飛ぶ鳥を撃つ
2017年07月21日(金)7時41分 =萌葱町警察署=
あの後、特に何事もなく朝になった。正直、今まで何をしていたのかをコッテリ絞り出されるかと思っていたがそういうこともなかった。ただその代わりだが、俺の前の席に奈穂さんと香苗さんが座りっている。そして、俺の隣にはなぜか鴻さんが頬杖をつきながら俺たちの様子を眺めてはニヤニヤしている。
「いやぁ、流石に悪いことしたなとは思ってるんだよ。でも、俺が依頼で来ているのなんて君たち以外知らないわけだしあそこで協力しないと色々面倒なことになってたからさ、仕方ないじゃん。ほら、ちゃんと拾って帰ってきたんだから不問にしてくれてもいいんじゃないかなぁ。」
「そっちのことは、まあそこまで追求する気もないから別にいいのよ。それで、どうだったの?」
「黒黒、真っ黒。烏丸家は今もアイホート信仰を辞めていない。むしろ、光ちゃんを使って邪魔な鈴埜宮を排除しようとしてるんじゃないかな。逆に鈴埜宮の方は分からん。というより、りっくん自身はほとんど知らないっぽいかな。むしろハウスキーパーしてた近衛とかいうやつの方が知ってそうだね。とりあえずはこんなもんかな。」
「ありがとね、スパイみたいなことさせちゃって。」
「いいってことよ。久々に体を動かす機会になったからね。それで、公安さん的にはどう動くつもりだい?」
「光を確保するのもありだけれど、現状一番まずいのは光が烏丸の手に渡ることだ。であるなら、烏丸を直接叩くのもなしじゃない。鎮が言っていたことも気がかりなのは変わりない。少なくとも現状の情報では直接原因になりえるのは烏丸の方かしらね。」
おそらく、鴻さんと公安の皆さんの間で前から関係があったのだろう。それで、鴻さんはいろいろ情報を集めていたのだろう。
「ああそうだ。もう一つの件についてなんだけど、おそらくそれらしき人物と接触した。けど、確定じゃないからもうちょっち時間が欲しいかな。」
「ありがとうね、そっちは優先順位的にはそこまでだしゆっくりでいいわ。」
「まあ、それぐらいでいいだろう。それで、昨日強襲してきた件だが少なくとも今回の対応が終わるまでは不問とする。そして、私たちの実力を見直す機会になったからな。久しぶりに筋トレの負荷を上げてみるか。」
「奈穂ちゃん、そう言ってこの間備品の器具の負荷が足りないって負荷増やして器具を壊したでしょ。流石の私も...ん、愛しの弟が帰ってきたみたいね。」
香苗さんがそう言ってから一拍おいて伸二さんが顔を出す。
「帰ったよ姉さん。それと、ほら、連行してきたよ。」
そう言って連れてきたのは伊藤浩輔さんのお孫さんだったはずの伊藤久さんだった。
「まったく、大丈夫だと息巻いたくせに一番乗りで撤退してった奴は一体どこの誰だったかな?」
「いやいやいや、一般人に本丸を守らせる方が非常識でしょ。」
何というべきか、大人の醜い言い争いのソフトな部分を見ている感じがする。
手を叩き、香苗さんが二人の言い合いをとめる。
「さて、全員集まったことだし行きましょうか。」
「…その、行くってどこに?」と香苗さんに聞くと、笑顔のままこちらに視線を移す。
「私たちがここに滞在している理由は2つ。一つは光の確保。だけど、そっちはいろいろ立て込んでいる最中。だから今から2つ目をやりに行くわよ。」
「その二つ目とは?」
気になったのか鴻さんが少し前のめりになりながら聞く。
もったいぶるように一拍置いて、香苗さんは口を開く。
「この町にはアイホート信仰をしている烏丸家があるでしょう。今までは特に変な活動もしていなかったから見逃していたんだけど、つい最近ある事件が起きてね。それの主犯格が烏丸家らしいのよ。だから面倒なんだけどね...。」
香苗さんが話している途中、伸二さんが卓上に一枚の紙を置いた。
「令状が発行されちゃったのよね。だからやるわよ、ガサ入れ。」




