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龍族との繋がり

 タケミカヅチから火急の要件という事で連絡を受け、僕はセンテン高地にある龍の居城へ向かった。ブラックナイト号の最高速度で飛ばしたので、通常6時間くらいの所を30分で到着。……なんか、上の城が魔改造されてるんだけど。こんなに大きな城だったか? いいとこちょっと豪華な要塞だと思ってたんだけどさ~……。まぁいいや。

 とりあえず、メイドゴーレムの手旗が見えたので、断崖絶壁に開かれている大きな門へブラックナイト号ごと突入。

 メイドゴーレムにブラックナイト号を預け……、僕はメイドゴーレム長のアニーに案内されて龍の居城の大ホールに入る。すると、そこだけ世界が違った。古めかしい舞踏会とでも言おうか……。違和感としては男性が一人もいないし、会話の内容から察するに年齢層もマダムだと思う。しかもここに来ているとなると、そういうマダムの集団だ。この龍の居城の料理は各迷宮で考案された料理をメイドゴーレムが学習しているので、とても美味い。まさかこの料理食いたさにマダムが集まってるなんてことないよな?

 僕はその中で派手な真紅のイブニングドレスを纏っているテュポーンを発見。

 一瞬だけこちらに視線を向けたテュポーンの表情は『安堵』だった。もう面倒ごとの臭いしかしない。そこに人化したタケミカヅチが来た。僕と比べても同年代の子供が話しているようにしか見えないから、マダムもまだ様子見の状態だが、タケミカヅチに手を引かれて一段高い場所に連れていかれる。


「え~……こほん。本日お出でくださいましたご婦人の皆様、この方が我が父、クロ様です。先ほど父よりある程度の繋ぎに関してお話を頂きまして、それについて私の方からお話をさせていただきます」


 うん。ここは話を合わせておくべきか。僕はそのままタケミカヅチに問われることに対し、注釈を入れることを続ける。マダム達も押しかけていることは理解しているので、少しこちらがバタついても納得してくれる。質問もちょいちょい来るが、今のところは迷宮に観光に来たいという点以外は問われない。いつ嫁入り話の口火が切られるかは解らないが、今のところは問題はないと思う。

 小声で話してくれるタケミカヅチの話だと、ここに居るマダムはまだ結婚適齢でない子供を抱える中堅どころのマダムとのこと。年齢層も1000歳から3000歳で若い方。まだまだ流行に耳ざとく、こういう事に敏感なお年頃なんだとか。立場も比較的軽く、遊ぶ余裕のある若い母世代と言うことね。セリアナさんくらいの感覚なんだろうか? そういう事でいいらしい。

 そのマダム達からせっつかれて、テュポーンも受け止めきれずに今日の昼食会が開かれた。その最中に僕に中継ぎを頼まれ、どうしようもなく折れたとのこと。僕が仕事中なら遠慮したが、帰って来ていたので……。それは仕方ない。それにこういうご婦人方を敵には回せない。けれど、こちらにも言っておかなくちゃいけないことがある。


「それではここからは細かいことになるかもしれませんが、多少のお願いがございます」


 僕が口を開くと、別の意味でマダム達が沸き立つ。僕が可愛いというのは構わないけど、飛びついて来ないで欲しい。

 僕からのお願いは大雑把に言えば、『龍族は恐れられている種族』ということ。僕や眷属はこの迷宮では周知されているが、いきなり龍を呼ぶと言っても受け入れられるかは微妙だ。人間という龍にとって矮小な種族は龍族が考えるよりも敏感で驚きやすい。そしてデリケートでもある。それから、僕の妻の数人が既に身篭っていて、あまり刺激したくないことも包み隠さず伝える。……特にツェーヴェについて。タケミカヅチに聞いたけど、ツェーヴェは龍族の中でも異端児で狂犬扱い。そのツェーヴェの存在は言うまでもなく抑止力になる。マダム達も少し表情を硬くしたが、ツェーヴェは言う程危険でも好戦的でもない。それに余程の事が無ければ僕が抑えると伝えた。

 その段階でマダム達には安堵の表情が出る。

 僕はそこを畳みかけて問題になりそうなことを上げておく。『龍族同士の喧嘩』。殴り合いとかではなくとも、龍の垂れ流す魔素は人にはかなり濃い。つまり影響大。『飲酒した時の人化解除』。時折ヴュッカがやらかしていたのだけど、術練度の甘い個体が飲酒だったりで油断すると解除されることがある。ツェーヴェは一度も見たことはないけど。あとは『爆買い』と『ドカ食い』。マダムに言うのは間違いかもしれないが、種族の差異は気にしていてしかるべきだ。種族差での食事量は本当に大きな差なのだよ。マダム達は僕の淀みない言葉に最初は気圧されていたけど、今ではメモを取っている。それだけ約束できればここの美味しい料理が食べに来れる訳だからね。


「あ、あの、いくつかよろしくて?」

「はい。どうぞ」

「まずは対価のお話です。私共の持つ硬貨は、年代がバラバラで価値もバラバラです。その辺りはどうされますか?」

「それでしたら鱗や生え代わりの牙などでも問題ありません。少しお時間はいただきたいですが、レートを考えておきます。同時に硬貨についても並行してレートを決めます」

「ありがとうございます。それとですね? 私、実は水龍なのです。ここに来るまでに少々面倒な点がありまして」

「アルジャレド通商連合国の近海に大きな海底洞窟があることはご存じですか?」

「えぇ、あそこは魔境の出入り口ですから」

「あそこもうちの迷宮の1つに繋がっています。水龍や海龍の皆様はそちらからでも問題ないです。その周辺には我が領所属のスキュラや人魚、水精霊が居ますから」


 それからも細かい質問を受ける。僕が気になったのはこれくらいかな?

