古龍達との繋がり
昨日に火急の要件で呼び出されたと思えば、今度はタケミカヅチ自身が迎えに来た。もうその表情から解る。もっと大きな面倒ごとになったんでしょ? 昨日はいろいろ便宜を図ってもらったので、エリアナと添い寝。一緒に寝るだけだけど。平和な夜だった。たまにはいいかも。
そのエリアナも必要とのことで、エリアナにも正式なフォーマルドレスを着てもらい。……ツェーヴェも伴ってブラックナイト号を全速力で駆る。飛ぶこと30分。さすがのエリアナでもこの速度はつらかったようだ。かなり強めの防護魔法をかけてあるんだけど……。まぁいいや。エリアナが復活したので、左右にエリアナとツェーヴェを伴って昨日の大ホールだけど、全く違う歓待形式の中で一礼。
大ホールの真ん中には数名の強い氣を放つ男女が席から立ち上がり、こちらに各々の礼を取る。
どう考えても昨日言っていた古龍のご歴々だ。氣の大きさからして皆さん若々しいが、目の前の古龍集団は若くとも5000歳は超えている存在だと思う。特に強い氣を放つのは円卓の位置としてこちら向きに顔が見える……凄い奇抜なドレスの女性。胸は控えめだけど、へそ見えてるし尻ギリギリまでのスリットなんてやりすぎでしょ……。まぁ、口にはしない。この円卓も上座下座の概念をなくすための処置だし。ここでは皆が当列。今日は単なる会食の扱いなんだろう。押しかけてきているのはまたも相手だし。
「遅くなりまして申し訳ありません。僕がタケミカヅチの父、クロです。こちらが僕の妻のエリアナとツェーヴェです」
エリアナの時も一瞬空気が揺れたが、ツェーヴェの時はまた違う空気の揺れを感じた。一部は恐れ、一部は挑発、一部は……僕から目を離さない。
僕らが席に案内されると、メイドゴーレム達が一斉に椅子を引き、着席を促す。今回のタケミカヅチは場所の提供役に徹するようでこの場には居ない。メイドゴーレムから食前酒と、ジュースが提供される。僕とエリアナは飲めないし、ツェーヴェは妊娠してからは大好きな酒類も控えていたしね。ここからは左右の古龍さんが何らかのサインを出し合い、右回りで自己紹介と種族の交友を求める挨拶が始まる。
最初の龍は鶯色の髪をたなびかせる中性的な男性。小柄ではあるが凄く威圧感のある男性だ。風龍族の長でベルトールさん。かなりタケミカヅチに心酔している。嵐龍のタケミカヅチは新参と言えども目上なんだという。
次が紺碧の引きずる程長い髪を派手に飾り付けている、ツェーヴェ並にメリハリきいたグラマラス美女。伝説の古龍でリヴァイアサンさんとのこと。ちなみにこの名前は受け継がれたもので、固有の名前はメリアさんという。ツェーヴェをすっごい睨んでる。ライバル視してるね。
三人目は先の2人とは違いかなりごつい男性。胸板も厚く、鍛え抜かれた肉体は主張しているがかなり寡黙な印象。この人は大地の守護龍でアースさん。めっちゃ僕を見て来るのはこの人。僕に何があるのか解らないが、見極められてる感じはある。
「でも、このメンツが揃うのも久しぶりなんじゃない?」
「そうじゃのう。まぁ、黒龍が欠けておるが……。それもその内変わるのかもしれんな。のう、クロ殿」
「ははは、僕はただの黒い蜥蜴です」
「謙遜するでない。若人よ。貴殿の力は我々古龍の中でも群を抜いておる」
挨拶をしたメンバーから好き勝手にはなしだしたけど、ちゃんとアースさんが区切りをつけてお隣の男性に目配せする。
この人も結構ごつい。片目に眼帯を付けているがたいのいいおっちゃんって感じ。五分刈りの髪に掘りの深い顔つき、割れ顎。歴戦の兵感が匂い立つ。自己紹介も豪快で喧嘩腰なこの人は焔龍ヴォルカニアスさん。
その隣には好々爺然としたご老人。どう考えてもこの中で最高齢だと思う。このお爺さんは時空龍という特殊な種族で世界に数頭しかいない古龍の中でも数段希少な種族の代表。名をガトールさん。
最後の女性が最初に言った派手な女性。ドレスのチョイスが凄くアレなんだけど、性格はなんというかスルトに近い。興味のある物に一直線で、自己紹介も口に料理を突っ込んだまましてくれた。名前は煌龍ジュネさん。
