後輩ちほ、合流
「三百万!?」
ちほがコーヒーを吹いた。
「汚い」
「いま、そこ重要じゃないっす!」
会社帰りのファミレス。
ドリンクバー三杯目。
ちほはまだ信じていなかった。
「ほんとに三百万?」
「ああ」
「円?」
「ドルだったら逆に喜ぶ」
「ゆい先輩、そういう問題じゃないっす!」
店内なのにうるさい。
隣の席の高校生が見てる。
恥ずかしい。
「警察は?」
「相談した」
「で?」
「難しいって」
「なんでっすか?」
「共同で貯めてた結婚資金だったから」
ちほが黙る。
「口座の管理も、あいつが詳しかったし」
「……」
「だから事件かどうかも、すぐには判断できないって」
正直、難しい話はよく分からなかった。
分かったのは一つ。
三百万は返ってこないかもしれない。
それだけ。
「でも、おかしいっすよ」
ちほがぽつりと言う。
「先輩の元カレ、そんな人じゃなかったじゃないっすか」
「そう思ってたけどな」
「イケメンだったし」
「それ関係あるか?」
「あります!」
「むしろ、逆だろ? 普通、金をたかる側設定だよな」
「……ああ、たしかに」
昔から世の中、そんなもんだ。
みんな最初に外見を見る、特に顔を……
で、外見のいいやつが世の中ではたいてい得をする。
でも、わたしにはどうでもいいことだった。
単純に、あいつは一緒にいて楽だった。
だから付き合った。
「……何か理由があるのかも」
気づけば、そんな言葉が出ていた。
ちほが少し驚いた顔をする。
「怒ってないんすか?」
「いや、怒ってるぞ」
三百万だし。
「でも」
少し考える。
「理由くらい聞かないと、腹立ち続けるだけじゃん」
「先輩らしいっすね」
そうだろうか。
そういうの、自分ではよく分からない。
あれから3か月……
探しまくった。
SNS。
婚活サイト。
掲示板。
昔の知り合い。
思いつくものは全部。
でも、やつは見つからなかった。




