表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ログアウト不能のバグで魔王になった俺、善意の行動が深読みされすぎていつの間にか世界統一してた件  作者: 黒崎隼人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/14

第1話「ログインしたらラスボス(物理)だった件」

登場人物紹介


◇ジン / 神田仁かんだじん


 本作の主人公。

 VRMMORPGが趣味の、ごく普通の会社員。

 小心者でお人好し。

 サービス開始直後のバグにより、魔王アルノス・ヴォルティスのNPCと融合してしまい、ログアウト不能の魔王ライフを強制的に送ることに。

 彼の善意と常識的な行動は、部下たちのフィルターを通して偉大なる魔王の深遠な計画へと昇華されてしまう、不憫な苦労人。

 内心のツッコミが唯一のストレス発散法。


◇魔王アルノス・ヴォルティス


 ジンのアバターであり、本来はカオス・ゲイル・オンラインのラスボスNPC。

 漆黒の鎧に身を包み、圧倒的な威圧感を放つ。

 ジンの言葉を自動でカリスマ魔王風に変換する謎のシステムを搭載している。

 本人の意思とは関係なく、その存在感だけで周囲をひれ伏させる。


◇リリアナ


 魔王軍四天王の筆頭で、妖艶なサキュバスの魔将軍。

 魔王アルノスに絶対の忠誠を誓っており、彼の言葉や行動の全てを我々凡人には計り知れない深遠なご計画と解釈する、勘違い製造機の第一人者。

 ジンの頭痛の種のひとつ。


◇ヴァルガス


 魔王軍四天王の一角を担う、屈強な竜人族の猛将。

 力こそ全てと信じる脳筋タイプだが、忠誠心は本物。

 魔王アルノスの圧倒的な力の前にひれ伏し、その覇道のためなら命を懸けることもいとわない。


◇ベルドリス


 魔王軍四天王に名を連ねる、アンデッドの王たるエルダーリッチ。

 魔王軍の軍師として、その知略で軍を動かす。

 ジンの天然な行動や発言を神の如き知略と誤解し、勝手に壮大な作戦を立案しては成功させてしまうため、ジンの胃を日々痛めつけている。


◇アルト


 サーバー最強と名高いトッププレイヤー。

 正義感にあふれる好青年で、プレイヤーたちの希望の星。

 勇者のユニーククラスを持つ。

 腐敗した人間国家に疑問を抱いていたところ、魔王アルノスと出会い、その崇高な理想に感銘を受ける。

 結果、まさかの魔王軍入りを果たしてしまう。


◇フェンリル


 魔王軍四天王の一人で、影王の二つ名を持つ。

 寡黙ながら、魔王への忠誠心は他の四天王に劣らない。

 諜報活動を得意とし、魔王の動向を影から見守り、その行動の真意を他の者たちに報告する。

 カオス・ゲイル・オンライン。

 五感を完全に再現するフルダイブ型VRMMORPGの最新作。

 それが、俺こと神田仁の、今日からの新しい生きがいになるはずだった。

 仕事のストレスも、退屈な日常も、この剣と魔法の世界では忘れられる。

 はずだった。


「サービス開始まで、あと10秒! 9、8、7……」


 VRヘッドギアから流れるカウントダウンに、胸の高鳴りは最高潮に達していた。

 キャラクタークリエイトは完璧だった。

 プレイヤーネームは、俺の本名から一文字取って『ジン』

 タンク職で、堅実に冒険を進めるんだ。

 そんな輝かしい未来設計図を描きながら、俺はゼロの瞬間を待った。


「3、2、1……リンクスタート!」


 視界が真っ白な光に包まれ、次の瞬間、俺は荘厳な広間に立っていた。

 いや、立っていた、というよりは、巨大な玉座にふんぞり返っていた。


『え? なにここ? 始まりの街じゃないの?』


 周囲を見渡す。

 天井は恐ろしく高く、黒曜石を削り出したかのような柱が何本もそびえ立っていた。

 床には血のように赤い絨毯が敷かれ、俺が座る玉座へと続いていた。

 どう見てもファンタジー世界の魔王城だ。

 しかも、玉座とは。

 完全にラスボスの席じゃないか。

 混乱する俺の視界の隅に、半透明のステータスウィンドウが浮かび上がっていた。


 NAME アルノス・ヴォルティス。

 RACE 魔王。

