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境鳥村立中学および小学校

野咲ミク 中学担任

相原リョウコ 小学担任

霧山ユリ 中2

藤アラシ 中2

藤タイスケ 中2

星ホクト 中1

霧山アン 小6

藤サクラ 小5

星ミナミ 小4

天城マヤ 小2

射手ヒロ 小1


「ほーくーとーくーん。あーそーぼー。」

連休明けの火曜日。夏休み最初の平日。

朝食後に割烹着を着て作業したホクトは

祖父から「仕事はいいから課題を済ませろ」と言われ

返事こそしたものの問題集は全て終わった。

残りは読書感想文、ポスター又は写生画、それから部活動報告。

ダムへ行って絵でも描こうかと準備をしていると霧山ユリの声。

妹ミナミが出迎えると

「どうしてラヂオ体操をバックレた。」

「なにそれ。」

「平日の朝はラヂオ体操あるから。小学生は全員出席。強制です。」

「え?ヤなんだけど。」

「朝6時学校の校庭集合ね。」

「はえーし。」

「明日から来なさい。スタンプたまると駄菓子詰め合わせあるから。」

「駄菓子で釣られると?」

「うん。それでホクト君います?」

「デートですか?」

「まあそうかな。」

「ホクトのどこがいいんです?」

霧山ユリが答えよう口を開いたところでホクト登場。

聞いていて現れたんじゃあないかと疑うミナミ。

「さあ部活をしようか。ミナミちゃんも来るでしょ。」

「どうして行く前提に。サクラちゃんと課題するから無理かな。」

「仕方ないな。ホクト、帽子と水筒は?」

ホクトは黙って引き返し支度。

「出掛ける予定だったんかな。」

「絵の道具出していたら課題するつもりだったんじゃないかなぁ。」」

「ああ、じゃあ」

霧山ユリは玄関で奥に向かって

「絵の道具も持ってきてー。」

「私も持ってくれば良かった。」

「私の貸しますよ。」


八手ダム管理棟に到着。観光客の姿はない。

「夏休みっても平日だから。」

霧山ユリは当然のように言うが

ホクトはいまいち納得しきれていない。

ダム施設を一通りぐるりと見て回りながら

あーでもないこーでもないと場所決めに悩むものの

結局冷房の効いた館内の展望室に落ち着いた。

筆洗い用の水をトイレで汲み、画板を首からかけて開始。

「課題終わったら他ももスケッチもしておきましょう。」

「他?」

「ここからなら温泉街の地形とか見えるから。」

部活の話か。課題終わらせるのに数日ここに通う事になりそうだけどと

隣を見ると霧山ユリは絵筆を手にしている。

もう下書き終わったのかと見ると鉛筆の線はない。

視線に気付いた霧山ユリは

「どうした?」

「下書きは?」

「描いたよ?」

「え?」

「え?」

よくよく見ると薄っすらと数本の線があるが

それが何処の何なのかは判らない。

ホクトは構図を決めて

水平線を描きパースまで引いて

湖と陸を鉛筆で距離を測りながら薄くアタリをつけ、

その後対象の輪郭をしっかりと鉛筆で描く。

今日中に下書きは終わらないだろう事も承知している。

霧山ユリの画用紙には

下3分の2あてりに「かろうじて」水平線。

両端に同じく「かろうじて」丘らしき線。

平筆を水に浸け、絵具を付けず、上3分の2に水を塗る。

青色の絵具を少し筆に取り、濡れた部分に落とすと

じわっと青が広がる。

色を確かめながら空を描く。

随分と空が多いな。と思っていると

ユリはティッシュペーパーを丸めて青を抜くように叩く。

白く抜けた内側に空より少しくらい青を乗せると見事な入道雲が現れた。

同じように湖を描くのだが

青だけではなく、緑や茶を使って岸辺付近を塗る。

ホクトは手を止めそれに見入ってしまう。

湖面に反射した山や木々を描いているのだろう。

その山や木々を先に描かないのはきっとまだ空が乾いていないからだ。

ユリは画用紙を少し離して見ながら

「まあこんなもんか。」

筆を置いて乾くのを待つ。

ホクトは慌てて自分の作業に戻るが

「スケッチブック借りるよ。」

ユリはホクトに持ってこさせたスケッチブックを持って

展望室から見える四方の景色を描き始める。

ホクトは気になって仕方ない。

持っているのは鉛筆かな。

手元と景色を交互に見ながら素早く手が動く。

10分ほどでその手を止め課題に戻るので

ホクトも度々手を止めユリの作業を見学。

下書きもなく色を乗せる描き方にも驚いたのだが

何より一本の平筆だけでそれをしている事に驚いた。

空や湖は広く塗るので平筆を使っているだけと思っていたが

丘は筆を横に、木々や草は角を使って器用に描く。

簡単に、雑に描いているように見えたが

至って丁寧に、極めて繊細に描いている。

強い青空に光と影を纏った大きな雲。

夏の山の深くて濃い緑。

風を滑らせる湖面。

「凄い。ちょっと感動してます。」

「大袈裟。」

「その描き方って学校で教わったの?」

「いいや。シバサキさんの動画見て。」

誰?


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