今までの報い
あれから私は上達した。今までできなかったのが嘘かのように、たくさん花を咲かせられるようになった。
「そろそろ技を出してみましょう」
「……はいっ!」
……私にできるのかな。最近、寂しくて後ろ向きなことばかり考えてしまう。セフィロス、ルーカス……。
良くないね、ほんとうに。
「……かるみあ? カルミアっ!!」
「ごめんなさい……!ぼーっとしてました……」
「……気をつけなさい」
「はい……」
……私は、戦いたくない。やりたくない。
なんで、人間と戦わなきゃいけないの。なんのために私は戦うの。私は闇精霊になりきれない。人間だった時の記憶がそれを拒む。
リリアさんは目ざといから私の迷いなんてお見通しなんだろうなあ。
「技を出す時はね、イメージを膨らませながら花を媒体にして魔力を通すの。名前を決めると想像しやすいわよ」
イメージ、名前……。
その時、練習用の人形の上に、数房の藤が現れた。リリアさんの花はいつ見ても緻密で綺麗だな……。
そして、その花が散ったかと思うと、その花びらに触れた人形が溶けだした。比喩ではなく本当に。花びらが、人形を徐々に蝕んでいく。
……人間もああなるの? うぅ、やば……。
「イメージは湧いたかしら? やってみなさい」
私はその隣の人形を見た。大丈夫、あれは人形よ。魔力で動いてるだけ、命なんてない。
私はいつも通り花を咲かせた。あとは、標的に合わせるだけ。
――永眠繭。
カルミアの花が、人形の周りに繭みたいに巻き付く。それでも人形はもがき続けるから。……おやすみなさい、人形さん。
繭を解いても人形は糸が切れたかのように動かない。
「頑張ったわね、カルミア」
「ありがとうございます」
……私がやったんだよ、アウラ。あれは人形だから。……いつか、本当の人間を殺さなきゃいけない時が来る? 私は闇精霊。魔王の命令は絶対よ。いつまでも人間でいる訳にはいかない。……強くなるため、魔王を倒すためだから。
「明日、私と一緒に戦闘をしましょう。あなたなら出来るわ」
「……了解しました」
……今までもやってきたじゃない。敵を殺すだけよ。
それだけのことなのに私は何かに怯えている。
***
カルミアが練習しているところを、余は遠くから見つめていた。
……懐かしい。余が魔法を練習していたのはいつだろう? 何百年も前のことだ。
もうあの時の仲間はいない。闇精霊達を召喚したのは余が魔王と呼ばれるようになってから。平和な世を知ってるのは余一人だけだ。
仲間たちにあの景色を見せるために。
もう誰も失わないために。
……その為ならなんだってする。余が人間に忌み嫌われようとも。……もう護身用の感情なんていらない。




