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一晩過ぎて起きた事

 僕は眠い目を擦りながら起き出す。今日も僕の寝室は死屍累々。詳しくは言わない。もう見慣れたその光景の中に……僕は見逃せない物を見つけた。今日のメンバーはエルフ組と妖精族の数名のはず。獣人族は居ないはず。昨晩、僕の寝室に居たメンバーの顔を思い出す……。違和感なくエルフと一緒に乱入してくるエリアナくらいしか変な要素はなかった気もするが。

 考えても事実が解る訳でもない。ならば確認。

 その時、僕は絶句した。僕はエリアナをシーツごと抱き上げ、最近出したこともない快速でセリアナさんの私室の扉の前へと走る。一度落ち着いてから部屋の扉をノックする。セリアナさんには珍しく起きているようで、今日はハーマさんではなくセリアナさんの変事だ。……。心なしかセリアナさんの声が弾んでいた気がする。そして、ゆっくり扉を開けると中には化粧台の椅子に腰かけて、楽しそうに自身の頭に出た変化を体感しているロリ母法務大臣が居る。ちなみにハーマさんはセリアナさんの煽情的過ぎる寝間着の尻部分から生えている、不自然なフッサフサをブラッシングしていた。ハーマさんの順応力凄い。エリアナを抱きかかえて僕が走ってたから驚いてこっちに来たリリアさんすら亜然としているのにね。


「お、おはようございます。セリアナさんって獣人でしたっけ?」

「いいえ~ッ♡ まごうことなく人族のはずよ~」

「ハーマさん。こっちの確認もお願いできますか?」

「……クロ様がご確認いただいても特に問題はございませんよ。お母上公認の婚約者なのですから」

「いや……。ちょっと現実が受け入れられなくて」


 ハーマさんもそれには同意してくれたようで、寝ぼけているエリアナを起こしている。セリアナさんは着替えずに部屋の中でアクロバットを決める。各段に上がった身体能力を見せてくれた。……お願いですから先に着替えてください。あと、一応妊婦なんですからそういう動きはやめてくださいよ。

 それからハーマさん、あっち側から帰ってこないリリアをこっちに引き戻すのを手伝ってもらえません? 現実逃避もいいですけど、ちゃんと現実は見ないと進みませんので。

 

 ~=~


 うん。何が起こっていたかと言うと、エリアナ、セリアナさん親子に獣人と思しき変化が起こっていたのだ。人間の耳がなくなり、頭の上に犬に似た耳がある。ハーマさん曰く狼だと言っている。それに尻尾の変化と手足に肉球があるとのこと。他の身体的変化も獣人族に近似しているようだ。嗅覚、視力、筋力、瞬発力など。あと、セリアナさんの方だけ少しウエストが引き締まって筋肉質になった気がする。……それから、この耳と尻尾は意識することで、元の人族の形態へも戻れると解った。もしかして、これが迷宮の位階上昇と連動した変化なのか?

 緊急で代表者会議を開いた。

 この変化に心当たりのある者が居ないかを知る意味もあるが、まずは代表者だけでもこの領主親子の変化を受け入れてもらわねばならない。エルフのカレッサやドワーフのゴードンさんは特に何も驚いていない。迷宮主のことで驚くことはもう当たり前となっているのだろうう。比較的長く住んでいるホノカさんを代表する獣人の長の皆さんもそれほど驚いていない。むしろこの変化には好意的。領主親子が獣人に近しいとなれば安心できるのかもしれないね。

 それよりもいい反応だったのは魔人組だ。ツェーヴェに始まりエリーカまで全員がケモミミ親子を撫でまわしている。10歳の方は嫌がっているが、28歳の方はまんざらでもないようで笑顔だ。特に気に入っているのはヴュッカ。縫い包みよろしくセリアナさんを抱っこしている。会議中なんですけども……。


「人間として位階が上がったというよりは、迷宮主として位階が上昇したようです。お母様はその血族だからでしょうね。もとから王祖の迷宮と言うくらいです。一族関係なのは今更かと」

「ふふふ~。でも、いいわね~聞こえやすいわ~」

「鼻が効きすぎるのは難点かと……」


 いろいろあるようだが、とりあえず各族長や代表者には周知できたので、代表者から各族へ連絡してもらう。……それと、領主親子のことで重要なことを忘れていたが、位階が上がったのは彼女らだけじゃない。僕らもなんだ。一夜明けて何かしら変化があるのか各自確認するためにも、一度魔人衆を全員招集。

 執務室の中で喧々諤々。互いに互いを見比べて変化があるなしを改めて確認する。

 まず顕著だったのが……ツェーヴェだ。ツェーヴェの背中に飛竜を思わせる翼が出し入れ可能になっていた。ついでに『飛翔』スキルが生えているとのこと。それ以外にも利便性の高い固有スキルがいくつか生えたらしく、生活にも戦闘にも役に立ちそうと本人は嬉しそうだ。

 次がヴュッカ。何と人の脚から尾びれになった。自由に移行可能。手にも水かきができて水中により適応できるようになったようだ。それで水中だけでなく空中も遊泳できるというから狡い。加えて攻撃系のスキルが新たにいくつか生えたとのこと。

