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ログアウト不能のバグで魔王になった俺、善意の行動が深読みされすぎていつの間にか世界統一してた件  作者: 黒崎隼人


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エピローグ「そして魔王は玉座に座る」

 大陸が統一されてから、一年が過ぎた。

 世界は、驚くほど平和だった。

 元勇者アルトの尽力もあり、人間と魔族の間の長年の確執も、少しずつ氷解し始めている。

 ベルドリスが作った法の下、誰もが平等に暮らせる社会が実現しつつあった。

 この奇跡のような平和を成し遂げた偉大なる盟主王、アルノス・ヴォルティスは、今や伝説の存在として、吟遊詩人に歌われ、子供たちの憧れの的となっていた。

 そして、その伝説の英雄ご本人はというと。


「……」


 玉座の上で、完全に虚無の表情を浮かべていた。


『飽きた……』


 そう、俺は飽きていた。

 毎日毎日、玉座に座って報告を聞くだけの日々に。

 世界は平和になった。

 それは良いことだ。

 本当に良いことだと思う。

 でも、俺はいつになったら家に帰れるんだ。

 会社はどうなっているだろうか。

 無断欠勤が一年に及んでいる。

 間違いなくクビだろう。

 社会的に死んでいる。

 まあ、今更だが。

 そんなことを考えていると、目の前に、半透明のウィンドウがポップアップした。

 それは、今まで一度も見たことのない、運営からのお知らせだった。


 プレイヤー、ジン様。

 現在、特殊NPCアルノス・ヴォルティスとして活動中。

 この度は、サービス開始当初に発生した不具合により、多大なるご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。

 原因を調査した結果、お客様が極めて稀なバグに遭遇し、未実装NPCのデータと融合してしまったことが判明いたしました。


『やっと気づいたのか、運営! 遅すぎるだろ!』


 俺は、一年分の文句を叫びたい衝動に駆られた。


 本来であれば、直ちにデータを修復し、お客様を正常な状態に戻すべきところでございます。

 しかし、お客様の行動によって生み出された魔王アルノスによる大陸統一という一連の事象は、我々の想定を遥かに超える、非常に興味深く、魅力的なストーリーラインを形成するに至りました。

 社内で協議を重ねた結果、我々運営は、この奇跡的な物語をカオス・ゲイル・オンラインの公式の歴史として採用することを決定いたしました。


『……は?』


 つきましては、誠に勝手ながら、お客様には引き続き、盟主王アルノス・ヴォルティスとして、その役割を継続していただきたく存じます。

 なお、ログアウト機能に関しましては、世界の根幹に関わる設定となりますため、現時点での実装は不可能となっております。

 何卒、ご了承ください。

 追伸、この度の多大なるご貢献に感謝し、ささやかながら、ゲーム内通貨100億ゴールドと、お好きなカスタムアイテムを実装できる権利を贈呈いたします。

 ご希望のアイテムがございましたら、サポートまでご連絡ください。


 ウィンドウは、それだけを伝えると、すっと消えた。


『…………』


 俺は、しばらくの間、動けなかった。

 なんだ、これ。

 公式の歴史。

 役割を継続。

 ログアウト不可能。

 つまり、俺はこれからもずっと、この世界で魔王をやり続けろということか。

 冗談じゃない。

 俺は、一年間溜め込んできた全ての鬱憤を込めて、叫んだ。


「ふざけるなーっ!」


 その声は、もちろん、俺の意図通りには響かない。

 玉座の間全体を揺るがすほどの、覇王の咆哮となった。


「――我が覇道に終わりはない! この世界の、その先を見るぞ、我が眷属どもよ!」


 その声を聞きつけ、広間に駆け込んできたリリアナやアルトたちが、歓喜に満ちた表情で広間にひざまずく。

 彼らの目には、新たなる世界征服への期待が燃え上がっていた。

 ああ、もうだめだ。

 俺は、玉座に深く、深く、沈み込むように座った。

 平和になった世界で、部下たちの勘違いは、まだ終わってくれそうにない。

 玉座にふんぞり返りながら、本当はただ疲れて座っているだけだが、俺は思う。


「俺……。いつになったら、会社に行けるんだろうな……」


 俺の不本意な世界征服と、平和な統治は、まだ始まったばかりだった。

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