 ・これから龍族を受け入れる気はあるかどうか。

 ・龍族専用の宿泊施設などを用意できるか。

 ・龍族との交易は考えているか。

 ・ここの料理の知識を外に出すならばどれ程の対価が吊りあうか。

 この四点が僕の考えうる中でも大きな問題だ。他にも託児所が欲しいとか、龍族の為の交通網をここにも整備して欲しいだとかもあったがその辺りは種族差などもある。さっきの水龍さんのように簡単に解決する種族も居れば、簡単に解決しない種族も居るのでこちらが手を出すのは控えた。また、ここに対応して言うとどちらにしろ時間がかかることが明白なので、明確な回答は避けた。それからこれからこういったやり取りはタケミカヅチの妻テュポーンではなく、僕の妻のヴュッカに任せることにする。ヴュッカは暇ではないが、観光産業の監督をしている。この辺りは彼女の管轄なんだよね。

 明確な回答は僕の妻であり、ここの領主……いや、もう国王でもいいエリアナとの相談も必要だ。人間種ではなく、今回の相手は龍種なんでね。簡単に僕1人で答えられない。

 他の種族もビビり散らすだろうし、少しの間は根回しが必要になるだろうことも目に見えている。僕は要件が終わったのでマダム達から挨拶を受けて鱗を一枚ずつもらう。これが知性の高い龍の挨拶のような物らしい。……僕も渡す必要ある?


「とーちゃんはいいぜ。というか、とーちゃんは気づいてないだろうけど、龍の中じゃトップクラスでヤバい存在なんだ。ここに来てるご婦人からすると、とーちゃんとの繋ぎは名誉でもある。とーちゃんから施すとご婦人方が返せねーからな」


 ご婦人方がうんうん頷く。認識の齟齬が凄い。ツェーヴェなんかは僕を恐れることはなかったし、娘や息子は完全に懐いてくれる可愛い存在だ。……いや、覚えがあるな。最初の方はヴュッカとのやり取りにそういう感じの所があった気がする。マダム達から鱗を受け取り終わったので、僕もパフォーマンスを兼ねて、爬虫類姿になる。かなり驚かれたが、体から出る魔素の量を敏感に感じ取れるマダム達は息を飲んでいる。

 見た目は小さい蜥蜴なんだけどね。人種は鈍いが獣人や龍などの野生下での生存が関係している種族だと僕は過剰に恐れられる。マダム達も中には跪こうとしたのをテュポーンに止められているのを視界の端に見つけた。テュポーンはこういう所に気遣いができる。付き合いこそあまり長くはないが、テュポーンは人を見ていると思う。僕が過剰に崇められることを嫌う事や、異常に執着されたりすることを嫌うのも彼女はよく理解しているのだろうね。中にはタケミカヅチの性格からの推察もあるんだろうけど、これができるからタケミカヅチに妻として認めさせたと言えるだろう。

 僕もタケミカヅチも押し付けは嫌うからね。どうしても仕方ない場合は除くんだろうけど、タケミカヅチもあまり強く主張しない。それは縄張りのことや周辺の龍族への挨拶など。彼のマメさからも見て取れる。


 ~=~


 それから僕はエリアナに話さねばならないので、途中でヴュッカを拾ってエリアナの執務室で話した。タケミカヅチやテュポーンの奮闘に顔をほころばせながらも、少し表情は重い。今や狼獣人の力を得たエリアナだが、それでも人だった時の考え方は抜けてない。龍というのは御伽噺の存在だ。地竜や飛竜などの頂上生物ならばまだ解るが、さらにその上の古龍種からもコンタクトがありそうな感じと来た。

 確かに北東領域の保守と龍族であるが故にその交渉窓口となるだろうタケミカヅチでも、あまりにもことが大きい。里長や族長ともなると、人間でいう国王が相手をせねばならない存在。僕という加護はあれども古龍ともなればあまりにも大きすぎる。

 それが話を聞けば観光がしたいだの料理がおいしいだの……。

 普通に俗世に溶け込んでいることにかなり驚いている。まさにカルチャーショック。これはエリアナに言うべきかは迷ったんだけど、この周辺にはツェーヴェが居るからいないだけで、場所によっては普通に人化した龍が隠蔽して街を歩いていることもあるらしい。龍は以外とミーハーなのだ。流行に耳ざとい龍のご婦人方は常に暇を持て余しているとのことで、こういう新たな娯楽を生み出し続ける土地は注目の的なのである。……ツェーヴェという存在が居るから、ある意味守られていたんだよね。ここ。


~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後130日~135日

主人 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長9.5㎝

取得称号

~省略~


取得スキル

~省略~


 ~=~

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