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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆


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(355)タッシュの動き

 本来タッシュ以外は入室を許されていない研究室なのだが、半分だけ覆面をしている男に対して待っていたとばかりに納品について問いかけているタッシュ。


「随分と急いでおりますね?当商店としてはお客様の納期に対する希望も最大限配慮できますので、ご要望の品はしっかりと準備させて頂いております。ですが流石にあの量になりますとこちらに持ち込む際に人目につく可能性がある為に、納品場所の変更をお願いしに来ました」


「そう・・・か。それはそうだな。しかし本当に準備できたのであれば、相当な実力者が揃っているのだろう」


 タッシュは過去にゼシューから何でも請け負ってくれる店の話しを聞いており、今回は怒りの余りにゼシューとは異なって変装すらせずに直接店に乗り込んで依頼をしていた。


 タッシュ本人としてもまさかこれだけ早く依頼が達成できたと報告しに来る事は想像していなかったのだが、自らの希望を達成する為に必要な道具も探し出す事が出来たのでこれから多少歩いても問題ないと思っている。


「それで、何処で納品するのだ?」


「残念ながら匂いも発生しますので、人がいそうな場所での納品は控えた方が宜しいかともいます。ここから徒歩で30分程必要になりますが、お越し頂けますでしょうか?」


「良いぞ。どの道素材はどの場所であっても素材としての価値に変わりはないからな。問題なのは数だ。そこは大丈夫だろうな?」


「魔獣50体。それも中型以上・・・でございますね?」


「そうだ。正直それだけの品をこの短時間でそろえられたと言われても、素直に信用できない所は仕方がないだろう?」


「ご指摘御尤もでございますが、当商店と致しましては信頼第一でありますのでどうぞご安心ください」


 こうして覆面に案内されるまま学校を後にするタッシュは、全く人気のない場所の大きな建屋に案内される。


「こちらに素材を揃えております。一応匂い対策の為に道具を使用しておりますが、建屋の中に入ってしまうと強烈な匂いが襲ってきます。大丈夫ですか?」


「あぁ。積極的に研究を行っていた際にはその程度の匂い、嫌と言う程嗅いでいたからな。全く問題ない!」


 覆面の男は何処から取り出したのか、匂い対策として口と鼻を保護するかのように布を何重にも巻いている。


「ほれではどうほ(それではどうぞ)」


 口元の布の影響で普通の会話にはなっていないのだが、言わんとしている事は理解できるので促されるままに建屋に入って行くタッシュ。


「ほちらです(こちらです)」


 侵入して少しすると扉が見え、その先に品があると言われているのでそのまま内部に侵入するタッシュと、匂いがキツくて我慢が出来ないのか検収作業を邪魔したくない意図かは不明だが、覆面は部屋に入る事は無く扉の前で待っている。


 タッシュも過去に経験していた匂いよりもきつい匂いだと思っているのだが、これまでの経験もあって我慢できない程ではない為に素材の確認をしている。


「良し。これならば十分だろう。おい!少し扉を閉めてくれ!」


 開いている扉の先にはタッシュの様子を窺っている覆面がいるのだが、これから道具を使用した術を行使するので第三者の目に触れたくないタッシュは扉を閉めるように指示を出す。


 覆面としても納品された品に対する文句がなければ問題ないし、部屋には窓一つなく逃げる事は不可能な上に出入口は扉一つだけ。


 そこに加えて正直匂いを継続して嗅ぎたくなかったので、扉を閉めろと言われれば喜んで閉める。


「分かひまひた。素材に関ひては問題ないと言う事で宜ひいへほうは(でしょうか)?」


「あぁ。十分だ!」


 ここだけ確認できれば良いので、タッシュの満足気な声を聞くと直に扉を閉めている。


 タッシュは扉が完全に閉まった事を確認する為に素材の前ではなく改めて扉の近くに移動するのだが、覆面の男はこれからタッシュが何をするのかには一切興味がない上に匂いを嗅ぎたくない事から扉は隙間なくきっちりと閉じられている。


「良し・・・いよいよこの道具を使用する時がやって来た。まさか私がこのような事をしなくてはならないとは思っていなかったが、仕方がない!」


 裏と表に張り付けている紙を剝がしながら呟いているタッシュは、長く封印していた紙に記載されている模様が視界に入り眉が寄っている。


 それほど禍々しい雰囲気を出しており、誰がどう見ても真面な道具には見えない。


 表層に張り付けていた紙を全て剥すと、その模様を視界に入れたくも無いのか指で端を摘まみながら視線を外して素材の山の元に向かい、投げ捨てるかのように紙を頂部に置く。


「私の調査が正しければ、これで相当な力を持った配下を召喚できるはずだ!黒い存在である事だけは避けられないが、忌々しい存在を罰する事と比較すれば大したことではない!さぁ、こい!!」


 黒い存在とは一般的に言われている悪魔やらを指しており、人族だけではなく全ての存在に対して害を与える対象の総称だ。


 不安7割、期待3割で素材の山を見ているタッシュだが、何も変化が無いので仕方がなく紙に視線を向ける。


 禍々しい模様そのままに全く変化が無いので、ここで漸く道具の起動には基本的には大気中の魔力以外の魔力が必要である事を思い出したので嫌々ながらも素材の近くに再び移動して紙に触れると、自らの補助道具の力を借りて魔力を流した。


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