16.おっさん、ゴーレムを量産する
魔王城の南には魔族の居住区となる町があった。それなりに大きな町である。しかし、魔王城の北側、東側、西側の三方は広大な空き地である。
東側に農業エリアを、西側に牧畜エリアを、北側にワイバーン部隊の居住区やゴーレムの作業場を作ればよいと春陽は考えた。
そして、ある程度、農畜産業が整えば、産業を起こせばいい。
魔王がゆっくりと生きるのなら、人間よりも早い速度で産業を振興すれば、魔王領に侵攻できないはずである。
リズウェルと夕食を取ると、寝室に向かった。リズウェルは、今日は自分の寝室に向かった。
春陽は、私室で入浴すると一人、ベッドに寝ころんだ。
いきなり異世界に召喚されたのだ。いきなり地球に戻ることもあるだろう。久しぶりの休暇を異世界で楽しむつもりでいた。
春陽の私室には、ベッドと浴槽、トイレが設置してある。
春陽が横になっていると、ドアをノックして淫魔族のサキュバス侍女達が部屋に入って来た。
背が高いサキュバスもいれば、背が低いサキュバスもいる。胸が大きいサキュバスもいれば、胸がつつましやかなサキュバスもいる。髪の色、目の色も様々である。
「どうしました?」
「魔王様から、夜伽を命じられました。色々なバリエーションがあれば、春陽の好みのサキュバスもいるじゃろうと・・・」
「あ、そういうの間に合ってます」
服を脱ぎかけていたサキュバス達に、
「麻痺魔法で拘束しますよ」
春陽は強い口調で警告する。
「春陽様はそういうSMプレイがお好きなんですか?」
サキュバスが小悪魔的に魅了してくる。春陽は無表情で答える。
「そういうプレイは、大好きですね」
春陽は、寝転がったまま、麻痺魔法でサキュバス達を拘束する。
部屋から出て、リズウェルにサキュバスを回収して貰おうと扉を開けた。
廊下には、リズウェルと二十人のサキュバスが半裸で待機していた・・・。
春陽は呆れた顔でリズウェルを問い詰める。
「リズウェル。何をやっているんですか?」
「ご奉仕?」
目を泳がせるリズウェルに、春陽は頼んでサキュバスを引き上げさせてもらった。
リズウェルを部屋に入れると、春陽は詰問する。
「リズウェル、らしくもない・・・。一体、どうしたんですか?」
リズウェルが顔を火照らせる。
「見つめられると、余は照れるのじゃが・・・」
「それ魔王の正装ですよね?いつもの格好でしょう?」
「これは、勝負下着じゃ」
リズウェルに言わせると、ビキニなら見られてもよいが、下着姿は恥ずかしいらしい。
わけがわからない・・・と春陽は困惑する。
春陽は、ベッドの上の毛布をリズウェルに優しくかける。
「私にわかるように説明をして貰えませんか・・・。どういうことですか?」
「春陽は、元の世界に帰る気はないのか?人間の世界でも高級官僚として活躍していたようじゃし・・・」
そういうことか・・・。春陽は鈍い。恋愛的なことはあまり得意ではない。
「それで、心配になって色仕掛けをしてきたんですか?」
呆れたように春陽に注意され、リズウェルはうなだれる。
「私も仕事がありますから、地球に戻るつもりでいます。しかし、その前に魔王領の立て直しはしますよ」
春陽は言い切る。
「魔族である我々に手を貸してくれるのか?」
「人間の世界で調べてきましたが、リズウェルが言っていることは本当のようですから」
「そうか」
リズウェルは、嬉しそうな顔をすると春陽のベッドに潜り込む。
「一緒には、寝ませんよ」
「昨日は、一緒に寝てくれたではないか」
廊下で待機をしているであろうサキュバスに声をかける。
「リズウェルを回収してください」
サキュバス達は真っ青になる。実力制魔王のリズウェルは最強である。春陽は客分ゆえ、見逃しているが、拳に訴えればリズウェルは春陽を瞬殺できる。春陽もそのことはよくわかっている。しかし、リズウェルのことを信用しているので、まあ、殺されないだろうぐらいにお気楽に考えているのだ。
「魔王様を連れ戻すのは無理です」
サキュバスは春陽に泣きそうな顔で懇願する。
春陽は、サキュバス達に拒否されたので、魔法で無理やり動かすことにした。
「麻痺魔法、空中浮遊。浮くものですね・・・」
「春陽。無礼だぞ。余で魔法の実験をするではない」
ジタバタと宙を泳ぐリズウェルを廊下にいるサキュバスに託すと春陽は部屋の鍵をかけた。
「阿呆。バーカ。バーカ。春陽のバーカ」
子供のように駄々をこねるリズウェルをサキュバス達は運んでいく。
「バカっていう奴が、バカですよ」
「なに?」
リズウェルは、周囲に覇気をまき散らし威嚇する。リズウェルの膨大な魔力で壁にひびが入る。
「リズウェル様、お鎮まりください。春陽様、リズウェル様を刺激するのはやめてください」
リズウェルはサキュバスが部屋まで運んで行ったようであった。
翌朝、少し気まずい顔をしたリズウェルと春陽は一緒に朝食を取ると2人で一角ウサギの養殖牧場に向かった。
「昨日は悪かった」
「あなたでも謝るんですね。私も言い過ぎたと思います。リズウェル、私はね地球に戻ります。だから、この世界にいる人達に情がわかないように冷たく接したいんです」
「うむ。地球は大半なのであろう?」
「あなたが、地球に召喚されたら魔界に帰るでしょう?理屈じゃないんですよ」
養殖牧場に視察に行くと、牧場には、一千羽を超える一角ウサギがいた。
「昨日の数十倍に一角ウサギが増えています。魔力を与えれば、繁殖速度や成長速度が増すんですよ。他の魔獣でも実験してみましょう」
嬉しそうに春陽は、リズウェルに報告する。
「リズウェル、私がやっていることはこの世界の破壊でもあるんです。一角ウサギを大量に増やしたり、ゴーレムに作業をさせている。ひょっとしたら、リズウェル達魔族は滅ばなければいけない運命だったのかもしれません。それを捻じ曲げている。あまり、よいことではないんですよ」
「余は、春陽に感謝しておるぞ」
「こういう技術革新とか、魔術や科学、政治システムはリズウェル達が進化させないといけないんです・・」
「そういうものなのか?」
「ええ」
作業用ゴーレム達は、牧場の柵の拡充工事を行っている。数百万羽くらいなら飼育できそうである。
それから、2人は、工房地区の視察に向かう。
「春陽様の設計図通りにゴーレムを作りましたが・・・」
魔導士に、車輪状のものに鉄製の鍬やスキをつけた耕作用のゴーレムの設計図を渡しておいた。
「AI搭載のロボットで農業をやらせているようなものか」
春陽が呟く。
「どうしたのじゃ」
「聞こえましたか?気にしないでください。独り言です」




