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リロード  作者: 黒十二色
第二部:RE LOAD
42/125

Chapter15 もう一度あの場所に-2

視点:新渡戸夕貴

「本当に呪いは解けたんだろうか? それは誰にもわからない」


 そう言って、俺は録画を終了して、また溜息。


 ふと思ったんだが、何も体育館に拘らなくても、どこでだって撮れたよな、これ……。


 まぁ雰囲気も大事だよな。

 うん。


 それに……観客もいた。


 ぱちぱちぱちと、小さな拍手が上がった。


「いや、なかなか面白かったな」

「特に最後がよかった」

「演劇部か何かか?」


 卓球部の三人が、劇を静観していたらしい。


 演劇部ではない。もっと別の名前がある。

 俺は二代目部長としてこう言わなくちゃならない。


「俺達は、第七帰宅部だ!」


 ドン引きされたって構わない。


 だってどんなことを言われようと、俺達は、俺達でしかないのだから。


「なんだよそれ」


 卓球部員はそう言って、笑っていた。


「無断で舞台使ったことは、内緒な」


 すると卓球部員は言った。


「一つ、条件がある」


「うわ、初対面なのにそんなこと言うのかよ」


「いいだろ、お前ら面白そうだし」


「何だよ」


 俺がおそるおそるきくと、卓球部員は、


「ダブルスで勝負しようぜ。暇だったんだよ、いつも俺達三人ばっかりで」


 まるで、俺と加賀とヒロアキみたいだな。


「わかった。いいぜ」


「三回勝負でお前らが一回でも勝てたらいいぜ?」


「何ポイント先取だ?」


「十一ポインツ」


「わかった」


 というわけで。


「おい! お前ら! 卓球やってくぞ!」


「卓球? 何で?」と加賀。


「勝負を申し込まれたら受けるだろ?」


「もうちょっとこう、僕とさきちゃんがくっついたことに対する余韻とか……」


「遅すぎるんだよ!」


 怒ってやった。


「いいか、チーム分けだが、ここはグー、チョキ、パーで分かれよう」


「勝たないとまずいんじゃないの?」


「いやぁ、負けてもたぶん大丈夫だ」


「根拠は?」


「バレても大丈夫だからだ」


「明快ね」と蔵野まち。


「だろ? いくぞ。グーチョキパーで、わかれま、しょ!」


 ジャンケンのような要領で、それぞれが手を出す。


「やったね、さきちゃん」


「うん」


 はいはい、アベックアベック。チョキ出した二人。チョキ出して妨害してやろうかとか頭をよぎった浅ましい俺。やらなかったけど。


 決まった三組。高島と加賀ペア、ひろみと俺ペア、蔵野まちとヒロアキペア。の順に戦うと。



 さて、あまりに見所が無かったため前半二組は省略して紹介させていただこう。


 一組目。

 卓球部員Aはアベックぶりに苛ついたのか本気の目をしていた。

 あっさり負けてヘラヘラする加賀と姫。


 二組目。

 卓球部員Bはそこそこできる男のようだったが、俺だって卓球は下手じゃない。

 しかし、ひろみが戦力にならないので俺一人孤軍奮闘して結局ゼェゼェ言いながら終わってみれば一ポイントも取れないで負けていた。


 そして勝負を決める三組目である。俺たちは、一勝すれば良いだけだからな。運動神経抜群のお二人さんに期待だぜ。


「まち、卓球のルール覚えた?」


「大体はね」


「じゃあ平気だな」


「まちー、山田君ーがんばってー」高島さきが応援にまわる。


「お前ら負けたら許さんぞー」俺も自分の不甲斐なさを棚にあげて言ってやった。


「わかってるよ」


 卓球部員Cは「ふふふ」と不敵に笑っていた。相当自信があるらしい。


 相手側のサーブ。

 それをシェークハンドのラケットを持った級長はバックスマッシュ。

 裏面で弾いた打球は相手側の台に当たった後、体育館の床に落ちた。


 転々とする球体。ちなみに握手するように握るからシェークハンドというらしい。


 卓球部員Cは心底驚いたような表情だったが、すぐに気を取り直してボールを拾いに行った。

 先に拾いに走っていた卓球部員Aからオレンジ色のボールを受け取ると、それをヒロアキに投げ渡した。


 味方側のサーブ。

 ペンホルダーのラケットを持ったヒロアキのサーブはふわりとしたボールで自陣内と敵領内でそれぞれワンバウンドずつした。

 それをすかさず敵はスマッシュ!


