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第十四話

 川沿いの広場には、朝日が差し込み、淡い金色の光が石畳を染める。

 ルシアは胸元の光を抱え、歩幅を揃えて前に進む。

 周囲の空気は静かで、しかしどこか張りつめた重さが漂っていた。

 神界――アウレアの干渉が、確実に現実に影響しているのを感じる。

 「……ルシア、気をつけて」

 隣に立つミカの声は低く、真剣さを帯びている。

 肩までの茶色い髪が朝日に輝き、瞳は光に映り込む。

 小さな手を前に出すが、光に触れることはせず、ただ見守る。

 ルシアは微かにうなずく。

 胸の奥で痛みと覚悟が絡み合う。

 光は手の中で揺れ、守らなければ消えてしまう。

 握れば痛い。手を離すことはできない。

 川向こうに、ヴァルの影。

 動かず、距離を保ち、視線だけで二人を見守る。

 声はない。存在感だけで空気を張りつめさせる。

 光が手の中で強く震えた。

 神界の圧がさらに強く届く。

 冷たく理屈のない力が、世界の端から押し付けられる。

 ルシアは息を整え、手を閉じて光を抱え続ける。

 胸の奥で痛みが燃え、全身に力が走る。

 それでも、手を離すことはできない。

 ミカは一歩前に出る。

 触れず、視線だけで光を追う。

 恐怖はない。信頼と共感が瞳に宿る。

 「……私もいる」

 短い言葉だが、力強さがある。

 ルシアは振り返らずうなずく。

 二人の決意が光を通して、世界に伝わる。

 光が胸の中で輝きを増すと、広場全体に淡い光が広がった。

 空気が震え、木々の影が揺れる。

 村の遠くで、小さな物音が動いた。

 ――光の影響が、現実に届いたのだ。

 ヴァルは影のまま、一歩も動かず見守る。

 距離と視線だけで、二人の行動を確認している。

 世界は、まだ途中で止まったまま。

 けれど、少しずつ前に動き始めている。

 ルシアとミカは歩みを止めない。

 胸の奥で痛みと覚悟が絡み合い、互いの存在を確かめながら前に進む。

 今日、ここから、光と祈りの力が世界を変え始める。

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