今回はこの六人しかいないが他にも古龍は居る。いろいろ理由があって今回はここに居る6人が代表して来てくれたとのこと。ちゃんと押しかけて来たことを理解しているのか、手土産も凄く豪華だったらしい。そのお礼も兼ねていいお酒を開けることにする。この領地は最近できたから若いお酒しかないが、このお酒は米から作られた薫り高いお酒だ。ヴュッカが好きでよく呑まれてべろんべろんになっている。まぁ、お酒の好みはいろいろだから、このお酒よりもハーマさんが好きな火酒のようなお酒を好んだ人も居る。
ちなみにこの蒸留酒はアースさんとガトールさん、メリアさんに好まれたのでお土産に包んでおく。その他の方はヴォルカニアスさんは火酒をいたく気に入り、料理よりもそっちを好んで飲んでいる。ベルトールさんはどちらかと言うとブドウのお酒を好んだ。特に渋みが少ない白を。驚いたのはジュネさん。この人はお酒はお気に召さず、エリアナと僕の飲んでいたジュースを見つめていたので出した。柑橘系の果物ジュースと、ジオゼルグ謹製の南国ミックスフルーツジュース。後者を飲んだ瞬間の晴れやかな笑顔は凄かった。
「やれやれ、娘っ子共が我らの許可もなく新勢力と繋ぎを持つから何事かと思ったが……。これならばその理由も頷けようて」
「しかり、供される品、尽く美味。良き御酒、美しき城……まっことあっぱれ」
「あぁ、これなら俺も何も言うこた~ねーよ。わけーのを取り込んで悪だくみするようなヤツにも見えねーしな」
さすがに族長であり、古龍の代表だ。食事中でも僕やエリアナ、ツェーヴェの観察を忘れてない。……いや、お一人は料理にパクついてるけど。というかどんだけ食うんだよこの人? いや、龍?
まぁ美味そうに食ってるから良いけど。
周りの族長も苦笑いだし。まぁ、円満にことが終わって安心だ。それに結局これは圧力もあったのだ。族長達は昨日来たマダム達が観光に行く先を拡大して欲しい。……という圧力で話し合いをしたという。女性の力は強い。それに龍は男尊女卑や女尊男卑は無いのだ。力こそ全てであるが故に男であろうが女であろうが強ければ高い身分に伸し上がれる。それでも女性の集団の意見はやはり強いのだろう。
おそらく、僕の斜め左にいらっしゃる派手なドレスの人もそっち側なんだと思う。
ここからは警戒感などは特になく、一部のお方の視線はとある場所に向いていたが、それ以外は特に変化もない。和やかな食事会は進み、最後にリヴァイアサンのメリアさんが爆弾発言を投下した。お酒が好きな割にお酒にはそれほど強くないらしい。煽りまくるツェーヴェに乗せられて度数のきつい酒をガバガバ行くからね。もともと派手な衣装が開けてきている。そろそろ冷や水タイムだと思う。
メリアさんの娘の1人をタケミカヅチへ嫁がせたいと、かなり前から言っていたらしい。……いやいや待て待て、確か昨日のマダムが1000歳から3000歳。そのご婦人方の娘がまだ結婚適齢前なんでしょ? このメリアさんには実の娘が10数人いるらしい……まさか一万超えってこの人? ちょっと悪寒がする。このことは心に秘めておこう。
「のうのう~、以前から申しておるのじゃが~……。そろそろ結論をもらえると嬉しいのじゃが~?」
「その件に僕は関知していませんので……。僕はタケミカヅチの判断と、正妻のテュポーンの立場を守ってくれさえすれば何も口出ししません。あとは、本人達とご相談ください」
これが皮切りに、僕にも飛び火した。最初に挙手したのはアースさん。僕へ是非娘を嫁がせたいという。お見合いだけでもどうか? とのこと。それに関してエリアナにまで許可を取ってしまって、お見合いは完全に決定事項。その上に完全にこの展開に被せることを狙っていた人が、仰々しく口を開く。先ほどまでの好々爺のような雰囲気ではなく、百戦錬磨の長老は目を光らせる。怖い。ガトール翁からは3人候補が居るという。その全員を連れて来るのでお見合いだけでも。……と言われる。
この際何も口にしなかったが、どう考えてもタケミカヅチにこの後個人的に突撃することを決めている人物がいる。見た目通りこの人は古龍としては若いようで、ちょっと経験不足かな? でも、タケミカヅチにはこういう直接攻撃の方が効果はあるかも。テュポーンも僕の発言には深々と頷いていたし。テュポーンは重婚を嫌がってはいない。僕と言う前例があるので、タケミカヅチがモテることは前提だったのかもしれないけど。
そして、最後だけ波乱に満ちた古龍達との会食は、特に大きな問題もなく終了。