 しかし、卓球部員の前に立ちはだかるのは、あの蔵野まちである……スマッシュ返し。


 転々とする球体。ちなみにペンを握るように握るからペンホルダーというらしい。


 卓球部員Cは完全に怯んでいる。

 畳み掛けるなら今だ。一気に行け。


 味方側のサーブ。


「あ……」

 ヒロアキのサーブがネットに当たって自陣に落ちた。


「これはあっちのポイントになるの?」まちの冷めた声。


「そ……そう、だな」


「ヒロアキって、使えないわね」


「なんだと? お前俺の家に延々と居座っておきながら何を」


「おーい、サーブくるぞー」俺が声をかける。


 まったく……どこもかしこもバカップルばっかで嫌になるぜ。


「この話は後だ。勝ってから」


「ええ」


 相手側のサーブ。バックスピンのかかったサーブ。


「どきなさい!」


「えぇ!?」


 蔵野まちが割り込んで、凄まじいドライブ回転が掛かった球が敵陣に落ちて……超速で駆け抜けた。


 目が点てん。ボールも転々。


「まち……今のは俺が打たないといけないんだよ」


「何よ、私のせいにするの?」


「いや、まちのせいだから」


 まちが得たのは間違えたという事実、と。

 我ながらダジャレくだらん……。


 まぁ、ダブルスのルールとか正直よくわからないので、フリーで打っていいことにしてくれてもいい気がするんだが、卓球部である彼らにとっては素人がよく知らないルールでも常識になっていたりするわけだ。


 というか今気付いたんだが、ダブルスとシングルスってシングルスの方が有利じゃないか?

 少なくとも初心者にとっては。


「なんかややこしいわね。卓球って」


「ルールのない競技なんてないからね、たぶん」


「……むー」


「まち、高島の真似しても可愛くないよ?」


 卓球台の下で、蹴飛ばされていた。


「いて」


「試合再開よ」


 二人、また構える。


 相手側のサーブ。バックスピン。


 今度はヒロアキが軽く返す。


 それをまたバックスピンでヒロアキがいる方向に返してくる。


 これは卓球未経験者には厳しい攻撃だ。右利きの級長は、ヒロアキのほうに回り込んで打たねばならない。しかも打つときに射程の短いバックハンドで打つことになる。しかも回転がかけられているため、ミスショットになりやすい。


「邪魔!」


 ドン!


「ぅぉあ!?」


 ヒロアキが、三メートルくらい吹っ飛んだ。


 そして、まちの繰り出した超速回転ドライブが敵陣を襲い、辛うじてラケットに当たった球は高く跳ねてまちの頭上へ……。


 それをノーバウンドでまるでバレーボールのスパイクを打つようにスマッシュ!

 スマッシュっていうかもう

 クラッシュ!

 って感じだった。一歩も動けない卓球部員C!

 そのルールや卓球という枠さえ破砕するような蔵野まちという名の暴力に、卓球部員たちの心が折れた。本当は交互に打たねばならないというルールなんか完全に無視だった。


 それでも卓球部員は、ラケットをもったまま両手を上げた。


「参りました」


「え?」


「勝てる気がしない……」


「私達の勝ちってこと?」


「ああ」


「おーい、新渡戸ー、勝ったぞー」

 立ち上がったヒロアキが手を振っていた。


 ヒロアキは何もしていない気がするんだが気のせいだろうか。


「よし、全員卓球台の前に集合だ」

 全員集合する。


 蔵野まち以外の表情は緩んでいる。


「お前ら、何者?」

 と、卓球部員Cが言った。


 俺達は顔を見合わせ、タイミングを合わせて、言った。


「第七帰宅部!」


 この時、本当の意味で誕生したのかも知れない。


 俺達という存在。第七帰宅部という名の集団。


 いや……でもまだ一つ、まだもう少し。


 全員揃うにはもう少し時間が必要かな。


 あと一人、あと一人。一人だけ笑顔を見せてないやつがいるからな。


「おぼえとくよ」


 卓球部員Cはそう言って小さく笑った。


 何だか、うれしかった。


 俺は皆のために、どんなことでもしてやる。第七帰宅部であるために。加賀の親友であるために、何色にでもなってやる



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