 水系最後のゲンブも大きな変化があった。なんと、時間制限はあるが大人化できた……。いつ使うのか微妙な感じはするが、交渉や表での演説をするゲンブには有用かもしれない。やはり子供の姿ではなめられやすいとのことで、これまではリャエドさんを介さねば生意気な新兵の折檻は難しかったとのこと。


「水組は大きく変わったね。そこまで大きく変わると羨ましい。しかも使い難いこともなさそうだし」

「ですね~。面白いです~」

「ふふふ。ようやっと私も大人の仲間入りです。これで戦も……ふふふ」

「ゲンブは少し抑え気味にしてね? 私もそうだけど、ヴュッカもあまり無理できないんだから」

「はい。母上」


 ゲンブは僕のいう事よりもツェーヴェのいう事をよく聞くからね。最近はこういう抑えは全部ツェーヴェに任せている。ヴュッカもまだはしゃいでるし……。次に行こうか。

 次、逆に変化が無さすぎるスルト。さらにがっしりしたようには見えるけど、特に外観の変化はない。聞けば攻撃系の固有スキルがパワーアップしているのは解るらしいが、他は現状では解らないとのこと。スルトは特に変化があっても嬉しくはなさそうな感じだ。さっきから茶菓子をぱくついている。

 次、ヨルムンガンドもジオゼルグも根本は変わらず。多少スキルに変化はある物のそれ以外は特に大きな変化はない。もしかしたら生産系スキルに変化があるかもしれないが、生産系スキルは解り難のでその辺りは不明。

 タケミカヅチは……龍の形態の時のサイズが3倍くらいになったとのこと。神龍形態とほとんど同じ背格好らしい。家が狭くてしょうがないと言っているが、あの家なら大丈夫だろう。あと、本人の変化ではないが報告としてテュポーン懐妊とのことだ。おめでとう。

 最後のエリーカ。エリーカは何故か従魔化。おそらく従魔化は本人と迷宮主の信頼関係だったり、本人の性格が重要なようだ。ヴュッカの時もそんな感じだったし。この次に位階が上昇した時にはエリーカにも変化があるかもしれない。


「大本命ですね~。旦那様はどんな変化があったんですか?」

「あー……まぁね。外で見せた方がいいかも」

「攻撃系なんですか?」

「攻防の両立だね。部屋の中はちょっと拙い。床や壁を傷つけるかもしれないから」


 魔人衆をギャラリーに今回成長したスキルと生えた固有スキルを順々に見せる。

 最初は『部位強化』だ。今のところ強化できるのは20㎝前後の蜥蜴姿でなら全身。人間形態だと背中から出せる翼だけだ。気持ちチョコンとあった翼がちゃんと羽ばたけば飛べるぐらいのサイズにはなった。ちなみに蜥蜴サイズでの戦闘力が爆上がりした。たぶん、地竜くらいなら物理で一撃で倒せるくらいには強化されたよ。

 このコメントにツェーヴェがやれやれと苦笑い。他も似た感じ。

 そんで新しく生えて来たのが『黒閃(ダーク・レイ)』。威力を最大限抑えても信じられない威力になってしまい、僕自身も苦労することになった。この『黒閃』の規格外な点は錬金術のコマンドの1つである付与で銃弾や剣に付与できること。オンオフは自由自在だけど、問題もある。鋼や合金の弾丸だと耐久できずに焼き切れてしまう。ミスリルでも数時間が限度、安定するのはオリハルコン。僕の武器全部をオリハルコンにするまでに相当時間がかかるから、あんまり多用もできない。というか、するような相手も居ない。居るのも困るけど。

 最後、スキル名が出てこない意味不明なスキル。しかし、その力は絶大だった。試しに魔の森の魔物に使ったんだけど、僕の魔素漏出を一点に集約して押さえつけることができる。先ほど地竜を一撃で倒せたのもこのスキルを試した際の出来事だ。


「……ここまでくると本当にもう」

「世界~……取れそう~」

「パパつおい!!」

「ですね~」

「とうちゃんとならなんでもできそうだな」

「この際です。王国名は父上の名前も入れましょう」

「はぁ~。私も早く子供が欲しい!! ツェーヴェ姉とヴュッカにコウノトリが来てるなら私にも来てもおかしくないのにな~」



 纏まりの無い魔人衆の言葉を受け止めつつ。エリーカの開けっ広げな発言だけは抑えるように苦言。僕としてはセリアナさんに仕組まれたとは言え、結局手を出したのは自分なのだから責任は取るつもりはあるけども……。できればこれ以上の奥さん増加は困る。肉体的には何の問題も無いけど、心の面でのウエイトが大きい。

 これだけの女性の生活を保障するだけ稼がなくちゃいけない訳だ。ただでさえエリアナっていう大きな存在との結婚が本決まりになってるのに……。そんなことは知らぬ存ぜぬとどんどん押しかけ嫁は増えていく。何とか抑えているのに、どんどん増えていく。どこかで諦めることが必要なのかもしれない。現実逃避も心を安定させ、健康に生きて行くのには必要なんだと学習するいい機会となった。

 ……というか、なんで僕は全然成長しないのだろう。ゲンブに大人化スキルが生えたんだから僕にも欲しいのに。願えば生えて来るかな? 毎日寝る前に願えば……。そう都合よくはないだろうな~。


~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後125日~130日

主人 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長9.5㎝

取得称号

~省略~


取得スキル

NEW ・黒閃(ダーク・レイ)(固有) ・部位強化 ・???


 ~=~

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