【おまけ】その後のふたり
昨夜思い立って書き始めたので遅刻しましたが、クリスマス記念です。
「お帰り、りっくん!来て来て」
朝っぱらから、人里近くまで下りてきた無害な小型の魔物の群れを山に追い立てて来てくれた勇者様が帰って来た。それを待ちわびていた私は、りっくんの腕をぐいぐいと引いて歩く。
そのボロさと古さすら味わいに見える教会の、パティオみたいな石畳が敷かれた中庭。目指すはその中心ににょっきりと生えている、教会のシンボルツリーだ。
「見て!ほら、完璧でしょ?」
「!」
もさもさと葉を延ばすだけだったシンボルツリーは、我が家の庭師が枝をきちんと払って樹形を整え、綺麗に飾り立てられている。
……そう、これは異世界版クリスマスツリーだ。
りっくんが私の婚約者になってこの辺境に腰を据えてから、ガンガン狩られていく魔物から獲れる魔石をオーナメントとして贅沢に使用している。……魔石を使って動く魔道具とかいうものが世界にはあるらしいけど、うちの方だと全て人力で賄えてるし、商取引に載せるにも僻地過ぎて輸送コストがバカにならないからね……そこそこ余ってるんだ。
魔石は属性によって色味も違うし、含有する魔力で微妙に光ってるから、実にイメージ通りの、素晴らしいオーナメントに化けた。
「この世界にも、クリスマスはあるの…?」
「ないよ。だから作ってみたの。冬はどうしてもみんな家に篭りがちになるし、冬のお祭りとして今後根付けば、冬の楽しみができるかなーとおもって」
ハイ、といくつかオーナメント魔石を手渡すと、りっくんはなんだか惚けたような顔でそれを受けとる。
「…………マーサ、マーサは本当に、凄いね」
「伊達に14年も領主の娘やってないからね。りっくんがソレ飾ったら完成だよ」
「うん…………」
前世では、クリスマスにりっくんファミリーと合同クリスマスパーティーをする事もあった。私はりっくんと一緒にオーナメントを飾って、配置の出来で競い合ったりもした。
りっくんはこういう時に適当にやらないタイプで、私が適当に吊るしたオーナメントの配色バランスの悪さに口出ししてくる。比べてみると確かにりっくんが担当した側の方が明るくキラキラして見えるので、私は口を尖らせつつりっくんを真似てやり直すのだ。
丁寧に丁寧に、貴重な宝飾品を扱うような手付きでそっと自分の担当オーナメント魔石を吊るしたりっくんは、「そうだ」と謎空間をごそごそとやった。……謎空間は勇者特典の亜空間収納という魔法だそうで、私には手首から先が突然消えたり現れたりしてるように見える。
りっくんはそこから、人の頭くらいの大きさの魔石を取り出した。
「え、でっかい!」
「魔王の手下倒したときに獲ったやつ。大きすぎるし使い途ないしで忘れてたんだけど、これ、てっぺんの星飾り代わりにしたら、格好よくない?」
「格好いい!凄い格好いい!」
顔を見合わせて笑い、りっくんはデカ魔石に魔力を流して更に光らせた後、空中の見えない階段を上るような動きでアッサリと木のてっぺんに到達し、ソレを置いて降りてきた。
キラキラと金色に輝く巨大魔石は、光の粉を降らせるような不思議な光り方をしながら、ピタリとツリーのてっぺんに固定される。不思議。
「……りっくんは空も飛べるの?」
「収納と同じ要素で空間を固定して、踏んでるだけだから飛んでる訳じゃないよ。なんか……クラスのやつがラノベ?とかに似たような魔法の転用があったからってやってみたらできて、皆に教えてた」
「魔法チートかぁ……チートって便利だねぇ」
感心してる間に、パティオにはたくさんの子供たちが集まって来ていた。ご近所の子供たちだ。
「おじょうさま、それなに?!」
「きれー」
「すごいねぇ」
ツリーを囲む子供たちの上にも、さらさらと光の粉が降っている。
「これはクリスマ………………………今年命を頂いて、こうして魔石になった生き物達への感謝と、来年もよろしくお願いしますっていう気持ちで一緒に楽しむお祭りだよ!これから皆にも説明するからね」
「………それは収穫祭かな?」
「うちの方の収穫祭は作物に対するやつだから、動物や魔物版!」
「なるほど、マーサは凄い」
子供たちと同じようなキラキラした目で私を見下ろすりっくんの胸元に軽く拳をあて、私は「さ、これをお父様に見てもらって、お祭りの企画内容を説明するよ!」と力強く頷いた。




