが一番安全だからな。人間たちはあぶねーからな。できるだけ、離れないと」
「そうでもないよ。ここは我々よりはるかにでかい翅の持ち主が休憩所として利用しているんだ」
「んー鳥のことか?」
「とり?名前はわからないが、甲高い声でよく泣いている奴らだよ。我々はピョンと呼んでいる」
可愛い名前だな。鳥か?まあ、魔物とかもいる世界だし、鳥のようで鳥じゃない生き物もいるかもしれない。
「なら、ここは危険な場所というわけだな」
「そうだよね、僕はここでピョンに食われる同僚を大勢見てきたからね」
「そうなのか、それは悲しいな。なんで君はこんな危険なとこにいるんだ?」
「君じゃないよ、ジョナサン・ジョンソンだ。」
完全にジョ◯ョじゃねーか!!なに、蚊のくせにカッコつけてんだ!
本人が真面目なトーンで話しているのが一番ずるい。
「僕はね、太陽が好きなんだ」
「日向ごっこが好きなんだな。わかるぞ、俺も好きだ。こういう昼下がりは特に最高だよな」
「日向ごっこというのかい?君は物知りだね。そうだね、僕は日向ごっこが大好きなんだ。あの太陽に
僕たち蚊は日の光を浴びていると、そこら中が温かくて、視界が悪くなるだろう。だからーー「ピョーピョー」まずい、ピョンだ!!逃げろ!!」
「お前は!」
「僕はここで囮になる!そうやって僕たちは命を繋いできた」
「ジョ◯ョ、、、」
全くお前ってやつは、蚊のくせになんてやつだ。
お前のことは、一生忘れないぜ。
「違うよ。僕の名前はジョナサン・ジョ――」
ガブッ。
「ジョ◯ョォォォーーーー!!!!!」
お前は生きろっ、そんな勇姿を最後に見た気がした。
屋根を下り、急降下で通りにあった茂みの中に逃げ込んだ。
お前の仇は絶対に俺が取ってやるからな。
茂みの中で静かに闘志を燃やしていた。




