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獣人国のその後

 獣人国での問題はまだ解決していないが、ヨルムンガンドとジオゼルグ曰く続々と避難している住民意外はお先真っ暗で国中で騒がしかったり沈み込んだりと忙しいようだ。まず、排他的とまではいかないが、通商が可能な国家がアルジャレド通商連合国以外にない現状は食料面と金属製品、何よりも塩の面で絶望的とのこと。

 ヨルムンガンドがケイラより事前に情報を得ていた分だけ手際がよく、既に塩は値段が急騰しており一般層まで手が出ないとのこと。グランデール獣人国の周囲はヨルムンガンドの縄張りと、ジオゼルグの縄張り以外にも二つの魔境と隣接し囲まれている。その為資源確保の面が難航している。これまでも獣人だったが故に生き残れて来ただけで、とても過酷なところに住んでいたのだ。その食料を支えていた周辺の魔境ではない森が、一斉に枯死を始めたともヨルムンガンドが言う。

 これはヨルムンガンドの権能は関係ない。まずヨルムンガンドの権能で枯らすことはできるが芽吹かせるよりハイコストであまり使い勝手のよい物でもないとのこと。どうしても邪魔な大木を除ける時くらいにしか使わない。この枯死の原因は既に解っており、グランデール王宮地下にあった迷宮核が無くなったことで、迷宮として維持が行われなくなったことだ。迷宮は生物がその中に居ればそれだけ維持に必要なポイントを得られる。そういう意味では国というのは最高の効率を持てる迷宮の到達点と言えるだろう。ま、迷宮核を壊そうとする存在が居なくはないから、それなりのリスクはあるのだろうけど。


「それの関係でまた僕とジオの魔境に冒険者が来てる。今度は倍以上。でも、僕達も今度は誘導する意味もないから完全に排除の姿勢でいる。現実が見えてる獣人はアルジャレド方面を経由して国外へ出てる。もしくはケイラやセラが信用する獣人がここに来てるくらいだね」


 無表情にヨルムンガンドがお茶を飲む。この子、襟草のお茶好きだね。

 ヨルムンガンドはお茶請けの漬物を摘まんでポリポリした後、もう一度続ける。アルジャレド通商連合国方面から出る獣人は逃がしているけど、密輸や商人が塩を持ち込もうとした場合は蛇のゴーレムで威嚇し、出入国させてないという。もう獣人国はほとんど機能がダウンしていて、そろそろ音を上げて何かしらの動きがあるだろうともう一度お茶を飲む。

 ジオゼルグの事もあるので砂漠側への特攻は無いと思われる。その代わりに威嚇とゴーレムの数を絞っているからか、アルジャレド側の渓谷を強行軍で抜ける集団は出そうだ。

 それでもヨルムンガンドもジオゼルグも、軍務派閥と財務派閥を何もせずに逃がす気はない。散々魔境を荒らし、いろいろ犯罪の証拠隠滅とかにも使われて怒りはもう頂点まで来ている。……自分の庭を荒らされたわけだもんね。そりゃ怒るよ。他の無関係ではあるけど情勢の見れない獣人はその内ことが急転した後に道を解放するから問題ないだろう。……とヨルムンガンド。この子も容赦ないね。自然環境だと周囲の事情を理解できない個体は死んで行く。彼女からすると当たり前なんだけど。そこは僕も理解できる。


「正直、僕らは必ず愚図を守ってやる必要はない。ケイラやセラにお願いされなければここからは助ける気はないね」

「それもそうだね。温情ををかけるにしても限界はある。ファンテール王国もセリアナさんの存在が無ければ僕も助ける気はなかったし」

「そうそう。助けられて当たり前っていう甘ったれはいらない。僕らも万能ではないから」


 ヨルムンガンドがこの世の真理みたいなことを呟いてお茶を飲む。そして漬物をポリポリ……。

 ヨルムンガンドからの聞き取りは終わった。ヨルムンガンドの縄張りの中の掃除も終わったという。彼女に逆らう魔物は全て駆逐し、荒ぶることのない従順な魔物は生かす。そう言うスタンスでヨルムンガンドはやっている。それは周辺の人族や獣人でも同じらしい。節度を持ち、取り過ぎず、山を大切にする者は生かす。山の恵みを無限と勘違いして我が物顔で採り攫うような者には死を。山の声を聴くことができるヨルムンガンドはまさに山守。山の代弁者のようだ。


 ~=~


 これからジオゼルグの縄張りにも行くと言うと、大きなリュックと採集道具を担いだヨルムンガンドがついて来た。だんだん馴染んできただろうブラックナイト号にまたがり、空からククルカルナ大砂漠の中心からやや南西寄りに飛んでいく。ブラックナイト号ならあっという間だ。もう見えて来た。

 ジオゼルグの城郭型ダンジョンに到着。

 ジオゼルグの眷属となった少女の1人が白と赤の手旗で誘導してくれる。ここに着地しろという事だろう。そこを旋回すると、やはりそこに着地して欲しいとのことだった。ジオゼルグの縄張りの居住地に獣人の少女を中心にした幼い子供が増えていた。今度はグランデールからも受け入れているようだ。砂漠との境目にたどり着いても逃げられない。絶望に暮れているところをざっと100名以上は連れて来たそうだ。最近では古参と言うにはまだ皆ここに来たばかりだが、眷属化されている子は砂漠でも迷わない。その子達を中心に捜索隊を結成しているとのこと。