僕としては最初から最後まで政治的な話をツェーヴェがしなかったのは意外だけど。それに関してエリアナが問うていたので、僕が改めて問う必要もなかったし、それに関しては触れなかった。タケミカヅチとメリアさんの娘の婚姻に関しては、僕の関知するところではない。『立場を守る妻』であるならば問題ない。……というスタンスさえあればツェーヴェとしても特に問題ないと言う。
これから作られていく国の王族としては、モデルケースとなる僕らな訳だけども。そのスタンスとして僕は100点満点の答えをくれた。僕は妻を依怙贔屓しない。状況に応じてという枕言葉は必要になるが、子供も妻も仲間も平等に接する。それが今の僕の立ち位置、象徴としてはとても好ましいのだ。
「ですけどね? さっきから僕を抱きしめてるのはいいですけど……。ジュネさん? お帰りにならないのですか?」
「えッ? 私は帰らない。ここに住む」
「タケミカヅチの嫁候補ってことですか?」
「違う。クロの妻として。妻を平等にしてくれるなら、私も立候補」
亜然としている僕をよそに、エリアナとツェーヴェに挨拶のような行動をとる古龍の女性。魔人ではあるが、位階が上昇しているツェーヴェも古龍に類するのか? まぁ、今はそんなことを考えている暇ではない。何とかして彼女を抑えなくては……。これ以上の妻増加フラグは困る。
~=~
・成長記録→経過
クロ
オス 生後130日~135日
主人 エリアナ・ファンテール
身長130㎝
全長17㎝……身長9.5㎝
取得称号
~省略~
取得スキル
~省略~
~=~
〇古龍族代表出席者〇
ベルトール
オス 5000歳程
身長160㎝
風龍族
古龍の家系風龍の当代当主。卓越した魔導師として人間の中で有名だがその正体は古龍族の一派。争いを嫌い、縄張りの維持と人間社会の均衡維持を果たしている。まだ若い古龍で姉さん女房のカルディーナに尻に敷かれているお小遣い制のお父さん。娘を溺愛し、風龍の上位系となる嵐龍のタケミカヅチに心酔。娘をどうにか送り込もうと画策中。
メリア=リヴァイアサン
メス 18000歳後半
身長160㎝
神代龍族派生リヴァイアサン族
今回の家系では最も古い家系の長。代々がリヴァイアサンの名を襲名する神代龍族の血筋。豪放磊落で細かいことを気にしないが煽られやすく、短気。本気で怒ることは珍しいが……。他に対するライバル心が強く、向上心も高い。娘を溺愛している。現在は未亡人状態で死別した夫は3人。娘は30人超。超絶倫で絶賛旦那募集中の現役マダム。
アース
オス 10000歳程
身長190㎝
守護龍族→地母神ガイア
神代龍族に次いで古い龍族の長。守護龍族として土地を守ることを定めとしている。武人気質でお堅いところはあるが、戦闘には否定的で何事も穏健にことを運ぶ智将としても有名な龍。そろそろ息子に守護の任を委譲することと子供の進路を悩む真面目なお父さん。良いところにクロを発見。手堅く包囲網を固めている最中。
ヴォルカニアス
オス 10000歳程
身長185㎝
焔龍族
代々を決まった火山に住まう古龍族の大御所。武闘派で喧嘩腰な態度から解るように肉体言語での語り合いを好む。ことと次第によっては血を流す争いも考える龍族としては過激派。また、兄貴肌で部下思いという一面もあり、一概には言えない奥の深いおっさん。娘が口をきいてくれなくてしょげているちょっと情けないお父さん。奥さんは怖い。
ガトール
オス 6000歳後半
身長170㎝
時空龍族
魔法龍と呼ばれる魔人から派生した特殊派生型の龍族。その力は強く、個体数こそ少ないが神代龍族とすら正面から打ち合える。老獪と思わせてはいるがこれも一種の擬態で彼の本当の姿は奥さんしか知らないと言われている。戦闘は好まない気質で基本的には口や遊戯で負かすタイプ。賭けで負けたことはない。娘が三人いるらしい。
ジュネ
メス 12000歳後半
身長180㎝
神代龍族派生煌龍族
一見はエルフのようなスレンダー高身長の不思議ちゃん系美女。なお大食い。濃淡の少ない表情から何を考えているか解り難いところがある。お酒よりも食事。食事につられてこの会議に出席する権利を勝ち取った程の食い意地。煌龍族の当主を長らくやっており、周囲から早く結婚しろとうるさく言われる行き遅れ気味な女性。クロに目を付けた。




