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界層ダンジョン一刀両断

 カズラ(龍態)の背に乗り、雷雲を貫いて第九界層へ。


 そのまま巨大な竜型の魔物ひしめく『竜の巣』突っ切る。彼らは僕たちにこそ敵意を向けたが、それが龍帝の背に乗っていたので、渋々諦めたように見えた。


「これは僕でも無理だったなぁ」


 第十界層に行くには、龍帝の許しがいる。

 話だけは聞いていたが、空にある境界を抜けて、さらに並み居る竜種が待ち構えているとなれば、相手がカズラだろうと頼むしかないわけだ。


◆◆◆


「んじゃ、オレはここまでだ。帰りは心配すんなよ。第十界層に入ったヤツぁニオイが違う。平伏す……たぁ言い過ぎたが、ここのモンも手出しできねェさ。じゃあな」


◆◆◆


 夢から覚めたような感覚。

 地面に立ってはいるが、その地面を証明する術がない。


「ヌル子ちゃん!」

「はい……えへへ」


 まだ床ドンから戻りきっていないようだ。


「…………ここが、第十界層」


 暗黒、というには遠くまで見える。見えていない。何もない。

 暗くもなく、眩しくもなく。……明るさという物差しが意味を成していない?


 僕の腕を抱いて着いてくるヌル子ちゃんも同じらしく、怪訝そうに辺りを見渡している。


「師匠は、本当にここに……?」


 今までの界層には、しっかり『環境』があった。しかしここは……。


「呼んだか、マサムネ」


 首筋に冷たいものを当てられ、思わず振り向く。が、誰もいない。


「今の声……師匠ですか⁉︎」

「そうだとも言えるし、わたしじゃないかもしれない。それが第十界層の正体だ」

「……なにを」


 視界の端に、全身タイツみたいな格好の美女が見える。師匠だ。


 どれだけ追っても、その顔とスタイルがいいからかろうじて許されているような変態をしっかり捉えることはできない。


「ヌル子ちゃん、近くに師匠がいるんだ。見える?」

「……はて。ヒナギクさんしか見えませんけど」


 ……そうじゃない! けどちょっと、いやかなり嬉しい!


「っ……⁉︎」

 歩くのをやめた途端、足先の感覚が曖昧になった。慌てて確認すると、……よし、ある。認識も帰ってきた。


 ……。

 考えろ。なんだここは。なぜ師匠はこんなところにいる。



「第十界層で待つ」

「いつか仲間を連れて、わたしを殺しに来い」

「それが最終試験だ、マサムネ――」

 それだけ言い残して、師匠は先代龍帝に送られていった。



 ……。

 そうか。


「……ヒナギクさん?」


「ヌル子ちゃん。僕のこと、よく見てて」


 そうなのだ。

 刀を鞘から抜き払い、鞘の方をヌル子ちゃんに手渡す。


「これで万が一のときも安心だ」


 ――。

 感覚を研ぎ澄ませる。その端からぼやけていくのすら確かめながら、


 ――一刀、両断。

 界層ダンジョン最奥、第十界層は、一太刀のもとに断ち切られた。

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