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第5話: 聖女の微笑と毒蛇の牙

エリラ聖女は証言台に、大理石で彫られた鳩のように――静かで蒼白で、聖なるふりをして座っていた。


声には砂糖漬けの憐憫が滴り、手は祈りのように組まれている。


蝋燭の光は彼女を溺愛するように白い儀式用ドレスを照らし、輝く嘘へと変えていた。


「...私はいつもアウステルリント嬢の幸せを願っていますよ?」

彼女は嵐に巻き込まれた無垢な少女のようにまつ毛を震わせた。

「たとえ彼女が…道を踏み外したとしても、...必ず更生させられますから...」


私は彼女を見なかった。


見る必要などない。


裁判長が私に向き直った。

「アウステルリント嬢。聖女の証言に反論はー?」


ドー!

私は立ち上がり、ワインレッドのドレスの皺を伸ばした。


それは習慣的な仕草で、慎み深さからではない。声を荒げる必要もなかった。


「...エリラ聖女は私の改悛を祈ってくれたことがありますわよ」

どこか面白がったような口調で言った。


「もちろん人目につかぬように、ですわね。ちょうど侍女に私の茶葉に豚の血を混ぜるよう命じる直前でしたね、あの時は......」


「——っ!!?」

絹を裂くような息を呑む声が響いた。エリラの息が止まるのがほぼ聞こえたほどだ。


「...そ、そんな奇妙な告発はぁ……」

彼女は弱々しく言った。


「奇妙?」

私はゆっくりと頭を向け、彼女のために研ぎ澄ました笑顔を見せた。

「では侍女本人に聞きましょう。名前はベルナ。2週間前に解雇されました。表向きの理由は窃盗罪。オルフェミ?」


影が形を得たように彼が前に出ると、冷徹な動作で書簡を高く掲げた。


「ベルナの宣誓供述書」私は彼を指さした。


「そして検査済みの茶葉。エリラ聖女の私用ブレンドです。単体では無害ですが、ローズマリーと混ざると毒に変わります。偶然にも、それはアウステルリント家の厨房に生えているのですわ。不思議だと思うはずですよね?」


私は前へ進んだ。


カー!カー!カー!

私のハイヒールが大理石を打つ音は、ゆっくりとした戦の太鼓のよう。


今は誰も私を遮ろうとはしない。


「疲れました」

自然と私の声は澄んで響いた。


「私から全てを奪いながら、私に微笑みを強いるこの状況に。貴族のゲームに付き合いながら、彼らの感性におもねらないだけで『悪女』の烙印を押されることに......」


ゆっくりと身を翻し、広間を見渡す。


視線を逸らす者もいる。いいだろう。


「私は皇太子を愛していましたのよ?」

私は言った。


「でも、結局はそれが私の罪となったのです。中身のない香水と偽りの信心を好む彼を愛しただけで......。で、今の私はここで許しを乞うために立っているのではありませんよ。...ただ、この茶番劇を終わらせるために立っているだけですわ」


「「「「............」」」」

沈黙。


いや――息を殺した音。王国が傾く前の静寂。


王は私を見つめていた。

怒りでも憐憫でもない何かを目に浮かべながら。彼はこのショーを楽しんでいたみたいな様子だ。


次に、エリラ聖女の仮面が剥がれた。


「あは~!私よりあなたを信じる者がいると思う~?」


そして、次に彼女は甘い声を捨て、立ち上がって叫んだ。

「あなたは皇族を殴ったのよー!」


私は彼女に向き直った。声は氷のように聞こえるよう心掛ける。

「そして機会が訪れたらまたも殴りますわよ。今度はもっと強く、...ね?」


「~~!?こ、この~~!!」

激情を抑えるような歪んだ顔つきとなった聖女は私を叩こうと襲いかかってきた!


がし!

でも届かなかった。


オルフェミが霧の中の雷のように動いたからだわ!


黒曜石のような手が彼女の蒼白な手首を無造作に捉える――だがその姿勢には疑いようのない脅威があった。


その目…神よ、あの不自然で古めかしい紫の瞳は闘志と決意に燃えていた。


とはいえ、私の格闘技術は普通の男性の攻撃すら止められるほどだから、こんな...小娘の平手打ちなど問題ないわよ。


でも...あなたが守りに来てくれたことは、...感謝しているわ、オルフェミ......

頼んでもいないのに...


「もう一度触れようものなら...」彼は囁いた。

「神々がお前を『聖女』と呼び続けられるかどうか、指を一本ずつ切り落としながら確かめよう」


エリラ聖女は手を引っ込めた。


「......」

震えている。

いいぞ。

ようやく恐怖を知った顔してざまぁ、ですわ。おほ!


「そこまでだ!」

裁判長が秩序を叫んだ。衛兵が躊躇いながら前進する。


「良い」

しかし王が手を挙げた。


「…続けさせよ」


「はぁー」

私は長く息を吐いた。冷静に。落ち着いて。


...貴族の仮面が、戦場の花嫁のベールのように剥がれ落ちた。


私はもはや磨かれた鋼ではない――その下に燃える炎だ。


私はお辞儀をした――評議会にではなく。王にでもない。


自分自身に。


「ではゲームを続けましょう」

私は呟いた。


オルフェミが私の隣に立つ。確固として静かに。


私たちは一緒に壇から離れた。潮流は変わっていた。

毒蛇は牙を剥いた。


そして聖女は?


もはや微笑んでなどいなかった。滑稽ですわね、ふふふ......


.......................................

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