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7話 竜族の力



「……話はわかった。二人が大魔王討伐に赴くのに反対はせん。」


ニゼルさんに、二人で話し合い大魔王を倒しに行くことに決めたことを伝えた。

反対されることも考えていたが、許可は思いの外軽く出た。

意外な答えだったので、俺達は顔を見合せ、お互いに破顔した。

ニゼルさんは、ただし……、と言葉を続ける。


「パーティーが二人では心許ないであろう?それに、ミシェルよ。大魔王を討伐するのであれば、竜族の力を全て引き出さねばならん。

旅に出るのであればまずは、力を引き出すのが先だ。」


「竜族の力……ですか。」


「うむ、これだけは単に鍛えてもどうにもならん。

竜族は基本、元の身体能力の高さを利用して戦うのだが、竜族はいつもあのよく想像される姿でいるわけではない。

あの姿は加減が効かぬし、細かい作業もできん。

普段は我等のように人型で過ごしておる。」


俺もだが、クルシュもニゼルさんの話に驚いているようだ。

お伽噺や伝承で描かれている竜は大きくて恐ろしいイメージだったが、実際には人と変わらない姿で過ごしていた。

人型なのは混血だけだと思っていたし、どうやって人との間に子を成したのかと疑問だったが、そういうことなら納得だ。


クルシュが言葉を発する。


「ニゼル様、つまり竜族の力とはそのことですか?」


「おうとも。竜族ではこれのことを『真化』と呼んでおる。

例え混血であろうともこれは竜族の固有能力。人間が混ざろうとも使えぬわけはない。

と、言っても純粋なのとは違い、リザードマンのような感じになるがな。」


「進化ですか?」


「進化ではなく、『真化』だ。

進化は人間専用、時間を掛けて環境に適応し次のステップに進んでいけるのは奴等の特権よ。」


『真化』というのが、何れくらいの時間を要して覚えられるものなのかは知らないが、俺にはクルシュと大魔王を倒しに行くっていう約束がある。

絶対に身に付けて、ニコラス達が成し遂げられなかったことを成し遂げてやる。

そんな覚悟を決めて、俺達はニゼルさんと王都の外に出た。







「では、『真化』……がどういうものかをまず見せてやろう。」


「はいっ!お願いします!」


「よい返事だ。ぬん!……『真化』!!」


ニゼルさんの掛け声と共に、彼が光に包まれていく。

光が収束し、徐々に姿が見えてくる。


額から生えていた角が少し伸び、顔と胸以外の部分が鱗に覆われている。

背中からは一対の大きな翼と、腰の部分から伸びる尻尾がある。

腕は二の腕部分から手の部分までが一回り大きくなり、足は狼のような特殊な形をしている。


「これが『真化』だ。能力は親竜に左右されることが多い。

我は機動力が高いタイプのもので、他の竜と比べ、人の時と大きさがさほど変わらぬ。

全員に共通なのが身体能力の上昇と、竜の鱗によるダメージカットだ。 カットされる量は自分と相手との差で変動する。」


「…す、凄いです。ニゼル様から物凄い魔力を感じます。

大魔王を倒せると言うのも納得出来る気がします!」


クルシュはニゼルさんの姿を見て興奮している。

俺にもあんな風に変身出来ると思うと、クルシュの気持ちも少し分かる気がする。

ニゼルさんからはヨハネスなんて比にならない程の魔力を感じて、体が身震いをした。

本当に竜を相手にしている気分だ。


「一度でも『真化』を発動すればこのように瞬時に変身出来るようになる。

魔力を放出し、体外に出た自身の魔力を身に纏わせるのだ。」


「魔力を……。ふっ!……こうですか?」


「腕が良いな、流石はあれほどの竜の血を引いているものだ。」


体外に出した魔力を、鎧を着るように全身に纏わせる。

体外の魔力を操作するのは少し難しかったが、イメージを固めてやることで、比較的簡単に出来るようになった。


「ここからが少し難しいのだ。

自身の魔力の比率、人間と竜の比率を弄り、竜の比率を上げる。

その為に魔力を操りながら、闘気をも操らねばならん。

竜族にしか出来んことだからな、鍛えるだけではダメといったのはこれが理由だ。

周りのものたちにこれを試すものは居なかっただろうからな。」


魔力と闘気の同時操作……?それなら簡単だ。

勇者パーティーに居た頃に試したことがあったからな。

魔力と闘気を織り混ぜて、体組織をほんの少し弄る。

あとは感覚でどうすればいいか分かる!


「はぁっ!……『真化』ァ!」


「なんと……こうも早く習得するとは。」


「ミシェルさん…!この魔力はニゼル様を越えてます!」


自身をニゼルさんとは違い、青白い光が包んでいく。

体が変形し、身長も高くなり始める。

腕を見ると、二の腕部分がアーマーを付けたかのような形になっている。

側頭部と額から痛みを感じることから、額の角が大きくなり、横にも角が生え始めているのだろう。


痛みが収まり、変身が終わった。

自身の身長はクルシュやニゼルさんの2.5倍程だろうか?というか、人の部分が殆ど残っていない気がする。

クルシュが持ってきていた鏡を見せてくれる。


「ミシェルさん!まさにドラゴンって感じで格好いいです!

……わぁ、皮膚もこんなにゴツゴツしてるんですね!

ニゼル様、ミシェルさんは凄いですよ!」


予想通り、顔もドラゴンっぽくなってる。

額の角なんてまるで剣のような形で、人の部分なんてやっぱ残っちゃ居なかった。

その部分に地味にショックを受けつつ、ニゼルさんに向き直る。


「……ミシェルよ、本当に純粋種に近いようだな。

これならば大魔王も下せるだろう。

久しぶりにそれほどの者を見たんで震えてきよったわ!」


豪快に笑いながらニゼルさんがそう言った。


「『真化』同士で手合わせをしてみんか?

相手になるかわからんが、我でもならし運転くらいは出来よう。」



「ミシェルさん!頑張って下さい!」


俺とニゼルさんでならし運動も兼ねた『真化』同士での模擬戦が行われることとなった。

互いに準備を整え始めようとした時、声をかけられる。


「ミシェルか?見違えたぞ、もう『真化』を習得したのか!」


「あら、カッコよくなったじゃない。これなら安心ね。」


ベリトとニコラスだ。

ニコラスも少し前に名前で呼び合うようになった。

王都の復興の途中で来たのか、二人とも作業をしやすそうな、身軽な服装だ。

ニコラスは殆ど変わってないようだが、鎧姿で復興をしているのを見たとき、あれほどの動きが出来るのか……と感嘆してしまった。

二人の姿を視界に入れ、クルシュが驚いた顔で話しかける。


「お二人共、どうしてここに? 」


「ニゼル殿にお誘いを受けてな?君達のパーティーに参加することになったんだよ。」


「うふふ、宜しくね?攻撃魔法は任せて頂戴。」


「ほ、本当ですか!?ありがとうございます!」


大魔王討伐に二人も参加してくれると知り、嬉しい限りだ。

一人ではクルシュを守れるか少し不安だったし、ニコラスが居るなら百人力、安心して背中を任せられる。


「メンバーも揃ったようだな?

では主がこの先どこまで通用するか見極めてやろう!」


「加減はしない、全力をぶつけます!」


お互いに地を蹴り、一瞬で相手の目の前まで迫り、互いの拳がぶつかる。

それを合図に『真化』同士の模擬戦が始まった。


よろしければ評価やブクマお願いします。

これからも多少遅れるかもしれません。

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