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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆


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(471)観戦

 取りあえず宿を予約しただけでまだ日は高いので、このまま部屋に籠っても何もする事が無いので事前に宣言していた通りに道中に遭遇した一団がミューゼ王国で無事に過ごしているのか、ミルバ達が安全に生活できているのかを直接ロイが確認できるように移動の道具の片割れを設置の上で外出する事だけは決定している。


「それではロイ様。早速向かいましょうか?」


 ハートクィーンは内容はどうあれロイと同行できることが嬉しいので、宿の主人から聞いた闘技場の催しに早速向かう様に声をかけている。


「そ、そうだね。えっと、定期的に開催って言っていたじゃない?今日開催されているのかな?」


「その様です。やはりロイ様を中心に世界が回っている証拠とも言えますね!」


 そんな事は絶対にないと言いたいのだが押し問答になるのも面倒なので、はち切れんばかりの笑顔で周囲の人々を虜にしているハートクィーンを伴って闘技場に向かうロイ。


「結構人がいるんだね。定期開催って、どの程度の間隔で行っているのかな?」


 現地に近づくにつれて人の波が大きくなっており、これが仮に毎日開催であれば本当に大盛況なので出される食事に関しても期待が持てると思っているロイ。


「週に一度が基本で、時折急遽開催される事があるそうです。何でも午前の部と午後の部があるので一日に二度行われる様です。因みに今日は定期開催の日です、ロイ様」


 そのまま列に並んでチケットを購入するのだが、既にある程度共通の価値ある品とこの国の貨幣との交換を宿で実施しているので普通に支払って中に入る二人。


「え?ここ?」


 流れる様に案内された場所はある意味VIP席で、闘技場が隅から隅まで良く見える上にある程度仕切りがあるので半個室状態になっている。


「もちろんです。ロイ様が御覧になる以上はそれなりの格式が必要ではないでしょうか?応じてお食事に関しても極上の品を注文済みですので、どうぞお楽しみください!」


 ロイとしては一般市民の感覚を体験したいと思っていたのだが、説明を省くとこのようになってしまう事を忘れていた自分の落ち度だと思い・・・善意からの行動である以上はお礼を伝えて観戦に意識を向ける。


「ありがとう。確かにハートクィーンに周囲の目が集中しちゃう弊害もあるから、個室に近い方が良かったかもしれないね」


 後半は自分に言い聞かせており、徐々に視界に広がっている観客席に人が埋まるのを眺めている。


 相当な人数が収容できるので入り口も複数個所ある様で、ある程度の時間で殆どの座席が埋まった段階で会場に声が響く。


「皆様お待たせしました。本日は9連勝中で残り一勝で勝ち抜けが確定するロベルトの戦闘が行われます。対する者は二連勝後負傷により離脱していたアングル!さぁ、何方が生に対する渇望が強いのか!皆さま、賭けは終わっていますでしょうか?」


 一気に歓声が上がり・・・まさか賭けまで行われているとは知らなかったロイはアナウンスの内容にも良い気はしないので、眉をひそめている。


「ハートクィーン。異形の者との戦闘と聞いていたけどさ?今の説明だけだと判断できないけど、仮に二人共自我があるのであれば・・・間違いなく命のやり取りをさせているよね?国の方針である以上は俺が介入する事はないけど、ちょっと気分が悪いかな」


 重大な犯罪者が対象になっている可能性も有るので一個人が介入するべきではないとの方針を曲げていないロイはこのように告げており、正直本当に命がけの戦闘を直接見たいとも思わないので荷物から書籍を取り出して読み始める。


「申し訳ありません。調査不足でした、ロイ様」


「ハートクィーンのせいじゃないよ。俺が調査を禁止していた影響もあるでしょ?残りは食事だよね?折角だから美味しいと良いよね?」


「失礼します。お客様は・・・お二人ですね。ロベルトとアングル、何方にお賭けになりますか?」


 一瞬ハートクィーンに見とれたのだが仕事があるので直ぐに持ち直し、賭けの状況を確認している。


 直前に戦闘自体が不快に感じていると聞かされているハートクィーンなので、ロイの許可はいるが必要に応じて命が消えない程度に癒す事も考えていると同時に不快な交渉自体も自らがするべきと即反応する。


「この国は人命を賭けの対象にしているのですか?」


「・・・お客様は異国の方のようですね。確かに人が命を賭けて戦うのがこの場所ですが、彼等は自ら望んであの立場にいるのですよ?勝っても負けてもそれなりの報酬が本人又は遺族に出る訳で、全ての危険を承知の上で戦っています」


「その割には勝ち抜けと言っていたようですが?強制的に参加させているのではないですか?それに・・・私は異形の者との戦闘と聞いていましたが?」


「あぁ、戦闘を経験した段階で逃げたくなる連中が多くいるのです。基本契約は10連勝で継続か抜けるかを選べることになっているので、今回戦闘するロベルトは抜ける方を選んだ事になります。異形ですが・・・戦闘時に負傷する以上は異形になる場合が多いですからね。それで賭けはどうしますか?」


 納得できるか否かは別にして一応筋は通っているので、これ以上の質問自体もロイの機嫌を損ねかねないと判断したハートクィーン。


「おおむね理解しました。賭けは義務ではないのでしょう?辞退します」


「承知しました。観戦をお楽しみください。お食事はどのタイミングでお持ちしますか?」


「直にお願いします」


 直に持ち込まれてロイが空腹でなくとも、この状態で保管する事が可能なのでロイに確認せず会話を終了する事が重要だと即答していたハートクィーンと、正直会話は聞こえているが我関せずを決め込んで書籍に視線を移していたロイだ。


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