第十三話
川沿いの草むらを抜けた先に、小さな広場があった。
ルシアは胸元の光を抱え、足を止めた。
空気が静まり返り、風も止まったように感じる。
神界――アウレアの圧力が、目に見えるかのように押し寄せていた。
「……ここで止まるの?」
ミカが小さく声をかける。
肩までの茶色い髪が揺れ、瞳は光に映る。
表情は真剣そのもの。恐れはないが、覚悟の色が濃い。
ルシアは胸元の光を握り直す。
手を緩めれば消えてしまう。握れば胸が焼けるように痛い。
光を守ることしかできない。
でも、もう後戻りはできなかった。
川向こうにヴァルの影。
静かに、距離を保ちながら見守る。
言葉はなく、ただその存在だけで緊張が増す。
光が突然、手の中で強く震えた。
神界の圧が直接届いたのだ。
冷たく、理屈のない力が世界の端から押し付ける。
ルシアは息を整え、光を胸に抱え、踏み出す。
痛みが胸を焼く。
けれど守る。手を離すわけにはいかない。
ミカは一歩前に出る。
触れず、視線で光を追うだけだ。
恐怖はない。共感と信頼がその目に宿る。
「……私も手伝う」
小さな声。だが力強さがある。
ルシアは振り向かず、うなずく。
二人の決意が、光を通して世界に伝わる。
光が胸の中でさらに強く輝き、広場に淡い光を投げかける。
空気が震え、木々の影が揺れる。
光と祈りが、初めて外界に影響を及ぼす瞬間だった。
ヴァルは影のまま、一歩も動かない。
距離と視線だけで、二人の行動を見守り、世界の変化を確かめているかのようだ。
ルシアとミカは、互いの存在を確かめながら歩みを進める。
一歩ごとに、世界が少しずつ変わっていくのを感じる。
胸の奥で、痛みと覚悟が絡み合い、確かな手応えを抱いた瞬間だった。