 ジオゼルグの話では獣人国で子供を捨てる行為が横行しているという。中には殺そうとするような者まで居て、見るに堪えないとも。子供はそこそこ助けているジオゼルグも、大人はあまり助けないという。善良は大人であれば大きな都市へ送り届けはすれども、ここには置いておかない。ここにずっと置いておくのはジオゼルグの眷属である『永遠の少女』達だけだ。


「まったく~。胸糞悪い~」

「……仕方ないとしか言えないな。それでも憤りは出るよ」

「うんむ~。ちちうえの~いう通り~。それに~僕も~全員は助けてない~」


 獣人国のことでいろいろな者な関わり解ってきたが、子供でも皆が荒んでいない訳ではない。中には更生がきかない程に性根が腐ってしまっている子供もいる。ジオゼルグもそれを目の前にしていろいろと考えさせられることばかりのようだ。

 また、何度も貴族っぽい馬車が強行軍で、ヨルムンガンドの縄張りとジオゼルグの縄張りの切れ目を狙い走った形跡があるとジオゼルグは言う。けれどその馬車が砂漠を抜ける気配はなかったとあっけらかんとしながら言った。フルーツミックスジュースを口に含み、飲み込んでからジオゼルグは再び口を開いた。やり過ぎた者はその報いを受けた。善良であっても情勢を見れないのであれば生きる資格はない。それが自然の掟。

 人が自然を統べることはできない。壊すことはできても、その報いも人が受ける。砂漠を抜けようとした者は魔物に食い殺されたのだろうな。獣人国の一件の中を、2人ともが自分の縄張りでの地位を安定させるために整理していた。先ほどヨルムンガンドが言っていた魔物の駆逐のことだ。ジオゼルグの場合は特に人間とも密接で、オアシスを利用する人間は多い。その人間が驕り高ぶるようならば、砂は猛威を振るう事になるだろうね。今はラザークの中枢に魔人の脅威がちゃんと根付いているから良いけど、人間の寿命は短い。その内、何かしらの整理が必要になるだろう。ジオゼルグはそれが極力ないように、人との繋がりは維持しているんだろうけどね。


「お、ヨル~採りに来たん~?」

「そう。取りに来た。新しいサボテンと果物」

「ういうい。じゃ~、こっちにお薬ちょうだ~い。子供は大変。病気に怪我にと……薬がいっぱいいる~」

「おっけ。どれがいい? 良ければ触診もするけど」

「お願~い」


 厳しい自然を生き抜く野生動物から魔物へ魔物から魔人へ……。彼女らの場合はまたいろいろと違うのだけど、それでも自然その物である2人なりの考え方であり、彼女らなりの答えなのだと思う。僕も義理の親である訳で、彼女らのことに口は出せど、手は出すつもりはない。

 この子達は根底として優しいからね。先ほどの人間種への厳しい口調とは違い、子供達への慈しみというか、情のようなものを僕も感じる。魔人としてはこれは誇ってもいいのだろう。特に草食哺乳類のような保護は少ない種。僕らは爬虫類だ。縄張りの侵害や食物連鎖の中に、同族や親兄弟すら攻撃の対象となる場合だってある。生まれてすぐに親に食われることもある。そういう生き物なんだ。本来はね。

 椅子を用意してもらい、耳を当て心音や呼吸音を聞いたり、喉や目を見るヨルムンガンド。ジオゼルグはその間に準備でもしていたのか素焼きの鉢をオアシスの水につけている。

 その間にジオゼルグと話したが、ここの子供は成人と共に大きな街や行きたい街へ送り届けるとしっかりと言った。その為に少女達を果物売りの交易について行かせたり、口減らしで捨てられた子供の捜索や遭難者の捜索について行かせている。中には既に街で同年代の男の子と恋仲になり、そちらで生活している子も出たし、資金を稼ぎ次第出ていけるように算段を付けている子もいると言う。その女の子達を見ながら、ジオゼルグも果物をモグモグ食べていた。


「ジオやヨル…おねーちゃん達は~ちちうえの実の子じゃ~ない」

「そうだね」

「でも~、ちゃんと育てる存在が~、しっかりしていれば~……歪んだり~腐ったりはしない~」

「ははは、僕はそんなにまともじゃないよ」

「ん~。それはそれ~。どんなに頑張って育てても~、腐る時は~腐る~。ジオはちちうえの子で良かったと思ってる~」


 無表情に果物をむしゃむしゃ食べている横で、僕もいろいろ考えている。ジオゼルグはこのラザークのオアシスをまとめる上で、人間との関わりが切っても切れない。切れないなら仕方がないので、ジオゼルグらしいおおらかでゆったりとした方法を選んだようだ。

 この先、揺らがないように地盤を整えるように。ジオゼルグはジオゼルグなりの方法で考え、この様々な種族の入り乱れる新たな国家を支えようとしているんだ。僕は流れというか、なるようになると突き進んできたけど……。こうやって繋がっていってくれるなら僕も安心できる。砂漠と山は2人に任せて問題ないと思う。次はイオとユミルだ。……その前に次の卵が孵化しそうだから、そっちが先かな?


~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後130日~135日

主人 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長9.5㎝

取得称号

~省略~


取得スキル

~省略~


 ~=~

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