表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
泥を流す聖女として捨てられた私、死神皇帝に拾われて世界の心臓として溺愛される 〜不浄だと追放した王国が枯れ果て、私の涙一滴を乞うてももう遅い〜  作者: 蒼城レイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/45

最終話 泥の聖女から、永遠の愛へ

「……エルゼ。またお前は、私以外のものに微笑みかけたな」


 数年が過ぎた今も、ヴィルフリート陛下の重すぎる独占欲は、枯れるどころか深淵を増すばかりだった。

 帝宮の奥庭、月明かりが降り注ぐ黒い薔薇の生垣で。彼は私の腰を引き寄せ、背後から逃げ場を塞ぐように強く抱きしめる。

 心臓の融合は、私たちの間に「隠し事」という概念を消し去っていた。ドクン、ドクンと、私の胸の中で響く彼の鼓動。彼がいま、どれほど私を愛おしみ、同時に独り占めしたいと焦がれているか、そのすべてが熱となって私の魂を灼く。


「陛下、今のはお庭番の子供ですわ。……お花を届けてくれただけではありませんか」


「子供だろうと、お前の瞳に映るものはすべて私の敵だ。……お前を構成する光も、影も、一滴の涙さえも、私の許可なく他人の目に触れることは許さん」


 陛下は私の首筋に、所有の印を刻みつけるように深く唇を押し当てた。

 不機嫌そうな言葉とは裏腹に、胸から伝わる彼の感情は、凪いだ海のような深い安らぎに満ちている。

 

 あのアステリアで石を投げられ、泥を流して泣いていた少女に、教えてあげたい。

 貴女が流したその泥は、この世界で最も美しく、最も傲慢な死神の心を溶かすための「魔法」だったのだと。


「……見てください、陛下。帝都の明かりが、あんなに綺麗です」


 バルコニーから見下ろす帝都は、かつての「死の沈黙」から解き放たれ、穏やかな夜を謳歌していた。

 実父クロムウェルが求めた「静止」でも、教皇庁が求めた「選民」でもない。

 陛下の「死」と私の「生」が混ざり合い、誰もが眠りの中で明日を夢見ることができる、優しき夜の帝国。


「……ああ。お前が創り、私が守った世界だ。……だが、そんな景色よりも、今の私にはお前の内側で育つ『新しい鼓動』の方が、よほど奇跡に思える」


 陛下の手が、私のまだ平坦なお腹にそっと添えられた。

 その瞬間、私の胸の奥の「融合した心臓」が、歓喜に震えるように脈打った。


「この子が生まれたら、貴方はますます嫉妬で忙しくなりますわね。……私の愛を奪うライバルが、また一人増えるのですから」


「……フ。自分の子供だろうと容赦はせん。……エルゼ、お前の第一位は永遠に私だ。……お前の魂の席は、死んだ後も、その次の生でも、私の腕の中にしか作らせん」


 陛下は私の顎を掬い上げ、何度も、何度も、魂を吸い出すような接吻を繰り返した。

 

 思えば、遠いところまで来た。

 泥の中で始まった物語は、今、銀色の星々と漆黒の夜の祝福を受けながら、永遠の幕間へと入ろうとしている。


「愛しています、ヴィルフリート様。……私を拾ってくださって、ありがとうございます」


「……礼を言うのは私の方だ。……私を『人間』にしてくれた、私の小さな女神」


 漆黒の指輪が、月光を反射して輝く。

 私たちの鼓動は、もう二度と、別々のリズムを刻むことはない。

 

 たとえ世界が変わり、理が書き換えられようとも。

 泥の聖女と、死神の皇帝の、重く、甘く、出口のない溺愛の物語は――。

 この夜の静寂と共に、永遠に続いていく。

最後までお読みいただき、本当に、本当にありがとうございました。

「不浄」と蔑まれたエルゼ様が、陛下という「最強の執着」によって救われ、自らも彼を救う……。

この二人の物語を完結までお届けできたのは、ひとえに読者の皆様の熱い応援があったからです。


泥を流していたあの日々から、この「永遠の愛」への凱旋。

皆様の心の中にも、二人が創り出した「穏やかな夜」が届いていれば、作者としてこれ以上の幸せはありません。


これにて『泥の聖女は死神皇帝に拾われ、漆黒の夜を統べる女神となる』、本編完結です。

もし、二人の「その後」や、成長した子供たちのお話、あるいはカイルやシモーヌの裏話など、番外編の希望がございましたら、ぜひ評価や感想でお聞かせくださいね。


皆様の応援こそが、物語を動かす最大の魔力でした。

また、どこか別の夜にお会いしましょう。

愛を込めて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