 Lv ???。

 HP ??? MP ???。


『は? アルノス・ヴォルティス? 俺のプレイヤーネームはジンのはずだぞ!』


 何度まばたきをしても、表示は変わらない。

 アルノス・ヴォルティスと言えば、カオス・ゲイル・オンラインの公式サイトで背景ストーリーにだけ登場していた、未実装のラスボスの名前だ。

 なぜ俺がそのラスボスになっているんだ。

 慌ててログアウトしようとメニュー画面を開こうとする。

 しかし、あるはずの場所にログアウトボタンが存在しなかった。

 何度探しても、どこにもない。


『嘘だろ……。いや、嘘だと言ってくれ。』


 背筋に冷たい汗が流れる。

 ゲームの中から出られない。

 それは、かつて一世を風靡したデスゲーム系ライトノベルの王道展開。

 いやいや、まさか。

 これは最新のゲームだ。

 そんな致命的なバグがあるわけがない。


「おお、我が君! お目覚めでございますか! 我が君の永き眠りが終わり、世界は再び混沌の渦に飲み込まれることでしょう! さあ、我らにご命令を!」


 厳かな声と共に、玉座の前に片膝をつく人影が現れた。

 正確には人ではない。

 背中からコウモリのような翼を生やし、妖艶な笑みを浮かべる美女。

 サキュバスだ。

 頭の上には魔将軍リリアナという深紅の名前が表示されている。

 NPCだろうか。


『いや、あの、存じ上げないんですけど!?』


 声に出そうとした瞬間、自分の喉から発せられた言葉に、俺は耳を疑った。


「……我を待たせたな、リリアナよ。世界の準備は整ったか」


 低く、地を這うような、それでいて圧倒的な威厳に満ちた声。

 俺の声じゃない。

 俺が意図した言葉でもない。

 なんだこれ。

 どうなっているんだ。

 リリアナはうっとりとした表情で俺を見上げる。


「はっ! 魔王様のお言葉、身に余る光栄! 全ては魔王様の御心のままに! 魔王軍、いつでも出撃の準備が整っております!」

『魔王軍!? 出撃!? 待ってくれ、俺はただの会社員だぞ! 世界征服とか無理だから!』


 混乱しきった頭で、とにかくこの場を収めようと口を開く。

 せめて、腹が減ったとでも言えば、何か食べ物を持ってきてくれて、その間に状況を整理できるかもしれない。


「あ、いや、その……腹が、減った、というか……」


 俺がどもりながら発した言葉は、またしても裏切りの自動変換を遂げた。


「我が飢えは世界の渇き! 全てを食らい尽くさん! まずは手始めに、供物を用意せよ!」

「ははーっ! さすがは魔王様! その圧倒的な覇気、このリリアナ、感動で身が打ち震えます! 直ちに最高の供物を!」


 リリアナは深々と頭を下げると、恭しく後ずさり、広間から退出していった。

 一人残された玉座の間で、俺は呆然とするしかなかった。

 どうやら、俺は本当にこのゲームのラスボス、魔王アルノス・ヴォルティスになってしまったらしい。

 しかも、俺が発する言葉は、すべて魔王らしい威厳のあるセリフに自動変換されるという、とんでもないおまけ付きで。

 これはバグだ。

 間違いなく、前代未聞の最悪のバグだ。

 初期装備であろう漆黒の鎧はゴツゴツしていて座り心地が悪い。

 視点もやたらと高い。

 ステータスウィンドウをもう一度よく見ると、俺の身体は身長2メートルを超える巨躯になっているようだった。

 もう元の俺の要素は何一つ残っていない。


『家に帰りたい……明日は月曜で、9時から会議なんだぞ……』


 そんな社会人の悲痛な叫びは、誰の耳にも届かない。

 これから俺は、この世界で魔王として生きていかなければならないのか。

 世界征服なんて微塵も興味がないし、そもそも人様に迷惑をかけるなんてとんでもない。

 俺はただ、平穏にゲームがしたかっただけなのに。

 絶望的な状況に、俺は玉座の上でただただ頭を抱えるしかなかった。

 これから始まるのが、血と硝煙にまみれた魔王としての苛烈な日々だと思うと、今すぐにでも胃に穴が開きそうだった。

 俺の不本意な魔王ライフは、こうして最悪の形で幕を開けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