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8.おっさん、商業ギルドで学ぶ

 「グレートベアはギルドに売るか、冒険者自身で商会に売るんだ。商会で査定を受けて、それから支払いになるんだが、明細を知りたいか?」

 「何がいくらで売れるのかは知りたいですね」

 「わかった。手数料を取られるが、ギルドに鑑定を依頼しよう。鑑定士を手配してくれるか?」

 「はい。喜んで」

 愛想よく答えると、奥の事務室に地味顔美人の受付嬢は入って行った。

 ラビスが説明をしてくれる。

 「鑑定は、冒険者ギルドでも出来るんだが、今回は、勉強のために冒険者ギルドと商業ギルド、両方の鑑定士を依頼しよう」

 「それ、意味があるんですか?」

 「二つのギルドの大まかな相場がわかる」

 地味顔美人の受付嬢の手配で冒険者ギルドの鑑定士と商業ギルドから派遣されてきた鑑定士が、ギルドの中庭でグレートベアの鑑定をする。

 「塩漬けにした干し肉ですか?」

 春陽は、馬車の中で肉が融けてくると乾燥魔法フリーズドライをかけて、コツコツと干し肉を作り続けた。

 前例のない鑑定品に、鑑定士達が困惑した顔で、十樽の中のグレートベアの干し肉を見つめている。

 「試食してみましょう」

 両ギルドの鑑定士が言った。

 冒険者ギルドには、冒険者のための簡単なレストランがある。そこで、グレートベアを炙り、鑑定士やラビスに干し肉の試食品を渡した。

 「醤油もあるぞ」

 ラビスが言った。

 

 この世界には、勇者が製法を伝えた。醤油ソースがあるらしい。タマリ醤油が出てきた。

 春陽はお礼を言って、醤油を炙った干し肉に垂らす。

 「旨いな」

 ラビスが肉を頬張る。鑑定士達も頷く。

 「ええ、これでしたら一樽、金貨五枚。十樽で五十枚。毛皮は金貨五十枚。一角ウサギは一羽、銀貨五枚。全部で四十羽ですから金貨二十枚。骨は我々では鑑定できません。合計金貨百二十枚でございます。鑑定料は一人金貨五枚です。ラビス様、春陽様、この査定でよろしいでしょうか?」

 

 「どうする?」

 「ありがとうございます。鑑定料の金貨五枚ずつを払いましょう」

 そう言うと、本田は自分の革袋から金貨五枚を支払った。

 鑑定士が帰ると、ラビスが手配した商会の買取人バイヤーがやって来た。

 買取人は恭しくラビスに頭を下げる。

 

 商会の買取人は、春陽の服よりも高級な服を着ている。下級貴族やそれなりに裕福な商人の衣服を用意して貰ったはずである。ひょっとして、従業員ではなく商会主が来たのか?

 商会主らしき、初老の男と商会の鑑定士三人で樽の肉を確認している。

 「あの、体力がないんで、時間がかかるなら座っていてもいいですか?」

 春陽は、ギルドから椅子を二つ借りてくると一つをラビスに渡した。

 「骨で作るスープや肥料ですか?」

 商会主は首を傾げる。

 「肥料は、畑の土を見て量を変える必要があります。ただ、撒けばいいというものでもないですから実験をする必要があると思います」

 「そういうものは、ご領主様に相談された方が良いかと・・・」

 ラビスの顔を商会主は見る。

 「わかった。領主には私から、相談してみよう」

 「それでは、グレードベアの肉は金貨八十枚。毛皮は金貨七十枚。一角ウサギの肉は金貨三十枚。合計金貨百八十枚でよろしいでしょうか?」

 

 ラビスは、春陽の顔を見る。

 「お任せします」

 「それで頼む。それから、骨の代金を立て替えて欲しい。金貨百枚でどうだろうか?」

 「金貨百枚でございますか?」

 商会主は少し考えてから、頷いた。骨で金貨百枚、春陽がリズウェルから貰った旅費と同額である。

 

 商会主は、ラビスと春陽を商業ギルドに連れて行くと金額が書かれた契約書を四枚差し出した。契約書は、ラビスと春陽、ギルド、商会が一枚ずつ保管するらしい。

 契約が済むと、金貨二百八十枚の革袋を二人に渡す。

 「金貨は、冒険者ギルド、商業ギルド、あとは勇者が発案した銀行もある。そこで預かってくれるぞ。ただし、預かり手数料を取られるからな」

 

 春陽は、自分の取り分の金貨百九十枚のうち、金貨百五十枚をギルド内の銀行に預け、金貨四十枚を持ち歩くことにした。

 「ギルドが発行した小切手もあるぞ。手数料で五%必要だが・・・」

 「それも勇者が考えた仕組みですか?」

 「ああ、そうだ」

 ラビスが頷いた。

 「ところで、春陽、食事はどうする?」

 春陽が宿泊している宿屋でも食事は出る。素泊まり一日銀貨五枚。食事が朝晩、銀貨一枚である。

 コルドが使っている宿屋で、この町では中の上の宿屋だという。

 「宿屋でも出ますけど・・・。」

 「ご馳走するよ。勇者料理を出す店がある」

 「勇者料理ですか?」

 胡散臭い眼でラビスを見る。

 「ハンバーガーに牛丼ときたか・・・」

 その店は、町の中心部にあった。ラビスや春陽以外の客は絹の服を着た上流階級の者ばかりである。


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