暗中模索
2017年07月21日(金)1時56分 =旧鈴埜宮ラボ・ホムンクルス開発区画=
まさか壁1枚を挟んだ先に研究所があるとは...。
「うん、思った通り。誰も来れていなかったみたいだね。」
「来れていなかったって、一応鈴埜宮ラボの一角ですよね。誰も来ないことなんてあるんですか?」
文野に対して桧さんが問いかける。
「元々大きな爆発が起きたって話をしたでしょ。それのせいで通路がふさがっているの。それに開通しようにもあれじゃ大掛かりな工事になるのは目に見えて分かるからね、補修もされてないと思うよ。」
「ほう。つまり逆にこちらから攻め込むこともできるってことですよね、先輩。」
「まあね。とりあえず私は眠いから寝る。」
「え、文野先輩ってそんな起きてましたっけ?」
「君たちと違って公安の最高戦力と戦ってきたんだよ、私。つまり、ちょー疲れてるってわけ。じゃ、私は寝るからなんかあったら呼んでね。」
そう言って文野は寝袋を取り出し、部屋の隅で縮こまって寝た。そして、その隣で壁に背を預けて小熊さんも眠りにつく。
「...あの二人って付き合ってるんです?」と色々知ってそうな後輩組に問いかけてみると、
「え、他しか付き合ってなかったよな。」「そうだったっけ。でも、同棲してるんだよね?」「まあそうだね、でもそれって自分で税金周りをするのが面倒だから押し付けるために住んでいるんじゃなかったっけ。」「ああそうか。どうする、僕たちも卒業したらシェアハウスでもするかい?」「それは...いいんじゃない?」とキャッキャウフフし始めた。流石に、仲の良い女の子達の間に挟まるほど無粋じゃない。それに俺も...さすがに疲れた。内ポケットから俺も寝袋を取り出して二人と少し距離をとった位置で横になる。流石に朝からドタバタに巻き込まれて尋問の末に労働...。ブラック企業も真っ青だぜ、まったく...。
―――
2017年07月21日(金)8時43分 =旧鈴埜宮ラボ・ホムンクルス開発区画=
よく眠れはしなかったが、とりあえず睡眠はとることが出来た。
「お、起きましたか。もう少しで開通しますよ。」
「開通...へっ?開通って、もしかして通路をこじ開けてるんですか?」
どう考えてもそれはマズいだろ。確かに数は居るが実質的に一企業に潜入してるようなもんだぞ。それも、こんな研究施設を持っているんだ。警備部隊的な戦闘特化の人が居てもおかしくない。だがまあ、このままここで隠れながら過ごすのも無理な話ではあるのも確かだ。仕方ない、とりあえずは今後の行く末を見届けることにしよう。
寝袋を仕舞い、桧さんの後を着いていく。すると、既に全員が集まっていてあと少しで瓦礫に穴を開けることが出来る状態で待機していたようだ。
「よし、全員集まったようだし、開けるよ。とりあえず手筈通りに岩崎さんたちは光ちゃんと共に待機。津雲君も護衛で残ってくれ。それで、僕と桃花、それと先輩たちで偵察。彩花さんと、波留さん。それと、狛凪君は入口を警戒してくれ入るときに瓦礫を壊して押し入ってきたから誰かが来ないとは限らないからね。」
...ん?なにか、足りないような...。
同様に感じたのであろう、彩花が「あっ。」と声を上げる。
「鴻ってどこに行ったのです?」
全員の動きが止まる。そうだ、違和感の正体。鴻の姿がどこにもない。
誰も言葉が紡げない中、伶がその空気を裂く。
「このまま考えていても仕方がないだろう。彼も、何かしらの理由で離れる必要があったんだろう。まあ、いづれ会うにしてもそうでないにしても今気にするべきことじゃないんじゃないか?」
「俺もおおむね同意だな。まあ、敵じゃないと今は信じておこう。何を以って敵というかはその時考えればいいさ。」
確かにそうだ、現状俺らは情報が足りない。であるなら、それだけで判断するよりももっと情報を集めるのがいいだろう。
全員が意見に同意あるいは無反応を示したため伶は壁の掘削を再開し、そして、穴が開き暗闇にほの暗い蛍光灯の光が差し込んできた。
これにて第一章1日目終わりです...なげぇ!第一章は130~150話ぐらいの予定なのでやっと半分近くになりますね...。




