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歌舞伎町が僕を食べる。  作者: 夜坂ネオン


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20/21

エピソード19 濃い一日

歌舞伎町、昨今なにかと世間を賑わせている街。


そんな場所で実際に経験したこと聞いたこと考えたこと


そんなことを織り交ぜたノンフィクション風ファンタジーです。


 「あれから、連絡ないけど大丈夫?」


みくに、

そう送ってみた。


返事に、

期待はしていない。


今日は、

同伴詐欺から

場内指名まで。


正直、

濃すぎる一日だった。


それにしても、

初回の送りを、

まだ一度も取れていない。


どうしたら、

取れるようになるんだろう。


最近は、

出勤すれば

一回か二回は

初回につかせてもらえる。


でも、

手応えは、

一度もない。


もっと、

周りを見ないと。


先輩たちの

座り方。

間の取り方。

声の出し方。


まだ、

勉強が足りない。


そう思いながら、

外に出る。


仕事終わりの、

ナンパ。


避けて通れない時間だ。


「奏楽さん!

一緒にナンパ

行ってくれません?」


声をかけてきたのは、

俺より後に入った

新人の葵〈あおい〉くんだった。


「いいよ。

俺も行こうと

思ってた」


二人で歩き出す。


「葵くん、

寮なんだよね?」


前から、

気になっていた。


「はい。

狭いですけど、

先輩が

飯買ってくれたりして、

結構楽しいっすよ」


想像より、

悪くない。


「ナンパ、成果ある?」


「ないですねー」


軽く笑って言う。


「一回だけ、

酔っ払いと

ホテル行きましたけど、

店は来ないっす」


「……そ、そうなんだ」


「やれば、

来る時は来ますよ(笑)」


笑い方が、

少し軽い。


「葵くん、

前もホスト

やってたんだっけ?」


「はい。

五店舗くらい」


「全部、

一ヶ月くらいで

辞めてますけど」


「なんで?」


少し間を置いて。


「いろいろっすね。

先輩と

揉めたり」


そう言って、

吸い殻を道に捨てた。


……ああ。


なるほど。


この距離感は、

考えた方がいい。


そんなこんなで、

ナンパは始まったが、

相変わらず

手応えはない。


途中で、

葵くんが言った。


「コンビニ行きたいっす」


一緒に入る。


俺は、

タバコだけ買って

先に外へ出た。


少し遅れて、

葵くんも出てくる。


……何も、

持っていない。


「……あれ?」


そう思っていると、

彼が

ポケットから

酎ハイを出した。


「これ、どーぞ」


「え、

買ったの?」


「いや。

パクりましたよ」


平然とした顔。


一瞬、

言葉が出なかった。


でも、

はっきり言う。


「……いい歳して、

何やってんの?」


「早く、

返してこいよ」


「いやいや、

取るより

返す方が

むずいんすよ?」


「知らないんですか?」


そこじゃない。


胸の奥が、

一気に熱くなる。


でも、

感情的にならないよう、

抑えて言った。


「俺は、

万引きとか

ポイ捨てする奴と

一緒に働きたくない」


「そんな人間、

この店に

いてほしくない」


「返さないなら、

店にも報告する」


葵くんの顔が、

一瞬だけ曇る。


「困るっす……

また、クビじゃないっすか」


「知らないよ」


「自分で

考えろ」


それだけ言って、

俺はその場を離れた。


胸糞が、

悪かった。


やっぱり、

歌舞伎町には

こういう人間も

一定数いる。


でも。


それと、

同じ場所に

立つ気はない。


本当に、

明日、

店に言おう。


そう決めた。


一人で、

始発を待つ。


家に帰って、

寝るまで。


ずっと、

イライラしていた。


せっかく、

場内もあったのに。


明日は、

休みだ。


麗に、

ラインしておこう。


事情を送って、

そのまま眠った。


起きると、

返事が来ていた。


「報告ありがとうございます。

今日、

出勤してきたら

葵と

話し合いをします」


話し合い、か。


……まあ、

クビだろう。


でも、

仕方ない。


あの店には、

いてほしくない。


出勤時間が近づいた頃、

また、

麗から

ラインが来た。


「出勤してきません」


「寮一緒の人に

聞いたら、

荷物も

ないらしいです」


「飛びましたね」


「全然、

いいんですけど」


……そうか。


言われる前に、

荷物をまとめて

出ていったのか。


画面を閉じて、

小さく息を吐く。


この街では、

消えるのも、

才能の一つらしい。


でも、

残るには、

覚悟がいる。


俺は、

その覚悟が

あるかどうかを、

まだ、

試している最中だった。

よんでいただきありがとうございます。

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今後とも長いおつきあいをよろしくお願いします。

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