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『消失のタイムラインと、不敵なる独自解析』

前夜、薄暗い資材置き場で「完璧な爪を研ぐには、もう少しだけ時間を要します」と、劇画調の渋い顔でジャス先輩に誓ったソウゾウ。

――しかし、運命の歯車は、彼の予想を超えるスピードで冷徹に動き出した。

後日。

ソウゾウが自席で通常業務カモフラージュをエレガントにこなしていると、パーソナル端末にジャス先輩からの緊急通信が飛び込んできた。

『ソウゾウ、カイゾウ……っ! 奴らが、ヴィルとデモが一瞬の隙を突いて消えた……っ!!』

ソウゾウの顔面に劇画調の凄まじい陰影が走り、額からドロッとした冷や汗が噴き出した。すぐさま同じく顔を青くしたカイゾウと合流し、二人はジャス先輩のいる上層部の『第7管理室』へと、風を切るようなスマートさで急行した。

管理室に飛び込むと、そこには顔色を悪くしたジャス先輩の姿があった。ヴィルとデモが先ほどまで座っていたデスクの端末は、完全にログインが切れて空っぽになっている。

しかし不思議なことに、彼らが今まで巧妙に隠蔽していたはずの不正の「証拠の数々」が、なぜかデスクの上にそのまま残されていたのだ。

「自席で通常業務を監視していたはずなんだ……。だが、本当に一瞬だけ目を離した隙に、奴らは忽然と姿を消した。……勘付かれていた。奴らは逃げたのだ」

その後、室内に『監査グループ』の捜査班が立ち入り、現場の捜査は完全に彼らへと委ねられることになった。創造局の若手トップエースとして名高いソウゾウとカイゾウは、当然ながら1ミリも疑われることはなく、純粋な目撃者としてごく普通に事情を聴かれただけであった。

いかつい顔の捜査班リーダーは、じっと3人を見つめながら、ドスの利いた恐ろしい声で事情聴取を締めくくった。

「事情はよく分かった。君たちのような優秀な若者が、逃亡した悪党のせいでこれ以上残業を増やし、メンタルバランスを崩す必要はない。あとは我々監査グループに任せて、今日は早く帰りなさい」

「……は、はい。お気遣い、感謝します」

ソウゾウは、相手の顔の怖さと労働環境への配慮の強烈なギャップに激しく脳をバグらせながらも、スマートに一礼して退出した。

* * *

深夜、午前2時。

静まり返ったオフィスで、ソウゾウの目はギラリと鋭い眼光を放っていた。

彼は手元のマルチモニターに向かい、いつものように完璧な隠蔽を施しながら、4つ目の奇抜な世界『空しかない世界』を美しくメンテナンスしていた。

だが、今夜の彼のタイピングスピードは、いつも以上に凄まじかった。

ソウゾウは、昼間の現場検証のドタバタの最中、ヴィルとデモが残していった「証拠の数々(データ)」を、誰にも気づかれぬようエレガントに全て複製スキャンし、手元に確保していたのだ。

「フッ……公式の捜査は監査グループに委ねられた。だが、あ奴らが残していったこの証拠の数々……。優秀に見せかける天才である奴らが、これほど決定的な痕跡を無防備に置き忘れていくはずがない。ここには、必ず奴らの『真の目的バグ』へ至る航路が隠されている……!」

キーボードを叩く指先から立ち上る熱気が、オフィスを白く染めていく。

ソウゾウは、自分の奇抜な世界セーフゾーンをクリエイトする作業の裏で、その天才的なハッキング能力を完全に並列起動させ、ヴィルとデモの逃亡先を突き止めるための「独自捜査」を本格的に開始した。

「相変わらず熱いなぁ、ソウゾウ。それ、俺の再生エネルギーで証拠データの破損部分を修復してやろうか?」

パーティションから顔を出したカイゾウが、悪友のいつも通りの大暴走を、温かい目で面白そうに見守りながらニヤリと笑う。

「フッ……余計な世話だ、カイゾウ。……だが、我が盟友の力、拒む理由もない。エリートの仮面を脱ぎ捨てて逃げ出した愚者どもよ。神界の目を盗み、この私のシステムから逃げ切れると思ったら大間違いだ……!」

額から冷や汗を流しながらも、神界の巨悪の痕跡を闇夜で一人(+見守る悪友1人)で追い詰める「裏の執行人」としてのカルマに、過去最高の知的悦びを感じて深くうっとりと悦に浸るソウゾウであった。



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