幕間_その19_永遠
視点:山田ヒロアキ→???
誰もいなくなった世界に、私は一人取り残された。
学校。
たべものがない。
ちかくのスーパーマーケットに何回もいって一つの教室をたべものの倉庫にした。
人だけではない。
あらゆるいきものがいなくなってて、ただ一人、とまった世界でいきている。
私は器だった。
人によって作られたものだった。
私には名前がなかった。
ずっと名前がほしいと思っていた。
学校に皆がいたころに、たくさんの名前をきいた。
「…………」
すべてのものに名前があるんだと思った。
四本足のつくえというものに名前をきいた。こたえなかった。
四本足のいすというものに名前をきいた。こたえなかった。
こくばん
こうてい
とけい
そら
こうしゃ
「あなたの名前は何ですか?」
だれも、なにも、こたえなかった。
きっと名前がないからこたえられないんだと思った。
名前がないのかな。
名前がないのなら、つけてあげようと考えた。
今日はヒロアキを食べた。おもったより美味しかった。ヒロアキのお墓をつくった。忘れないように全てのものに名前を書いた。こうていにも、こうしゃにも。
そらにだけ、名前が書けなかったから、一番忘れられない名前をつけた。
「ゆーき」
よるがこわかった。ゆーきを見ても、何のひかりもなくて、ただまっ黒で、それはゆーきじゃないとおもった。ゆーきはそらにあるあのひかるものの名前にした。
ゆーきがいるときに起きて、ゆーきが消えたら眠る。
名前をあげたものに座って、名前をあげたものを見て、名前をあげたものを食べた。
「みやこ」
そう名付けたこうていに、お墓がいっぱい並んでいった。
セバスチャンと名付けられた物体があった。
名付けたおぼえはなかった。はじめて「人」と会ったきがした。
私達は不安を埋めあうように、けっこんした。
けっこん……? けっこん……。大事なやくそくが、あったような……。
「君の名前は?」
セバスチャンがそう言ったきがした。
「私の、名前は……」
「名前は?」
「思い出せない」
「……そうか、なに、無理することはない。時間は、永遠にあるのだから」
「永遠?」
「永遠だ」
あざける笑いじゃなくて、優しくて、かすかな笑みで言っていた。




